精密位置決めに新たな風を PI社、定盤専業のP・G・Wを経営統合 その狙いとは?

より早く正確に、品質の良い製品を作るための基本となる「位置決め」。当たり前の話ですが、加工や検査、測定、分析など、あらゆる工程の根幹を成し、その速度、精度が機械や装置の本質的な価値となります。

そんな位置決めについて、世界的な位置決め専門メーカーのドイツ・Physik Instrumente(PI社)は、岐阜県にある石定盤専業メーカーであるピー・ヂー・ダブリュー株式会社(P・G・W)の100%株式を取得し、日本とアジア市場での事業強化に乗り出しました。これからの戦略と見通しについて、PI社の日本法人ピーアイ・ジャパンとピー・ヂー・ダブリューの代表取締役を兼任する八木 拓真氏に話を聞きました。

ピエゾ素子を使った超精密位置決め世界トップシェア 高精度位置決め専門メーカーPI社

ーー今回、石定盤メーカーであるP・G・Wを買収し経営統合することとなりました。はじめにPI社について教えてください

八木氏 PI社は、ドイツ・カールスルーエに本社を構え、ナノメートル精度の位置決めに特化した専業メーカーとして50年の歴史があります。従業員数はグローバルで約1200人。直近の売上高は約2億ユーロ(約262億円)。ヨーロッパと北米、アジアに6つの製造拠点と15の営業支店を展開しています。

ステージやアクチュエータ、モーションコントロールなど位置決めに関する製品をすべて扱っており、なかでもピエゾ素子(圧電素子)を使った超精密位置決めをコア技術とし、この領域ではグローバルシェアナンバーワンです。

日本ではピーアイ・ジャパンとして今年で30年を迎えました。精密位置決め機器の販売を事業の柱とし、半導体業界を中心に採用されています。

石定盤・治具等のグラナイト加工品のトップメーカー P・G・W(岐阜県)

ーーP・G・Wとはどのような会社なのでしょうか。

八木氏 P・G・Wは1997年、岐阜県養老郡で創業した、石定盤や治具など石材加工を専門とするメーカーです。南アフリカやインドなど生産地から直接、グラナイト(御影石)を輸入し、岐阜県内の2つの自社工場で加工して製品に仕上げて出荷しています。

特に大型で速度が必要とされるFPD関連装置に強く、FPDメーカーやその製造装置メーカーの要望に応じてさまざまな形状にグラナイトを加工して納めてきました。最近ではグラナイト加工品にステージやガイド、アクチュエータなど組み合わせてユニット化した製品も展開し、ステージや装置のカスタマイズ事業も手掛けています。

精密位置決めと石定盤 親和性の高い技術の融合で位置決め業界に風穴を 

ーー位置決め機器メーカーである御社と、石定盤メーカーであるP・G・W。経営統合の狙い、メリットはどこにあるのでしょうか?

八木氏 位置決めの中でも半導体やFPD製造装置、実装機、検査装置、精密測定器や分析装置等で使われる精密位置決めについて、それらの装置の内部では、ワークを載せたステージが高速で動き、高精度な位置決めを行っています。そのスピードと精度は年々向上し、要求も高くなっています。

しかし高速動作や激しい加減速には振動がつきもので、止まった後もしばらくは装置内に微妙な振動が残ります。そうした振動は高精度の加工や測定、分析の妨げになり、極めて高い精度と正確性が求められる測定や分析機器、検査装置等では位置決めをした後、振動が収まってから行うものもあります。

精密位置決めにとって振動は厄介なもので、それを最小限に抑え、収まるまでの時間を短くするため、装置は堅くて重量のある土台をもとに作られます。土台には鋳鉄やガラスなどいくつかの素材がありますが、特にグラナイト、御影石を研磨して作った土台は堅くて重く、振動を最小限に抑え、最適なものとして広く使われています。

P・G・Wはグラナイト加工の専業メーカーとして極めて高い石の研磨技術を有し、FPD業界を中心に製造装置の土台や定盤、治具等を製造し、高い評価を受けてきました。当社も位置決め専門メーカーとして半導体業界を中心にグローバルで展開をしています。共に同じ精密位置決めを得意とし、装置の土台と位置決め機器でお互いを補完し合える関係にありました。

