2019年(令和元年)版 情報通信白書、Society5.0の実現に向けて

2019年12月4日

ICT社会の進化と、デジタル変革がもたらすもの

デジタル変革の時代を迎え、これから製造業に求められる道はITとOTの融合がポイントを握ると言われる。総務省が毎年まとめている「情報通信白書」の2019年版から、日本の情報通信産業の現在地について紹介する。

なお同白書は下記より閲覧またはダウンロードできる。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/index.html

 

■第1章 日本のICTとデジタル経済のこれまで

第1章ではICTとデジタル経済のこれまでの進化の歴史を解説。日本はどのようにICTを導入してきて、他国と比べてどうだったのかを見ることで現在の状況と課題をより明確にしている。

 

ICTサービスの進化と企業の利用、産業の変化

はじめにICTサービスと企業の利用について、平成時代は携帯電話とインターネットが広く普及し、1994年の端末売切制の導入など制度改革が普及を促進。企業のICT利用は、昭和時代には世界に先駆けたオンラインシステムの構築といった先進的な利用があったが、平成時代はバブル崩壊の影響もあってICT投資が停滞。アメリカやヨーロッパと比べても低い伸びにとどまった。80~90年代にはICTシステムの構築の外部委託が進み、SIer(システムインテグレーター)による受託開発中心の情報システム構築が盛んとなった。日本独自の構造はこの時期に生まれたとしている。

この時代はICT産業も変化が激しかった。電気通信事業は、1985年の通信自由化以降、NTTをはじめ、多くの事業者による活発な競争を通じて大きく発展。通信機器の設計・製造を行うメーカーがコンピューター分野にも進出するといった形でICT関連の製造業も発展。ICT関連機器の生産額・輸出額は増加を続け「電子立国」と称されるまでになったが、1985年以降は国内市場は堅調だが輸出が減速。2000年代に入ってからは生産・輸出共に減少傾向となり、2013年には輸出額と輸入額が逆転してしまった。通信機器は1997年をピークに生産が減少し、2000年代後半からはスマートフォンの普及にともなって輸入が急増している。

こうなった要因には、円高によるメーカーの生産拠点の海外移転やインターネットの普及による国産交換機から海外製ルータ等への代替、通信キャリアを中心に国内顧客が安定したことによる海外展開の消極化、垂直統合型の自前主義、グローバルな分業メリットを活かせなかったなどが挙げられる。さらにGAFAのようなグローバルな存在感を持つデジタルプラットフォーマーが育たなかったのも要因のひとつとされる。

 

ICTの新たな潮流

この時期は世界でICTの新たな潮流が生まれていた頃でもあった。アメリカでGAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)、中国のBAT(Baidu、Aribaba、Tencnet)といったデジタル・プラットフォーマーが生まれ、グローバル規模で個人・企業に時間・場所・規模の制約を超えた経済活動を可能にした。さらにネットワーク効果、インターネット上のデータの収集・利用が雪だるま式に作用することにより成長した。

人工知能(AI)も第3次ブームを迎え、これらのデジタル・プラットフォーマー等が、基盤となる様々なツールをオープンソースやクラウド等により提供することで開発・利用が容易になり、同時にこれらに依存するエコシステムが形成されつつある。

またデジタル・プラットフォーマーはリアルの世界にも進出しその動向が注目され、IoTの普及にともなってサイバーセキュリティの対応が年々、重要性を高めている。

 

▼ICT関連機器の生産・輸出等の推移

▼各国のICT投資額の推移と比較

▼通信機器の生産・輸出入の推移

 

■第2章 Society5.0のために必要なこと

第2章では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性とそれが実現する社会「Society5.0」について解説している。そのなかでは地方に成長のチャンスが生まれ、人とICT技術との関係性が変わることも示唆している。

 

デジタル経済の特質とDX

デジタル時代の経済では、データが価値創出の源泉となり、ICTがコスト構造を変革。時間・場所の制約を超えた活動を可能とする「市場の拡大化」と、小さなニッチ市場を成立させる「市場の細粒化」が両輪で進んでいる。

ICTのもたらす新たなコスト構造は企業の形の変革を引き起こし、同時に時代に合わせたビジネスモデルを持つICT企業による新規産業への進出が広がり、従来のビジネスモデルを成り立たなくさせる「デジタルディスラプション」(デジタルによる破壊)も引き起こしている。

そのため企業は変化に対応するためにICTを事業のコアと位置づけ、ICTと一体化することでビジネスモデル自体を変革するデジタルトランスフォーメーションが求められている。

▼変化に対応するためのデジタルトランスフォーメーション

 

デジタル経済の進化がもたらす社会

デジタル経済の進展にともない、ICTの経済成長への効果を懐疑的に見る「技術悲観論」や、無料サービスやシェアリングエコノミーの広がりによる従来のGDPの有効性や技術的な補足への課題、さらに格差の拡大などが発生。しかしながらデジタル経済の進化の先にSociety 5.0を実現し、SDGsへの貢献等、単なる経済発展にとどまらない社会的課題の解決を実現することが重要だとしている。

そんななか日本で必要とされる改革について、企業ではこれまでコア業務でないとして外部委託の対象としてきたICTをコア業務と位置付けることが必須。さらに情報システム部門だけでなく、事業部門がより重要な役割を果たすことが求められることから、ICT企業側に加えてユーザー企業側でもICT人材の充実が必要となる。

 

日本に必要な改革

また、ビジネスモデルの変革にあたっては、自前主義を脱してスタートアップ企業等との協調によるオープンイノベーションを行うことが求められる。

大企業同士、大企業と中小企業などの企業間交流が重要。さらにスタートアップ企業についても「出口」が株式公開(IPO)に偏重していることから、外国のように大企業等によるM&Aという出口が活性化することで個別のスタートアップ企業の支援につながるのに加え、起業を巡るエコシステム自体を変える可能性があるとしている。

また働き方についてもテレワーク等、時間・場所の制約を超えるデジタル経済に即した働き方改革を推進していく必要があるとしている。

▼ICTの位置付けの転換

 

地方のチャンスと人と技術の関係性

デジタル経済ではICT活用による取引先の多様化・商圏の拡大、遠隔地での仕事の受注、機械による人手不足の補完等が可能となっており、地方にとってのチャンスとなる。このチャンスをつかむためには、ICTインフラの整備やデータの活用の取り組みが重要。特に5GはIoTのインフラとなり、暮らしや産業、医療、災害対応等のあらゆる分野において活用することで、地方の課題解決が期待される。

また、地方独自のニッチな「売り」「強み」「ブランド」が海外からも発見されるようになり、マーケットが成立する可能性がある。各地方の魅力を磨きつつ、新たな連携相手を開拓することにより、更に潜在能力を発揮することが可能となる。

人とICTの関係性について、AI等の新たなICTは、人間が「できること」を代替して雇用を奪うものと捉えるのではなく、人間の様々な能力を「拡張」(手足の機能、視覚・聴覚、理解・習得能力等を向上)することで、「できること」を強化するものと捉える視点が重要。人と敵対するものではなく、人と協働することでより便利な社会が生まれ、その技術を積極的に活用すべきとしている。