産業用ロボットを巡る 光と影(14)

失敗しないロボットメーカーの選び方!
ロボットメーカーの選択ミスで大きな損失を招く!(前編)

「軌跡精度」「絶対精度」「剛性」 加工時に致命的な差

大きな損失を招く誤った認識

最近、新聞などで「産業用ロボットの発注が伸びている」というニュースをよく耳にします。そして、さまざまな産業用ロボットメーカーも業績は好調のようです。

産業用ロボットメーカーはさまざまあります。実名は伏せますが、日本の青色・黄色・白色・灰色のロボット。また海外のオレンジ・黄色のロボットなどです。

私は産業用ロボットの効率UPのコンサルタントなどを全国の会社を回って行っている仕事柄、多くの工場でロボットを見ております。そこで、ほとんどの会社がロボットメーカーに関して、大きな誤解をしていることに気付かされます。
その誤解とは、『ロボットメーカーはどれを選んでもさほど変わらない。だから、知り合いのSIもしくは商社に薦められたロボットメーカーを選択すれば良い』という事です。

ひどい場合、「このロボットメーカーはよく耳にするメーカーだから、間違いない」という安易な認識だけで選択してしまう場合も多く目にします。

その結果、ロボット導入後に「製品の一部しかロボットで加工ができない」「ソフトとの連携がうまくいかず効率UPできない」などの問題が起きています。よって、企業にとって大きな痛手となるせっかく高額の買い物をしたのに償却できない、という事態が起きています。私もさまざまな工場で、大きな期待をされ購入されたロボットが埃をかぶっている状況をよく目にします。

先日もある会社から依頼を頂いたので工場にお伺いすると、「加工したい製品の約100%をロボットで加工できるとSIから説明を受けたので、期待して購入したが、実際は加工の際にムラができてしまうので、100%どころか10%しかロボットで加工できていない」「結局、自動化に失敗して手作業に逆戻りだ」と言われていました。

なぜ選択を間違えると大きな損失を招くのか

もちろん多くの会社はロボットを選択する際に、「可搬重量」や「稼働範囲」が適切なものを選択されています。また、「繰り返し精度」もロボットのマニュアルに記載されてありますので、このチェックもされたうえで購入されます。

しかし、肝心な事を見落としています。

それは、ロボットメーカーの違いで「軌跡精度」「絶対精度」「剛性」が全く違うという事です。さらに「カスタマイズ性」もかなり違います。

特に「軌跡精度」「絶対精度」「剛性」は加工の際に致命的な差を生じます。例えば、レーザトリム(レーザカット)を、これらが優秀なロボットとそうでないロボットで比べると、片方では仕上がりの切れ目が奇麗にカットされていますが、もう片方ではギザギザになってしまい加工製品としては成り立たない、という事です。

「誤差を修正するオプションなどを後付けすれば解決するのでは?」と考える方がいらっしゃいますが、これはロボットの特性として起きてしまう事なので、全く解決しないと考えてください。

用途によって変わる

ただし、これを読まれている方が、用途としてハンドリングやスポット溶接『だけ』をお考えなら、ロボットメーカーの違いでそんなに大きな損失を招く事はないと思います。「軌跡精度」「絶対精度」「剛性」などが劣っていても、何とかなるからです。

しかし、ハンドリングやスポット溶接でのロボット導入は頭打ちで、これからロボットを導入される会社の用途は加工全般のはずです。例えばアーク溶接・レーザー溶接・バリ取り・シーリング・ローラーヘム・カット(レーザー・ウォータージェットなど)・穴あけ・溶射・塗装などです。これらの場合は、前述の通り、ロボットメーカーの選択ミスが大きな損失を招きます。

ロボットメーカー自身も客観視していない

ではロボットメーカーに聞けば失敗しないのでしょうか? 答えはNOです。

意外に思われるかもしれませんが、ロボットメーカーも自社のロボットの得意・不得意を理解していません。先日もいくつかのロボットメーカーの営業の方に「御社のロボットは他社のロボットと比べて、優劣は何でしょうか?」とお聞きすると、「正直、わかりません。ただ、お客さまのご要望にできる限りお応えするだけです」という回答しか返ってきませんでした。
ロボットメーカーでさえも説明できないのに、購入する側が分かるはずがないです。この事が、多くの会社が選択を間違える理由の一つです。

もう少し詳しく

ロボットメーカーにより、「軌跡精度」「絶対精度」「剛性」そして「カスタマイズ性」が違う、と前述しましたが、これらをもう少し詳しく説明します。

「軌跡精度」とは、文字のごとく、ロボットが移動する際の軌跡の精度です。簡単な例ですと、ロボットに鉛筆を持たせて直線を描くプログラムを作成(ティーチングを)して動作させます。この精度が優れていないと、鉛筆で描いた線がゆらゆらと揺れた様になります。曲線も同様で、例えば奇麗な円もしくは楕円を描いてほしいのに、デコボコな円や楕円になってしまいます。

「絶対精度」とは、ロボットの移動量がプログラムと現実で一致する精度です。この精度が優れていないと、Xがプラス100ミリメートルのプログラムで移動させると、現実ではXが103ミリメートルつまり3ミリメートル余分に移動してしまいます。それだけでなく、たわみ等でZまでマイナス2ミリメートル移動してしまいます。

「剛性」とは、ロボットの外部からの力の影響に耐えうる能力です。これが優れていないと、研磨などをロボットにさせた際に、製品に対してロボットが押し負けてしまい、加工にムラができてしまいます。

「カスタマイズ性」は長くなるので、別の機会にしたいと思いますが、遠隔でロボットの操作や、ロボット以外の外部機器との連携、などなどです。

よって、これらの特性が優れているか劣っているかで、加工がうまくいくか失敗するかの大きな差が生ずるのです。したがって、この事を知ったうえでロボットメーカーを選ばないと、会社としては大きな損失を招いてしまいます。(続く)

◆山下夏樹(やましたなつき)
富士ロボット株式会社(http://www.fuji-robot.com)代表取締役。1973年生まれ。産業用ロボットコンサルタント。サーボモータ6つを使って1からロボットを作成した経歴を持つ。自社のオフラインティーチングソフトでさまざまな現場で産業用ロボットのティーチング工数を10分の1にするなど、生産効率UPを実現してきた。さまざまな現場での問題解決の方法を知る、産業用ロボットの導入のプロ。コンサルタントは「とりあえず無償相談から」の窓口を設けている。

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