【提言】コロナ蔓延! 中国工場のカタストロフィで中小製造業復活の転機『ロボファクトリー』の必然性〜日本の製造業再起動に向けて(60)

『カタストロフィ(catastrophe)』とは、時として『大惨事』と訳されるが、突然のキッカケから修復不能の事態に発展した大災難を意味し、『破壊』を表現する言葉である。中国発の新型ウイルスの蔓延は、深刻な脅威として世界中に感染が広がっている。

人から人への猛烈な感染力によって、世界的パンデミック(感染爆発)となる不安が人々を恐怖に陥れているが、新型ウイルスの殺傷力には限界があり、人類滅亡というカタストロフィ(大惨事)を危惧する人はいない。

しかし、ビジネス視点では、カタストロフィを意識せざるを得ない側面がある。具体的には、日本企業の中国現地工場が、カタストロフィとなる可能性を否定できない。特に、中国に多くの製造拠点を持つ大手製造業は大きな戦略変更を迫られている。

 

新型ウイルス「COVID-19」の蔓延はグローバル主義のカタストロフィへの決定打と言っても過言ではない。グローバル主義とは、各国の規制や障壁をなくし、ビジネスの自由化を推し進めた思想であり、数十年前より米英から始まった。日本でも中国への製造シフトを推進し、金、技術、人材を投入し、中国工場を建設し育成したが、ビジネスとして失敗した例が数多く報道されている。大手家電メーカーを筆頭に、グローバル主義は日本にとって鬼門である。

しかし不思議なことに、日本の政治思想も経済界も今日まで『グローバル主義』の方針を変更していない。ところが、米英ではすでに『グローバル主義』への否定が叫ばれ、実行されている。米国では、トランプ政権による自国第一主義や米中貿易戦争により、反グローバル主義が主流となり、欧州ではグローバル主義の代表『EU(欧州連合)』の求心力が低下し、英国のブレグジット(欧州連合離脱)をキッカケに、欧州全体で反グローバル主義が増えている。

反グローバルには鈍重な日本は、皮肉にも新型ウイルスによって、グローバル主義や海外製造拠点への否定が始まっている。

 

米国では海外製造拠点は既に否定され、米国国内に製造を戻す『リショアリング(製造回帰)』が積極的に実行されているが、リショアリングに躊躇していた日本製造業も、今まさに(好むと好まざるとにかかわらず)新型ウイルス蔓延の影響を目の当たりにし、リショアリングを検討せざるを得ない事態となった。

また、『チャイナプラスワン』の言葉に煽られ、中国以外のアジア諸国への進出を考えていた企業にとっても(サプライチェーン確保の観点から)アジア進出が得策ではない事を痛感している筈である。新型ウイルスの影響で中国からのサプライチェーンが分断され、日本製造業も当面、想像を超える幾多の混乱が続くだろうが、長期的視点に立てば、リショアリングは、日本製造業にとって必ずしもマイナスだけではない。

特に中小製造業にとっての次への転機であるとも言える。リショアリングの本格化によって、製造の多くが国内に戻るので、中小製造業は大幅な受注増も期待できる。しかし、楽観してはいけない。乗り越えなければならない課題が多く存在する。中小製造業には深刻な『人手不足』というアキレス腱が存在し、生産能力の増大にブレーキが掛かっている。

 

リショアリングによる大幅受注増をこなす為には、①原価低減 ②量産対応の2つの課題を乗り越えなくてはならない。従来の生産体型の継続では課題克服は難しいが、幸いにしてRPA(ソフトロボット)やAI(人工知能)などの最先端技術が、生産性向上と生産能力増強の特効薬として存在している。

次世代の中小製造業は、本格的な自動化、すなわち、事務所も製造現場も徹底的なロボット化による『ロボファクトリー』を目指すことである。ロボファクトリーこそ、中小製造業の新戦略であり、将来の姿であると断言できる。ロボファクトリーの構築は、ただ単に製造現場の自動化を行うことではなく、事務所やエンジニアリングなどの人手作業を自動化することが極めて重要である。

この実現には、高度な『図面管理システム』が必要である。生産管理も工程管理もCAD/CAMも図面との高度な統合があってロボファクトリーが完成する。

 

当社アルファTKGでは、「図面RPA(当社独自開発・ソフトロボット))や「図面AI(当社独自開発・人工知能))を市場にリリースし、大きな効果が検証されている。今回は、具体的事例から、図面RPAや図面AIの優れた効果を紹介する。

図面RPAや図面AIは、2万1000人規模の精密板金企業を中心に、昨年より導入が開始された極めて最新のソリューションである。この導入は、すでに数十社にのぼり、新規導入企業も急上昇中である。導入効果は絶大で、平均月200時間の省人化効果と20%の生産性向上が確認されている。

社内に存在する図面は、紙図面から3Dデータに至るまで、図面RPAによって図番など有効情報を自動的に読み込み、クラウドサーバにビックデータとして自動整理し保存される。図面RPAにより、生産管理やCAD/CAMなど別々のシステムから、同一図番の情報を瞬時に探し、図面フォルダーに自動格納するので、製造現場では図面と一緒に必要情報がすべて呼び出しでき、内段取り時間が大幅削減し、生産性が向上する。また、図面AIにより類似図面を瞬時に探したりできるので、図面検索時間をほとんどゼロとなり、省人化効果とリピート2度作りの防止に役立っている。

図面RPAや図面AIなどによる高度な図面管理システムは、ロボファクトリーを構築する最新技術であり、中小製造業にとっての必需品となるだろう。

 

◆高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。

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