【サーボモータ特集】生産能力超える受注で推移 半導体・FPD、工作機械、ロボット向けが牽引

17年上期は約30%増

サーボモータの市場が過熱している。半導体製造装置やロボット、工作機械、自動車などの主要関連市場でいずれも需要が急増しており、メーカー各社は生産能力一杯の増産に追われている。少なくとも3年後の2020年まではこの状況が続くという強気の見方も出始め、高水準の需要が維持されそうだ。製品的には高分解による高速・高精度制御や、簡単な調整作業、安全対策などを中心に取り組まれ、また用途ごとの専用機種を開発して、サーボモータの使いやすさを高める動きも活発だ。

日本電機工業会(JEMA)がまとめている産業用汎用電気機器の出荷統計によると、サーボモータの2016年度(16年4月~17年3月)の出荷額は1691億円で前年度比106.5%となっている。特に昨年秋以降の出荷が急増しており、17年1月~6月は同127.9%の970億円で、17年度第1四半期は同131.7%の513億円と年間2000億円ベースの出荷となっている。国内出荷に比べ、輸出の伸びが著しく、17年1月~6月は同153%と以上な伸びとなっている。

このため、サーボモータ各社は2直体制で増産に取り組んでいるところが多いが、一部では部品・材料の手配が追いつかず、納期対応ができないところも見られる。

現在のサーボモータ市場の好調を支えている一番の要因は好調の半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置の受注増だ。スマホやタブレットPCなどの生産拡大、車の自動運転制御に絡んだカーナビゲーションシステム、ドライブレコーダーなどでセンサやカメラなどが旺盛な需要となっていることが大きい。スマホやタブレットPCは半導体やFPDの塊ともいえる存在であり、車もまた半導体をはじめとした電子機器が大きな影響力を持つ存在になっている。

半導体・FPD(フラットパネルディスプレー)製造装置の生産は、日本半導体製造装置協会(SEAJ)の調べによると、2016年度が前年度比23.1%増の1兆9805億円と、近年にない高い伸びとなっており、17年度も10.6%増の2兆2663億円と過去最高を更新する予測となっている。このほどアップル社のスマホ新機種「アイフォーンⅩ」が発表されたが、画面への有機ELの採用や、顔認証・アニメ文字などといった機能が搭載されており、さらに半導体・FPDの需要増が見込まれている。

ロボットの需要も急増している。国内では深刻な人手不足、海外ではアジアの新興国を中心とした人件費の上昇から生産の自動化投資が急速に増えている。中国では人件費の上昇に加え、工場ワーカーの不足も加わり、自動化は待った無しの状況といわれ、ロボットなどの自動化機械に置き換えが進んでいる。

国内でも人手不足に加え、自動機やロボットでないと人では作れないものも増えており、自動化投資が取り組まれている。

最近は食品工場や薬品開発・製造でのロボット活用の取り組みが意欲的に進められており、先行き需要への期待が高い。

ロボットは産業用に加え、非製造業でもホテルでのサービスや外食産業の人手補完用、警備や清掃などといった幅広い用途で試行しながら普及が進んでいる。

日本ロボット工業会(JARA)の生産統計によると16年は過去最高の7000億円を突破し、17年は7500億円まで拡大する見通しを立てている。しかし、実態はさらに上振れ基調で推移しているとみられ、8000億円も視野に入ってきた。政府も、ロボットの普及に向けた補助金施策を強化しており、製造業、非製造業のあらゆる用途で導入に向けて検討が進んでいる。

ロボットは極端にいえばサーボモータとセンサで構成されているともいえ、ロボットの伸長はサーボモータの伸長ともほぼ比例する。半導体・FPD製造装置、ロボットとも日本が世界市場をリードしており、サーボモータメーカーにとって連携した取り組み進められやすい。

工作機械も、16年12月以降は前年同月比プラスとなっており、前年同期比2桁増と高い伸びが継続している。月ベースでは1300億円前後で推移していることから、17年の年間では前年度比20%増の1兆5000億円を超えて、過去最高を更新する勢いを見せている。17年の出荷予測は当初1兆3500億円としていたことから、大きく上振れするものとみられる。欧米市場が好調で、中国市場も回復基調で推移していることで、引き続き旺盛な受注が見込める。米国でもトランプ政権の製造業の国内回帰に向けた政策で、自国内での生産を促す取り組みを強めていることで、自動車関連を中心に、工場の立地や生産拡大などの計画を発表し、工作機械などへの波及が期待されている。

