【提言】令和時代の製造業人手不足 最新兵器「RPA」の活用と生産性向上〜日本の製造業再起動に向けて(55)

2019年9月25日

日本の生産年齢人口が、急速に減少している。生産年齢人口とは、人口の総数から子供や老人を除いた15歳~64歳までの人口のことである。戦後の日本の生産年齢人口は増加を続け、1995年にピークの8700万人となったが、以降は減少を続け、現在までに1000万人以上が減ってしまった。10年後には7000万人を割り込むと予想されている。新聞やテレビでは、日本の人口減少による危機説が大きく報道されているが、日本が直面する課題は、人口減少より遥かに速いスピードで進む生産年齢人口の減少である。

人口減少による経済への懸念は、需要減少であるが、本当に深刻なのは、人手不足でモノが作れずサービスが提供できない供給危機である。すでに中小製造業では、人手不足の影響が深刻化しているのは周知の事実である。大半の中小製造業では、優秀な若手人材の確保が困難を極め、アジア諸国から労働者の調達に邁進し、当面の生産を乗り切っているが、外国人労働者に頼るものづくり経営が非常に危険であることは、ドイツはじめ欧州連合(EU)先進国の混乱をみれば一目瞭然である。

特にドイツでは、移民労働者を受け入れてきた結果、さまざまな後遺症(設備投資の遅れ、企業衰退、治安悪化、自国民失業など)が発生し、EU崩壊危機まで危惧される重要問題に発展しているが、日本では報道されていない。

 

突然、ドイツ近況分析の話題に変わって恐縮であるが、日本は『ドイツ事例を真剣に学ぶ必要がある』と筆者は痛切に感じている。その理由は、ドイツの事例は日本の未来への警鐘であるが、日本では海外で起きている潮流変化に鈍重であり、世界から遅れた『周回遅れの施策』に陥っているからである。

ドイツは、インダストリー4.0で世界の製造業に衝撃を与えたIoTのパイオニアである。『日本より進化した優等国』といったドイツへのイメージも日本で定着し、アジア諸国も中国も、ドイツのものづくりをお手本とする傾向があった。

ところが、VW(フォルクスワーゲン)の排ガス不正事件のあたりから『ドイツものづくり神話』が崩壊し始め、最近になってドイツは本格的なリセッション(景気後退)に陥っているのをご存知だろうか? ドイツの提唱したインダストリー4.0は、その構想は素晴らしいものの、ドイツ国内においても本格的実証例は非常に乏しく、中小製造業には普及していない。

また一方で、ドイツは移民大国であり、移民後遺症に悩まされている。労働時間の短縮を美徳とする国策が、外国人労働者依存経営を常態化させた結果、生産性向上に関心のない労働環境が生まれ、最新技術への投資が遅れ、現場の改善も進まない悪い事態を招いている。

 

さらに、ドイツは極端な外需依存の輸出大国である。米中貿易戦争による中国の景気後退やEU周辺国の衰退を受けて、外需が衰退し、絶好調の経済環境から一転し深刻な不況に突入している。

経営不振のドイツ銀行は、20%近い社員をリストラする断腸の策で、延命を図っているが、次の大惨事はタイタニックと同じ運命となるかもしれない。ドイツは、前進も退路も断たれた打つ手なしの状況にある。

ドイツから学ぶべき最大のポイントは、『外国人労働者の弊害』と『ドイツ式インダストリー4.0の盲点』についてである。

 

さて、これらのドイツ事例を下敷きに、話を日本の中小製造業の人手不足と生産性向上の話題に戻したい。ドイツと違って、日本の中小製造業は極めて健全である(今のところは…)。

日本の中小製造業では、経営者と一体になって生産性向上に努力する工場長格のベテラン従業員が複数存在し、従業員の一人一人も『小さな改善運動』に熱心であり、現場目線で生産性向上に取り組む姿は特筆に値する。日本以外のあらゆる国では成し遂げられない『現場力』が日本の魅力であるが、『事務所要員の非効率化』や『経営幹部への仕事の集中』が普遍的に起きており、中小製造業が生産性向上に向けての解決すべき重要な課題となっている。

これらの課題を根本から解決する特効薬をご紹介したい。

 

その名は、『RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)』。ソフトロボットである。平成後期にRPA技術が確立され話題となった。AI(人工知能)やOCR技術を取り込んだ『汎用RPA』が世の中に登場すると、またたく間に、銀行・保険会社・大企業メーカーや一部の地方自治体などで普及が進んでいった。RPAは『人に代わってコンピュータ操作や処理を自動で行ってくれるアシスタント』であり、コンピュータ内に常駐する目に見えないロボットである。

当社(アルファTKG)は、3年以上前から製造業に特化するRPAの社内開発を行い、昨年度より本格的市場投入を開始した。中小製造業がRPAを導入することで、幹部社員や事務員の単純作業が開放され、大幅な生産性向上が実現することが、多くの導入事例によって実証されている。

具体例をいくつか挙げると、①見積作業をRPAで自動化した結果、幹部社員が単純な見積作業から開放された ②図面登録に必要な図番入力など、単純人手作業をRPAで自動化し、大幅な間接要員削減につながった ③生産管理システムと図面管理をRPAで自動統合し、総合IoTシステムを実現した、RPAの活躍が増大しており、大きな生産性向上と投資効果を生んでいる。当社では、製造業向けのRPAを目的別に、月額数千円から2万円の費用で販売している。

具体的には①図面読み取りRPA ②注文書読み取りRPA ③CAD間接続RPA ④CAD/CAM連携RPA ⑤作業指示書読み取りRPA ⑥PDF/DXF自動変換RPAほか、数多くのRPAを市場に投入し、さらにその種類を日々増やしている。

近い将来、一人の社員に複数台のRPAがアシスタントとして活躍する時代がやってくるだろう。

 

◆高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。