【FA時評⑥】年号表記での国際化対応

株式上場各社の2023年3月期決算発表がほぼ終了した。上場会社の決算は国際会計基準に合わせた計算方法の採用など、海外企業との財務比較が容易にできるようになっている。会計方法だけでなく、年代表記も令和などの元号は使用しておらず、西暦を採用することで過去との比較が容易でわかりやすい。

日本の年代表記は現在、西暦のほかに元号もあり、混在して使用されている。今年は西暦2023年、令和5年であるが、表記に何を使うかはその時の状況によって変わり、とくに指定がない限りどちらを使用しても構わないことになっている。

日本の国家予算は元号を使用し、財務省も元号を使用している。国土交通省は元号を基本にしながらも、西暦も併用するなど混在している。外務省も同様で、ニュースリリースの発表日付は元号を使用しながらも、リリース本文は西暦を使用するなど統一が取れていない。経済産業省、総務省は西暦を使用している。従って、国会の審議では元号と西暦を混在して使用していることから、実に紛らわしい事になっている。

関連する工業会の事業計画や出荷統計などは、以前は元号と西暦を混在して使用していたが、現在はほとんどの工業会が西暦使用に統一している。過去との比較が容易になるからだ。

現在は西暦と元号を併記している運転免許証の有効期限は、しばらく前までは元号であった。筆者は今年、5年目の運転免許証更新の年であるが、「平成35年の誕生日まで有効」となっている。平成35年は西暦では何年、令和では何年になるのかと、年齢早見表を見ながら計算し直す必要が出てくる。実は、運転免許証番号の上3桁と4桁目は初めて運転免許証を取得した年の西暦の下2桁を著している。運転免許証は何十年も前から西暦と元号を混在使用していながら、有効期限だけは最近まで元号表記だけにするといった非効率的な運用を行っていたのだ。

電車の切符も、私鉄は有効期限の表記を西暦で行っているところがほとんどであるが、JRも2017年から元号から西暦表記に順次切り替えている。元号を知らない訪日外国人客を意識しての対応や、平成から令和への元号変更のタイミングに合わせ、西暦を採用することで、コンピュータシステムの変更を容易にしたものといえる。

銀行通帳の表記は、大手都市銀行一部を除き、依然元号を採用しているところが多い。銀行の通帳は元号が明記されていないことから、仮に「5年」と表記されても、令和なのか平成なのか、後々判らなくなりかねない。さすがにパスポートは西暦で有効期限が表記されており、世界共通で使用されることを考慮している。

弊紙も紙面欄外の発行日は西暦と元号を併記しているが、記事中の年代表記は西暦を使用している。ニュースリリースや資料の表記が元号になっていても言い換えている。過去記事との比較を容易にするためだ。

明治はこんな時代だった、昭和にはこんなことが起こったというように、当時の時代雰囲気や世相を表現するうえで、元号を使用して語ることは思い出しやすい面もあり理解できるが、業務運用上は非常に非効率な制度といえる。令和5年の10年前は平成何年と聞かれて即答できる人は少ないのではないだろうか。2023年の10年前だと2013年と即答できる。書類などに日付を記入する際に、元号か西暦かを確認したりすることは2度手間を生じさせている。そして何よりもこれからのインバウンドや外国人労働者の増加、海外企業との商取引などにおいて、元号と西暦の併用は業務の負荷を増やし、無用のトラブルを生じさせかねない。

元号で時代の移り変わりを楽しむことを決して否定するものではないが、これから海外との交流がますます増加することが予想されるなかで、元号を使用する仕組みは決してプラスになると言えない。生活していくうえで必要になる書類や文献などの表記は西暦使用を基本とするべきである。そしてその音頭取りを政府が率先して行うことで、お役所を筆頭に西暦使用に舵をきりやすい。日本のグローバル化の第1歩をこういうことからスタートすることで、無駄な業務の解消にも繋がり、国際競争力の向上にも貢献するはずである。

(ものづくり・Jp株式会社 オートメーション新聞 会長 藤井裕雄)

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