令和の販売員心得 黒川想介 (68)

経済活動は需要と供給のバランスを保ちながら動いていくものであるが経済の規模はその時代の技術によって規定される。つまりその時代の技術が需要のパイを大にし、技術が停滞すれば需要は飽和する。その時点で供給側が生産効率を上げて、コストを下げても需要は増えない。

戦後日本の製造業がたどってきた歴史を見ると①戦後は物資不足であって、供給不足だったので生産力の指向時代であった。②その後、供給力は追いつき、品質・納期・価格を重視する製造技術指向時代となる。③やがて製品メーカーの供給力は旺盛になり競合が激化すると競合との差別化製品で勝負する販売力指向時代となる。④90年末には顧客満足を追及して製品を供給するマーケティング指向時代となる。⑤令和に入っている現在では製造業でも安全や環境あるいは社会的モラルといった社会の問題を避けては進めない社会的指向の時代に入っている。

製造業の発展と共に歩んできた販売店は製造現場の要請に応じて売上を伸ばしてきた。生産力指向時代では動力機器や配電に絡む電設資材の需要を取り込んだ販売店が慌ただしい程の活況であった。製造技術指向時代に入ると自動制御技術が自動化需要のパイをみるみる大きくした、その旺盛な需要に応じてメーカーは新製品を次々と開発し展示会・セミナー等で広く浸透させた。販売店はふくらむ需要をできるだけ多く取り込む営業活動を展開した。

その中の一ツに三新運動という営業活動があった。一ツ目の【新】は次々と建つ新工場の新規開拓である。二ツ目の【新】は次々と誕生する新製品を売り込んで新しい需要を開拓する。三ツ目の【新】は売り込んだ商品で新しい用途を見つけたら、その用途を他の顧客に紹介して商品拡販をするという営業活動だった。当時の販売員の客先訪問活動は活発であった。顧客を訪問するとそこには需要が転がっていると言われる具合であったから、売上は客先訪問回数と客先滞在時間に比例すると言われた。販売力指向が強くなった90年頃には機器や部品メーカーの供給力は旺盛になっていた。商品の複合化や高機能が進んで、メーカー競合の激化が始まった。

販売店はメーカー戦略に乗った営業活動を強化した。その主な営業が①競合商品切り替えによる売上アップを狙うこと。②顧客を深く掘り起して高機能商品から電気部品までをイモヅル式に全てを刈り取って売上拡大を狙うことであった。こうして売上を上げるために高機能商品知識やアプリケーション例の勉強会を頻繁に行った。やがて顧客満足の多様化が進み、マーケティング指向となる。機器部品メーカーの営業はマーケティング部と販売部に分けられた。結果的にはメーカーの販売員からマーケティングの能力がなくなってしまい、商品をいかにして売るかという販売一本の営業スタイルになった。メーカーの営業戦略に乗ってきた販売店は強い影響を受けた。販売員は商人気質からやや遠のいて売り子の気質が強くなった。

現状では競合状況や出てくる案件等をテーマ化して取りこぼしのないように商談テーマの進捗を管理する営業になっている。令和時代には色々な物事が変わっていくだろう。製造業も社会的価値観の変化に影響される。製造業はそれを技術で乗り越えていく。製造業に供給するメーカーも当然、それに呼応して新しい商品開発をするだろうがこれまでと同じメーカーがその事をするとは限らない。販売店はメーカーの影響を受けるのは当然であるが然りながら顧客から受ける影響がより大事になる。それには半ばなくなっているマーケティング感覚を回復させて新需要を追う営業が求められる。

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