人手不足解消に向けた企業の意識調査、「賃金水準の引き上げ」がトップに

現在、就業者の増加傾向が続く一方で、2018年度の有効求人倍率は45年ぶりの高水準となるなど、労働需給のひっ迫度は増している。また、限られた人材の獲得に向けて企業間の競争が激化する一方で、求職者にとっては就業機会の拡大や賃金の上昇など明るい材料として捉えられる。

こうしたなかで、人手不足による人件費の上昇が企業の収益環境に大きく影響するなか、人材の確保や生産性の向上など、人手不足の解消に向けた取り組みは企業の喫緊の課題となっている。

そこで、帝国データバンクは、人手不足の解消に関する企業の見解について調査を行なった。

調査期間は2019年8月19日〜31日、調査対象は全国2万3638社で、有効回答企業数は1万7社(回答率42.3%)。

 

■■調査結果■■

1. 人手が不足している部門・役割は
「生産現場に携わる従業員」が 57.2%でトップ

現在の従業員の過不足状況ついて、正社員または非正社員のいずれかが「不足」している企業は半数超にのぼる。

そこで、従業員が「不足」していると回答した企業 5,461 社に対して、どのような部門・役割で人手が不足しているか尋ねたところ、「生産現場に携わる従業員」(57.2%)がトップとなり、6 割近くの企業で不足していた(複数回答、以下同)。

次いで、「営業部門の従業員」(47.7%)、「高度な技術を持つ従業員」(37.0%)などが高い。同様の質問を行った 2013 年 12 月時点と比較すると順位の変動はみられなかったが、多くの部門・役割で不足割合が高まる結果となった。

「生産現場に携わる従業員」と回答した企業は『製造』『運輸・倉庫』『建設』で高く、「工事現場の現場代理人が足りていない」(コンクリート製品製造、新潟県)や「慢性的にドライバーが不足している」(一般貨物自動車運送、福岡県)といった意見がみられた。

 

 

2. 人手不足による影響
「需要増加への対応が困難」が半数を超える

現在の従業員の過不足感について「不足」していると回答した企業 5,461 社に対して、人手が不足することによりどのような影響があるか尋ねたところ、「需要増加への対応が困難」が 50.5%と半数を超え、最も高い結果となった(複数回答、以下同)。

なかでも、五輪関連などによる旺盛な需要が続く『建設』や、荷動きが活発な『運輸・倉庫』などで高水準となった。次いで、「時間外労働の増加」(36.6%)、「新事業・新分野への展開が困難」(31.7%)なども高い。

また、「需要増加への対応が困難」「納期の遅延」「現状の事業規模の維持が困難」など営業活動に関する影響は企業規模が小さいほど数値が高い傾向がみられた。一方で、「時間外労働の増加」「休暇取得数の減少」など労働環境への影響では規模が大きいほど人手不足による影響が大きく表れていた。

 

3. 多様な人材の活用
「シニア」「女性」が 3 割近くにのぼる

生産年齢人口(15~64 歳)は今後も減少することが予想され、政府は女性の活躍推進や外国人材の活用を目的とした出入国管理法の改正を進めるなど、企業において多様な人材を活用することが注目されている。

そこで、自社において今後どのような人材を最も積極的に活用したいか尋ねたところ、「シニア」が29.2%で最も高く、「女性」(27.9%)「外国人」(13.7%)と続いた。一方で「障害者」は 1.1%にとどまった。

企業からは、「シニアで働く意欲があり健康上の問題がない場合は、雇用を延長し、長く働けるような環境作りに努めている」(広告代理、大阪府)や「女性の活用を積極的に進め、労働力の不足をカバーしたい」(配線器具・配線付属品製造、静岡県)といった積極的な声があがった。

一方で、外国人材については「ビザ発給の制限が厳しく、日本人同様の雇用をする企業でも長期雇用を想定するとハードルが高い」(パレット製造、新潟県)や「外国人研修生の受け入れも、受け入れるための準備に資金が必要なうえに、何をしていいのかわからない」(各種機械・同部分品製造修理、兵庫県)などの課題をあげる企業も多くみられた。

 

4. 人手不足の解消法
「賃金水準の引き上げ」がトップ

自社において、人手不足の解消に向けてどのようなことに取り組んでいるのか尋ねたところ、「賃金水準の引き上げ」が 38.1%でトップとなった(複数回答、以下同)。

次いで、「職場内コミュニケーションの活性化」(36.7%)、「残業等の時間外労働の削減」(35.0%)が続き、「業務プロセスの改善や工夫」(31.3%)といった生産性の向上に向けた取り組みも上位にあがった。

規模別では、最も高かった「賃金水準の引き上げ」に関しては「中小企業」で特に数値が高く、人材の確保や定着に向けた方法として賃上げが重要視されている様子がうかがえる。また、「残業等の時間外労働の削減」「休暇取得の徹底」のような労働環境に関する取り組みでは、「大企業」で高い数値を示した。

 

企業からは、「職人の賃金を引き上げ、特に若者に魅力を感じられる業界にしたい」(一般管工事、東京都)や「海外の優れた人材を取り入れるために、賃金を上昇させないといけない」(看板・標識機製造、岐阜県)など、賃上げに積極的な声が聞かれた。

一方で、「賃金の見直しを年末に向けて対応しているが、賃金高騰に対応しきれるか」(一般貨物自動車運送、茨城県)といった懸念も多く寄せられた。また、「若手社員向けに教育プログラムを作り、達成感を持てるようにした」(建築工事、福岡県)といった、職場における充実感を意識した声も聞かれた。

また、雇用過不足別にみると、従業員が不足している企業では「賃金水準の引き上げ」「職場内コミュニケーションの活性化」「人事評価制度の見直し」などが高い。他方、「やりがいのある仕事を任せる」「休暇取得の徹底」などでは、総じて人手不足感に関わらずさまざまな企業で取り組んでいる様子がうかがえる。

 

5. 社会全体の取り組み
「職業紹介機能の強化・充実」が 32.6%でトップ

人手不足の解消に向けて、社会全体としてどのようなことに取り組むべきか尋ねたところ、ハローワークなどの「職業紹介機能の強化・充実」が 32.6%で最も高かった(複数回答、以下同)。

次いで、「働き方改革の推進」(29.7%)、「社会保障制度の見直し」(26.9%)、「労働市場の流動化」(26.8%)、「通年採用の拡大」(25.5%)などが続いた。他方、「職種別採用の拡大」(9.9%)や「オファー型採用の拡大」(4.8%)といった、採用方法の多様化は 1 ケタ台にとどまった。

 

出典:帝国データバンク「人手不足の解消に向けた企業の意識調査」

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