ーーなるほど

八木氏 さらにこれからの展望として、P・G・Wは、FPD業界に加え、これまで培った技術と親和性の高い半導体業界での事業拡大と、海外市場への進出、特に中国市場を攻略したいという希望がありました。一方、当社は日本やアジア市場では半導体市場向けに機器販売が中心となっていて、新たにセミオーダーやカスタムなどソリューション事業の強化を模索していました。

ちょうど両社の思惑が合致し、お互いの強みを活かせるだろうということで、今回の経営統合に至りました。

加工機や自動機など高精度機械向けにカスタムなどソリューション強化

ーー具体的にはどのような展開を考えていますか?

八木氏 一番は、セミオーダーやカスタムなどのソリューション事業の強化です。ソリューションを提案するには顧客と密に連携できる設計者や技術者が不可欠で、すでにP・G・Wには土台からモーション製品を組み込んでユニットや装置化ができる体制が整っています。

具体的には、国内の機械メーカー、装置メーカーでは精密位置決めをイチから設計し、ステージやアクチュエータを自ら調達して製造しているケースが多くあります。しかしそれだと時間も工数もかかります。精密位置決めは加工や測定、分析等の肝となる部分であり、そこは専門家と連携したり、すでに高精度にユニット化されているものを採用するのも選択肢の一つです。レーザー加工機や自動機、検査装置など、ますます高い精度を要求されているメーカーのお役に立っていきたいですね。

機械メーカーの成長著しいアジア・中国市場へも積極展開

また、機械や装置メーカーが次々と誕生している中国市場でソリューション提案を進めていきます。中国はローカルの半導体製造装置やFPD製造装置、各種加工機が増えていて、当社のモーションコントローラ「ACS Motion Control」が多く採用されています。そうした土壌があるので、土台とモーション製品を組み合わせたユニット製品は展開しやすいと考えています。

カスタマイズに関しても、適切な石の調達から品質管理、輸送、設計、加工まで一貫して提供できる企業はアジアでは当社だけ。しかも市場や顧客が要求する高い精度を実現できる人材とノウハウも持っています。

ヨーロッパや北米にも同様の企業はあり、当社のグループ内にもありますが、グラナイト加工品は重量物で輸送に大きなコストがかかり、数千万円の機械に対して膨大な時間と輸送費をかけて遠方から運んでくるのは非現実的です。日本国内はもちろん、中国や韓国、台湾、シンガポールなどアジア市場向けの重要拠点になると考えています。

ーー今回の経営統合について、PI社のグローバル本社の反応はどうですか?

全社的に半導体、フォトニクス、ライフサイエンス、オートメーション業界に力を入れていて、特にオートメーション業界ではソリューションが重要であるとしています。ヨーロッパや北米ではソリューション提案ができていましたが、日本やアジアではセミオーダーより上のカスタマイズまではできていませんでした。それが今回、日本にあるP・G・Wが加わることでアジアに拠点を構えることができ、精密位置決め、高精度という当社の強みを出せるリソースを持つことができたと喜んでいます。

位置決め機器の販売からカスタマイズ、コンサルティングまで

ーー今後に向けて

八木氏 位置決めは機械や装置の性能を高め、付加価値を上げる重要な役割を果たします。精密位置決め機器メーカーであるPI社と定盤メーカーのP・G・Wが一つになり、その知見を結集することで、これまで以上の精密位置決めとサービスが提供できるようになります。

国内には多くの機械・装置メーカーがあり、また自動車や電機の大手メーカーの中には社内だけで使う専用機を自前で作っているところもあります。そうした機械や装置を設計・製造する人々に対し、位置決め機器の販売からカスタマイズまで提供することで課題解決に貢献していきたいと思っています。また中国やアジア市場に対しても積極的に展開し、存在感を出せるよう実績を作っていきます。

PIジャパン

ピー・ヂー・ダブリュー株式会社

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