最適制御へ用途別アプリ

サーボモータの需要はこのほかに、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレーターなどのアミューズメント関連、回転ずしのベルトコンベヤー制御などでも採用が進んでおり、新たな市場を形成している。

サーボモータ各社は、使いやすさに重点を置いた製品開発を進めている。複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらに効率的な生産を進めるネットワーク化対応などが開発のポイントとなっている。

オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振制御などにも対応できるよう、各社が独自の機能を搭載している。制振制御技術ではアーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムを搭載し、さらなる高精度調整を可能にしている。

高速化では、速度周波数応答2.5kHz、22ビットロータリーエンコーダの標準搭載で、400万パルス/revを超える高分解能製品もラインアップされ、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。また、サーボモータの制御に関しては、指令応答特性を高めるフィードフォワード機能(FF機能)と、外乱抑制特性を高めるフィードバック制御(FB制御)があるが、FF制御とFB制御を完全に分離して制御を行うことができる、2自由度制御方式を搭載したサーボモータも使われている。

両制御を完全に分離することで、より高速・高精度なモータ制御が実現する。例えば電子部品実装機では、部品搭載ヘッドの振動を抑えた高速実装タクトの実現や、金属加工機では、摩擦や粘性の影響を少なくし、切断面を滑らかにするといった高精度な加工が実現できる。

さらに、1台のアンプで最大3台(3軸)のサーボモータができる機種も評価が高まっている。

最近注目されているのは、アンプの診断機能を使ったサーボモータの予知診断機能である。サーボモータの稼働時間などを計測して、故障などを予知することで稼働停止などに伴うトラブルを未然に防止することにつながる。

ネットワーク対応では、EtherNet技術をベースに、通信速度150Mbps全2重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大が図られている。

EtherCAT、MECHATROLINK、SSCNET、SercosなどEtherNetでサーボモータとのネットワークが可能な製品も増加して、一層使いやすさが増している。

セーフティ化対応も著しい。サーボモータに関連する規格として、ISO13849-1、IEC61508シリーズ、IEC62061、IEC60204-1、IEC61800-5-2などがあるが、このうちIEC60204-1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格で、停止の制御機能について定義されている。

可変速ドライブシステムの機能安全規格であるIEC61800-5-2への対応も行われている。安全規格への対応は特に、自動車製造関連の用途で求められることが多く、サーボモータ各社のほとんどが対応を行っている。

IoTとの連携が焦点に

このほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプや、IP67対応品も増えているが、食品機械などでの高温水洗浄などにも対応できるIP69Kといった製品も発売されている。

低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。

小型・軽量化の例では、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクト化が可能となる。故障の発生や外的トラブルの要因も減らせ、低コストや省資源というメリットにもつながる。

機器の小型化では、リニアサーボモータの動向も注目されている。

回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク。移動で加減速の繰り返しなどに強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などに最適である。

高トルクで低発熱という点からDD(ダイレクト・ドライブ)モータも採用が増えつつある。軸振れ・面振れの少ない高精度な制御ができる。

業界初のGaNpパワー半導体を採用したアンプ内蔵サーボモータも発売されている。低トルクリップル・低騒音に加え、制御盤サイズの小型化と省配線が実現できることから評価が高まっている。

また、バッテリーレス絶対値エンコーダ搭載のサーボモータも注目されている。回転量データを自己発電で保持することで、バッテリユニットが不要になるなど、配線の取り回しも楽になる。

そのほか、2軸サーボパックとコントローラ機能を一体化することで、制御盤の小型化と省配線に対応した製品や、サーボパックに用途ごとに最適な機能を内蔵することで、ユーザがサーボモータを簡単にすぐ使用開始できる取り組みも進んでいる。

IoTと連携したものづくりが志向される中で、装置・システムでのサーボモータの果たす役割はますます高まっている。

今後のサーボモータはこうしたネットワークをはじめとした最適ソリューションによる使い方の優劣が大きなポイントなってきそうだ。

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