【製造業BIツール導入事例】ヤマハ発動機、ジールの技術支援のもと、製造部門がグローバルなデータ分析基盤の構築・運用を実現

ヤマハ発動機は、BI・データウェアハウスソリューションを専門とする株式会社ジール(本社:東京都品川区、代表取締役社長:岡部 貴弘)の技術支援を受け、販売データを起点とした生産や物流の最適化、製造部門のデータ分析基盤の構築に向けてBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを導入し、運用を開始した。BIツールを活用してどのようにデマンドチェーンの革新につなげたか。要点を抜粋して紹介する(導入事例の詳細・全文はこちら

(写真左から)生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主務 横山 研一郎氏 主事 山本 剛氏 ※部署名・役職名は取材当時のもの

背景と課題

需給調整の精度を向上させる デマンドチェーン変革の実現を目指す

 ヤマハ発動機は、グローバルで持続的成長を目指し、需給調整の精度向上を図るうえで、消費者の需要側から見た製品や情報の流れを示すデマンドチェーンの変革に取り組んでいる。

その中で浮き彫りとなった課題について、ヤマハ発動機 生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主務 横山 研一郎氏は次のように話す。

 「デマンドチェーン革新部は、市場側から取得できる販売データなどを起点にして生産や物流の最適化を図っていきます。市場側を意識せずに大量生産する手法では、消費者ニーズが多様化する中で在庫過多に陥ることもあります。また、国や地域によって売れ筋モデルも異なることから、在庫不足を招く恐れもあります。お客様が購入しようと思った時に製品をタイムリーに提供するためには、市場の状況を瞬時に察知する必要があります。顧客満足度を向上させながら、在庫量を適正に維持するには、生産計画や供給計画のレベルを向上させる必要があり、そのためには鮮度の高い情報を得ることが必要不可欠でした」(横山氏)

採用のポイント

データ分析基盤の知識がない製造部門が構築・運用
ノンコーディングとサポート力を重視

 2019年、同社はデータ分析基盤の構築プロジェクトを進めるために、1つの決断に踏み切った。自部門主体での構築・運用と、そのためのクラウド利用だ。ヤマハ発動機 生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 情報戦略グループ 主事 山本 剛氏は次のように話す。

 「デマンドチェーンの変革のベースとなるデータ分析基盤をスピード重視で導入したい。また将来的な追加開発のことも鑑み、保守運用も自分たちで行いたいという思いがあり、IT部門と相談しながらも自部門主体で構築・運用を行うことにしました。営業・製造・物流の各部門のメンバーからなる部門において、サーバに触ったこともないメンバーでデータべースの構築・運用を実現していくため、クラウドを軸に検討することになりました。コストの抑制、短期間での構築、世界各国の拠点が持つデータをクラウドに吸い上げることができる仕組みとして『Microsoft Azure』を選定しました」(山本氏)

導入のプロセス

Microsoft Teamsを使って質問にも迅速かつ具体的にフィードバック

 2019年6月、同社はデータ分析基盤の構築に、ジールを構築パートナーとするMicrosoft Azureを選択した。基盤構築を担うジールは、2019年7月から1カ月かけて同社の要望に最適化された構成にするべく、丁寧にヒヤリングを実施し、わずか3週間で設定を完了した。

 Microsoft Azureを利用したデータ分析基盤は、世界各拠点のシステムのデータを、ストレージ間でファイルのコピーが容易に行えるライブラリ「AzCopy」を使って、Microsoft Azureストレージサービスにデータアップロードを行った。データをData Factoryで抽出、変換・加工、格納し、SQLデータベースにつなげていく。さらにSQLデータベースにPower BIを接続し、データを分析する。Data Factoryを中核にノンコーディングで、人が介在しない自動化された分析基盤を実現している点が大きな特徴だ。

導入効果と展望

トライアルに確かな手応え
グローバルに展開へ

 ヤマハ発動機の成長戦略を支えるMicrosoft Azureによるデータ分析基盤は、2019年12月よりトライアルを開始。感触は上々だ。

 「今後データ分析基盤の活用によってデマンドチェーン変革が大きく前進すると期待しています。これまで販売や在庫など現地の情報は、人手を介して入手していました。またデータ集計などにExcelを使用しており、属人化やミスの可能性もあります。しかし、データ分析基盤を導入し自動化を図ることで、市場から上がってくる情報のスピードは飛躍的に向上できたことに加えて、工数の削減や、情報の精度を高めることができます」(横山氏)

 今後、同社ではグローバルにデータ分析基盤を展開していく予定となっている。

 「クラウドサービスを利用しているため、サーバやストレージなどを調達・運用する必要もないことから展開も容易です。また需要予測の取り組みも進めていきます。将来的には、データ分析基盤からグローバルPSI(Production Sales Inventory:生産・販売・在庫)システムに情報を入力することで需給調整の対応をより柔軟でスピーディに進めていきます」(横山氏)

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