配線接続機器 旺盛な需要維持 通信、自動車、産業機械中心に伸長

端子台、コネクタなどの配線接続機器の需要が堅調に伸びている。背景には旺盛な設備投資やインフラ整備がある。一方で製品の素材になる金属や樹脂関係の調達が計画通りにできておらず、加えて価格も高騰するなど、計画通りの生産が行われていないことで、納期依然遅れ気味だ。5GやIoTなどに代表される情報通信市場、自動車の自動運転で注目されるCASE関連市場、無人化・自動化が進む製造業など、需要が膨らむ中で、受注残だけが膨らんでいるのが実情。ロシアとウクライナとの戦争で円安が進み、海外からの資材調達コストも上昇している。人手不足、コロナ下での意欲的な無人化・省人化投資などで、配線接続機器の需要環境は今後も大きな追い風が吹いている。

コロナ下での経済活動も3年目に入り、コロナの患者数も少しずつではあるが減少の傾向が見えてきた。生活スタイルもマスクは依然必須のアイテムとなっているが、リモートワークの日数が減少し、展示会もリアル開催が増えている。

こうした中で、配線接続機器の需要は、5GやIoTなどの情報通信のインフラ投資や、自動車のEV関連投資、さらには人手不足を背景にした自動化・省人化投資の拡大などで、大きく拡大している。

2022年3月期決算も、20年、21年と落ち込みがあったことの反動も多少あるものの、総じて大幅な増収増益になっている会社が多い。

日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計でも、接続機器は20%以上の高い伸びになっている。

国内で収束の方向に向かいつつあるコロナであるが、海外では中国が主要都市でロックダウンを再び開始するなどの影響から、生産、物流網がストップし始めている。自動車や家電では製品や部品、素材の供給が止まるなど影響から、納期の遅れがさらに拡大している。

配線接続機器の材料となる樹脂、金属、銅なども不足気味で、価格も上昇している。材料不足で生産が追いつかない結果、受注だけが膨らみ続けており、依然解消のめどが立っていない。機械・装置を裏から支える部品だけに、その影響は大きい。

省工数ニーズで高まるスプリング式

配線接続器機器では、省配線化や省工数につながる製品への関心が高まっている。
端子台に配線接続方法は、日本で主流になっているねじ式、欧米で主流になっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)という大きく2つの方式がある。まだねじ式の採用が多いものの、人手不足から配線接続作業の省力化対策として、スプリング式の採用が増えている。

日本ではねじを使った丸型圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いというのが大きな理由だ。スプリング式はケーブルを挿し込むだけで配線作業が完了し、ねじ締め作業や締める加減も不要など、省力化効果は大きい。まだ配線作業が不慣れな初心者であっても簡単に作業ができることから、熟練作業者でなくても配線技術習得に時間がかからず、懸念されていた振動での配線の緩みや経年での信頼性に対する心配も使用実績を重ねることで払拭され、採用加速への追い風になっている。

スプリング式もメーカーによって接続方法には多少違いがある。配線工具を使用する方法が多かったが、最近は工具不要の方法も増えている。また、配線ケーブルの先にフェルールを装着した方法から、フェルールなしで被覆したケーブルをそのまま端子台に差し込むことができる方法も登場してきている。配線がきちんと接続できているかのインジケータ表示も可能なことから、作業ミスなど接続不良の防止にもつながる。

従来スプリング式は制御用や小電力用を中心に普及が進んでいたが、ここ数年、電磁開閉器や配線ブレーカーに加え、操作用スイッチやスイッチング電源など、従来はねじ式接続が使用されていた機器でもスプリング式端子台の採用が増えつつある。さらに、大電流用でのスプリング式端子台のラインアップも急速に拡充している。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200平方ミリメートルという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。

大電流用途では、丸型圧着端子台(丸端)で配線後の増し締めをするという習慣が定着しているが、スプリング式の接続信頼性への評価の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの習慣がなくなりつつある。増し締めが不要になることで、トータルコスト面もスプリング式の優位性が高くなってきており、市場に大きな変化が出始めている。

日本では公共建設物や送配電分野ではねじ式が多く使用されているが、法的な規制が徐々に見直され、国土交通省発行の公共建築工事標準仕様書(電気設備工事編)の令和4年度(22年度)版に、「ねじなし端子」が制御盤に使用する器具の端子として追加された。これによりスプリング端子を国交省公認で公共案件にも使用できることになった。

公共建築工事でも使用可能に

最近は欧州を中心に、プリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっている。大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組み立て性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。

最近発売されて注目されている端子台として、配線を端子側面から挿入するプッシュイン端子台で、設置高さ方向のスペースに余裕のない場合でも配線が容易に行える。丸端などのねじ式配線接続式と方向が同じのため、ねじ式端子台からの切り替えも進めやすく、側面配線のため、ケーブルダクトまでの配線曲げも不要になるなどの利点がある。

もう一つ注目されている端子台が、配線方式にプッシュイン式を採用して配線工数と端子スペースの削減を図るとともに、取り外し可能な足を取り付けることで、縦横兼用で使用できるコネクタ端子台だ。足を外した場合は縦向きに、足を付けたままの場合は横向けにと、1台で縦向き・横向きの両方に対応可能になる。在庫を削減でき、盤の小型化にも貢献する。

配線接続機器の需要は産業機器から民生機器、車載、社会インフラまで需要の裾野が非常に広いことから、安定した市場を形成している。自動車のEV化、DC電力の活用なども新たな市場として期待でき、さらに拡大が見込まれる。

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