現役生産技術シマタケの 「電気エンジニアのツボ」出張版③「製造現場のDX化について」

経済産業省からデジタルガバナンス・コード

2.0 (旧 DX 推進ガイドライン)が公表されたり、WEBサイトやオートメーション新聞ななどの各新聞でもDX推進が取り上げられていたり、盛んになっていることが分かります。

また、実際に設備からデータを収集するためのネットワーク機器の欠品や納期が長いことから、色々な企業がDXを進めているのを感じることができます。

私のYouTubeチャンネルの動画でもDX関連の動画として、簡単にできるPLCとExcelの通信方法を紹介したところ、他の動画より関心が多く集まりました。

そんな需要が高まっているDXについて、製造業では何から始めればいいのでしょうか。

今回は私が勤めている会社で取り組んでいる内容をいくつか紹介したいと思います。

周りの企業より遅れているかもしれませんが、以下の順番で進めてきています。

1.LANケーブル敷設、ネットワーク機器の設置

2.設備のデータ取集→稼働率、生産数、検査結果、測定結果、設定値など

3.現場の手書き運用→ペーパーレス化

1つ目は「LANケーブル敷設、ネットワーク機器の設置」です。

設備のデータを収集するためのネットワークの構築が必要です。

まずはIPアドレス表、構成図、LAN配線図などを事前に用意し、それを元に工事を進めていきます。

実際に各設備のPLCへEthernetユニットを取り付け、HUBの設置、LANケーブルの敷設を行いました。

しかし、ネットワーク化を進めていく中で、簡単に接続できない設備があります。

古い設備と海外製の設備です。

まず古い設備はEthernet接続ができないため、RS-232Cなどの通信で一度データを受け取り、

Ethernet接続に変換するなど対応しています。

海外製の設備に関しては、PLCで制御しておらず、ブラックボックスの設備もあります。

どのような方法でデータを収集するか悩んでおり、Ethernetベースの通信規格であるOPC UAを検討中です。

2つ目は「設備のデータ取集」です。

データを取集する仕組みが出来ましたら、次は実際にデータの収集を始めました。

最初は1:1の通信から検証です。

検証や試運転段階ではデータの収集は上手くいかないこともありました。

必要なデータが不足していたり、途中のデータが欠落したりしていました。

課題として、膨大なデータ量の取り扱いをどうするのか、

データの正確性や信頼性をどうやって確保するのか等が挙げられます。

そのために、どのデータベースを使用するのか、どの通信方法が適切であるのか、

色々試しながら、決定してきました。

しかし、現在でも通信方法などに関しては今の方法が本当に適しているか心配なところはあります。

3つ目は「ペーパーレス化」です。

まだ完全にペーパーレス化になっていませんが、

一部では製造記録を用紙に手書きで記入する運用から設備やシステムからのデータを読み出して、

スプレッドシートへ自動で入力される運用へ変わっています。

運用が変わりますと、当然のことですが、現場から反対の声や戸惑いがあります。

「手書きの方がいい」という声が聞こえてくることもあります。

個人的には設備の改造よりも、”運用に関する打合せ”が一番労力を使うところだと感じています。

他にも活動している中で、内製せずに外部業者へお願いすれば良いという意見をもらうこともあります。

1つの選択肢として外注するのも有りかと思いますが、

会社が将来どんなことをしたいのか、どんなデータが製品の品質を担保するために必要なのか等

目的が明確になっていないと、外部業者へ要求事項が伝わらず、

導入した結果、使い勝手の悪いシステムになってしまいます。

会社として運用が密に絡んでくるので、そこは内製化をして要望を都度確認しながら

一緒に現場の方々と進めていくというところがすごく大切だと個人的には思っています。

最後になりますが、

DXを進めるためには、人材育成や組織文化の変革など、総合的なアプローチが必要であり、

データ分析や意思決定においては、人間の判断力や経験値も必要となるため、

機械と人間が連携して取り組む必要があるかと思います。

今回、3つの順で取り組み内容を紹介させて頂きましたが、

収集したデータを有効に活用する段階まで進んでいないため、

まだまだDXと呼べる内容ではありません。

この内容がDXに取り組んでいない方の参考に少しでもなれば幸いです。

●Ethernet接続

パソコンやPLCをEthernetで接続するためのユニット

●RS-232

データを順番にかつ連続して送受信するシリアル通信

FA機器で使用されており、他にRS-422、RS-485がある。

著者プロフィール

シマタケ

共働きの子育て会社員。工場で15年間働く電気エンジニア。現在は某製造メーカーの生産技術担当。エネルギー管理士、第3種電気主任技術者、第2種電気工事士

機械保全技能士電機系2級、工事担任者(現DD第1種)、2級ボイラー技士、消防設備士(乙6、7)、危険物取扱者(乙4)など多数の国家資格を取得。心理学を勉強中でメンタルケア心理士、行動心理士も取得。

「電気エンジニアのツボ」でブログとYoutubeで情報を発信中

https://shimatake-web.com/

https://www.youtube.com/c/JapaneseElectricalEngineer

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