2023年はものづくりの原点回帰 「売る・作る・納める力」を発揮する年に 未曾有の納期問題を乗り越えてその先へ

2022年は部材不足の影響から、製品を作れない、納められないからお金が入らず、さらに材料費や燃料費、物流費の高騰によって利益を圧迫し、二重三重に苦労がかさむ年となった。2023年も引き続きこの状況は変わらないが、水面下では部材不足は解消に向かい、メーカーも強化した生産力でフル稼働を続けており、目に見えて好転する時も遠くはない。2023年はこれまで作れずに悶々としていた状況が変わり、作ること、納めることに注力し、ものづくりの力を発揮する1年になる。

部材不足と需要急増で起きた納期問題

納期問題の原因は、世界的に半導体や樹脂が不足し、それを使った部材の入手が困難になったことが最大の要因であることは間違いないが、それだけではない。たとえ部材が手に入っていたとしても需要の勢いはこれまでのメーカー各社の生産能力のキャパを大幅に上回っており、遅かれ早かれ納期問題が発生していたことは間違いない。受注が従来の2倍、3倍というメーカーも多く、パニックバイによる大量発注、先行発注、二重・三重発注などすべてがいま必要な注文であるとは限らないが、それを差し引いてもFA・自動化に対する顕在需要と潜在需要の急浮上がこのタイミングで重なりあい、過去最大の需要の波となってきて襲ってきたと見ていいだろう。
これに対しメーカー各社は1年間を通じて、工場やライン増設など生産能力の強化と、調達しやすい製品に対応するための設計変更、調達チャネルの拡大などを行い、納期改善に向けて動いてきた。2022年下期からは少しずつ手に入る部材も多くなり、納期予定も短縮され、その効果が目に見えて現れるようになってきた。2023年はこの流れは加速すると見られており、早いところでは春先、遅くとも年内には大幅に改善されるだろうという見方が多く出てきている。

納期問題を経て手に入れたもの

部材が手に入らなくて困っている企業、納品に向けて必死に今も生産している企業には申し訳ないが、敢えてこの納期問題をプラスに捉えると、多くの無駄や非効率、古くから存在していたタブーを炙り出し、ユーザーとメーカーをもう一段上の生産性向上、経営改革に引き上げる良いトリガー、引き金になった。
例えば、ユーザーのなかに隠れていたFA・自動化の需要を引き摺り出して市場規模を拡大したことに加え、大きくなった需要に対応するためにメーカーは設備投資をして生産能力を引き上げ、それでも足りない分は外部の協力会社を利用するようになり、確実に競争力は強化された。
またユーザーの注文に応じて無尽蔵に増やしてきたカスタム製品もこのタイミングで見直して集約したり、調達をスムーズに行えるように製品の設計変更をして部材の選択に幅を持たせられるようにするといった取り組みも進んだ。
反対にユーザー側でも、調達ルートを増やしたり、これまで長年当たり前に使っていた製品から納期問題をきっかけに別のメーカー製品を試すなど、大きな変化をもたらした。
これら以外にも納期問題をきっかけに変わったことはたくさんあり、大きなダメージは受けたが、その代償として多くのものを手に入れた。未曾有の出来事だったためにこれまでの常識が通用せず、多くのタブーや聖域まで踏み込んでいったことは最大の収穫だ。

お客様は待っている 納品が最優先

2023年も長納期は続き、納期問題は解決していない。それでも部材の流通量が増えて調達もしやすくなり、メーカーの生産能力も上がっているので、納期回復の道は開かれたと言っていい。
これを前提に、2023年はどうなる?どうするか?2023年はシンプルに「作って、納めて、収益を得る」という現実的な活動にひたすら従事する年になる。
部材不足と納期問題によって昨年からの受注残が積み上がっている状態で、最優先でやらなければいけないのは「納品」だ。部材不足という自社だけでは解決不可能な事情があったとはいえ、現実はお客様を待たせている状態であり、自社としてもお金を受け取れていない状況であり、それをいち早く解決することが重要となる。

納期対応で鍛えられた地力はDXにも必ずつながる

ごく当たり前の話であり、DX等の新たな取り組みに対して後ろ向きに聞こえるかもしれないが、まったくそんなことはない。この納期問題へのさまざまな対応によって、ふところ事情は厳しくなったかもしれないが、「作って、売って、納める」という製造業、ものづくり企業としての地力は高まった。多くの根本的なことを見直した結果、DXや次の変革の取り組みに対しても、それらを実行しやすい土壌づくりにもつながっている。
その意味では2023年は、原点回帰で「作って、売って、納める」ことに注力する年ではあるが、2024年とそれ以降に向けて地ならしをし、力を蓄える重要な年になることは間違いない。2023年はものづくりの実力を最大限に発揮しその力を見せつけ、その次の飛躍につなげていきたい。

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