【製造業での広報活動のススメ】Vol.2 保守的な社長は、広報活動に非協力的

はじめに

日本の企業は、欧米に比べ、営業部門や製造部門ほど、広報部門を重要視しない時代が長く続いていました。ある時期までは、広報室は企業のゴミ捨て場と言われていたそうです。特に、日本経済を支えてきた製造業においては、かつては「良いものを作れば売れる」という概念が強く根付いており、その良さをもっと多くの人々に伝えたいということに対して、興味が薄く、その風潮は令和時代となった現在であっても、根強く残っていました。しかし、DX時代に突入した現在、ビジネスは共創により成り立つようになり、広報視点で社内のみならず、社外(社会)への情報発信が必要不可欠となりました。本コラムを通して、製造業における広報の在り方、有効な活用手段を伝えていきたい、そんな記事の掲載を目指しています。

今回は、トップ交代、そしてトップインタビューの対応をした時のエピソードを紹介します。

中小企業であれば、毎朝、社長にあいさつをする、会議をする、時にはランチをごちそうになるなど、比較的距離が近いものです。特に、現場主義の社長であれば、毎朝製造現場に顔を出し、従業員に声を掛けるという方も多いはずです。しかし、大企業となると、社長は、「廊下ですれ違うお方」、「オンライン配信で年始(年度初め)あいさつを見る人」というくらい遠い存在であり、中には、「テレビで見る人」というくらい距離感がある場合も多いでしょう。

自社の社長交代人事を報道で知る

私がPR会社のコンサルタントとして、広報を担当した製造業の企業は、いわゆる“大企業”であったため、どちらかと言うと、社長に直接、会える機会の少ない従業員がほとんどというほどトップとの距離感がある会社でした。社長の顔はかろうじて覚えていても、役員の顔と名前が一致しないというレベルの企業でした。

とある日、何気なくネットニュースを見ていると、その企業のトップ交代が、なんとYahoo!ニュースに出た、ということがありました。これは、広報担当としては、最悪の事態です。

通常われわれは、守秘義務契約を締結しているため、企業の一大事に関わる情報は、トップダウンで、すぐに下りてくるものです。しかし、この会社は違いました。系列会社やグループ会社から3年に1回程度、社長が“天下り”で就任することが通例の会社であることもあり、オーナー社長とは異なり、PR会社との距離も遠い存在でした。報道を見て、至急、その会社の広報室に連絡をすると、なんと、その会社の広報担当は、Yahoo!ニュースを見ておらず、私以上に驚いていたという状況でした。

このようなことは、たまに起こります。特に、外資系企業の場合、自社の買収や他社との業務提携を報道で知るということは、そう珍しくはありません。広報室長や比較的上層部の一部の社員は知っていても、かん口令が敷かれるため、広報担当者に知らされないということがよくあります。広報担当者としては残念な事態です。

社長交代、そして取材対応

社長交代劇も落ち着くと、新社長が就任です。ほどなくして、トップインタビューの依頼が入ります。メディアからの依頼を待たずに、こちら側から仕掛けるケースもあります。経済産業紙の担当記者、業界紙の編集長レベルには、あいさつをしながら、新社長を売り込み、よりよい露出を目指したいものです。新社長をいかによく露出させ、その会社の知名度向上、ブランディングに役立てるか、広報活動の腕の見せところです。なんといっても社長は、ブランディングにおいて、企業における最高の広報資産です。広報室にとっても最も重要な時期となります。

しかし、ここでもまた、トラブルがつきものです。“社長=メディア露出に協力的”とは限らないのです。つまり、会社の社長でありながら、自分自身が広告塔となって、新聞やテレビに積極的に登場するという人もいれば、真逆で、いかに目立たず、黒子でいる…という主義の方も少なくありません。その背景には、「親会社より目立ってはいけない」「達成可能かもわからない目標値を出したくない」「記事が大げさに書かれてしまい(間違って掲載されてしまい)、自分の進退問題に関わったらどうしよう」など、諸事情があります。つまり、保守的な社長の場合、広報活動には非協力的になってしまいがちです。となると、社長の露出のみならず、会社方針として新製品発表、機能追加のアナウンス自体も細々と、水面下でやっていこうという流れになってしまうこともよくあります。しかし、企業として、新社長の意向や方針を見極めながら、その会社に適した広報活動を展開していく必要があるのです。

広報担当者は、社長に広報活動の必要性や重要性を理解していただくということも重要な責務です。おそらく、大手企業であればあるほど、社長にモノが言えない広報担当者が多くなります。そこで、担当する企業を客観的に分析し、その企業を守るため“モノを言う”ことが仕事のPR会社の出番となります。

著者

株式会社VAインターナショナル コンサルタント

約40年にわたり、製造業をはじめ、様々な企業のコミュニケーション活動をサポートしているコミュニケーションコンサルタント会社。自動車や機械等の基幹産業をはじめ、製造業への参入を検討しているIT企業等、製造業にかかわる多くの企業のPR実績を有している。現在、「製造DXチャンネル」において、製造業に向けた有益な情報を発信している。

https://www.va-intl.co.jp/man/

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