SAP Ariba もうひとつの製造業のデジタル化 買い手と売り手をネットワークでつないで

「最高」の調達・購買目指す

IoTやスマートファクトリーなど、製造業のデジタル化、効率化の基本は「ネットワークにつなぐこと」。とはいえ、つなぐことが可能なのは、何も工場内設備や工場同士だけではない。調達・購買に関わる売り手と買い手、サプライヤーとバイヤーをネットワークでつなげば、製品の流通がスムーズになって効率化でき、活性化につながる。そんな調達・購買分野で存在感を発揮しているのが、SAPが展開するクラウドベースの調達・購買ソリューション「Ariba(アリバ)」だ。同社のアジアパシフィック統括のベン・レッドワイン氏に話を聞いた。

Aribaは、見積もりから契約、請求、支払いまでの調達・購買プロセスをサポートするバイヤー(買い手)向けの調達・購買支援と、サプライヤー(売り手)が製品を掲載して実際に売買できるプラットフォーム「Ariba Network」で構成される。バイヤーとサプライヤーを同じプラットフォーム上でつなげ、スムーズな取引を実現している。

現在、世界190カ国でサービスを展開し、ネットワーク上には約250万社サプライヤーが接続されている。1年間の取引額は約1兆ドルまで拡大。通常のECサイトやサービスと異なり、企業の調達・購買の最適化のためにBtoBの商取引に特化しているのが特徴だ。企業としては1996年に設立され、2012年に買収によりSAP傘下に加入。日本では00年からビジネスをスタートし、15年以上の歴史を持っている。特に大手企業の調達・購買部門に多く採用されている。

—— 日本市場の印象を教えてください。

日本市場は、世界に比べて進んでいることと遅れているところがある。製品やサービスの品質は他国に比べて優れている。それだけに期待値も高く、Aribaはクラウドソリューションだが、市場の管理やプロダクト、サポートに対する投資は重点的に行っている。

一方、遅れていると感じるのは、間接材支出でカタログベースの購買が主流であること。他国では購買の仕組みが一元化され、カタログベースの取引だけでなく、Webも含めてさまざまなサービスに対応している。日本ではまだ啓蒙が必要だ。

日本のマーケットで多く取引されているのは、MROと言われる保守やメンテナンス、オペレーションなどの資材。OAサプライヤーIT機器、スペア部品などかなりの取引がある。

—— サプライヤーをネットワークにつなぐための活動はどうしていますか?

あるバイヤーがAribaを利用する際、普段使うサプライヤーがネットワークにない場合、当社がバイヤーに代わってサプライヤーをつなぐこともしている。社内にはそれを専門とした社員が100人以上在籍し、サプライヤーをつなげるための統合やサポート、トレーニングなどは当社から無償で提供する形をとっている。日本でも同様のチームがあり、取り組みを行っている。

バイヤーとしては、自社のデジタル化に合わせてサプライヤー側にもそれを実行してほしい、自動化してほしいと考える。当社がサプライヤーにバイヤー側の意見を伝えることもある。そうした場合の採用率はとても高い。

—— Ariba PayとSpot Buyとはどんなもの?

Ariba Payは、バイヤーとサプライヤーの間で使われる電子支払いのシステム。サプライヤーからみると、受注してそれを認識し、出荷通知を出し、伝票を発行して支払いを受けるまでの仕組みをまかなうシステムだ。

また、当社では調達・購買のすべてのパターンに適した仕組みを提供している。調達・購買と一口に言っても3段階ある。割合としてもっとも多いのが、契約による戦略的な調達・購買の60~75%はこれが占める。次いで、戦略的ではないが見積もりを取って行うもの。ここまでは調達部門が関わるので実態を把握できる。そして最後が、調達グループを経ずに買うスポット的な取引。購買活動は必ずしも大きな金額だけではなく、見積もりを出すまでもない小額のものを買う場合もある。

Spot Buyはスポット的な取引に適したサービスで、ここで調達するようにしておけば、何を買ったかを把握し、見える化して活動をコントロールできる。またサプライヤー側にとっても、これまでに発生しなかったビジネスや収益につながるチャンスになる。

—— 今後に向けて。

間接材への取り組みは業界ごとに異なり、それぞれに合わせた機能を付けていく。例えば中堅中小向けのシンプルなソリューションもその一環だ。中堅中小企業には調達の専門部隊を持っていない。ここではSpot Buyを使った支出の方が多くなる可能性があり、それに対応していかなければならない。

日本はGDP世界3位の大国だ。この4年間でビジネスが倍増する勢いを見せており、成長の機会が大きい。野心的に取り組んでいきたい。また、これまでは間接材に力を入れてきたが、製造業が盛んでメーカーが多い地域でもあることから、直接材に軸足を移しつつある。今後も継続して直接材の領域にも取り組み、商取引に貢献していきたい。

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