端子台特集「配線作業性」「接続信頼性」進む

端子台の市場が好調な推移を見せている。半導体製造装置、工作機械、ロボット、自動車周辺、インフラなど、端子台を取り巻く環境は総じて不安な要素が少ない。今後、インフラ関連の投資が加速することが予想され、需要はさらに拡大が予想される。製品は小型・薄型に加え、配線作業性、接続信頼性などを重視した開発が進められ、とりわけ配線作業の省力化を目指した取り組みが目立つ。為替が比較的安定していることから、国内外での設備投資の増大が見込まれ、しばらくは堅調な拡大が継続しそうだ。

自然エネルギー需要は継続 「DC高耐圧化」向上

IoT化が追い風、投資拡大へ 蓄電池市場の伸び期待

国内の端子台市場規模は、ソケットや端子台コネクタ等も含めて400億円前後と推定されている。海外生産品や欧州や台湾などの海外メーカー品も増えている。単価は上がっていないが数量は増加しており、安定した市場を形成している。

端子台の国内市場は、自動車を中心とした製造業をはじめ、電力関連、新エネルギー関連、ビル設備などの投資が継続して、需要を盛り上げている。特に、スマホ、タブレットなどの情報通信関連の好調を背景に半導体・液晶製造装置関連が堅調な拡大を継続している。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)による半導体・液晶製造装置の販売高は、2016年度が前年度比23.1%増の1兆9805億円と、近年にない高い伸びとなっている。

IoTに伴う情報化で半導体を使用する、情報端末、カメラ、自動車の自動運転などに代表される分野での投資が継続している。液晶も有機ELとしてスマホ、さらにはテレビなどに拡大しようとしており、投資拡大につながっている。

ロボットも、海外では人件費の高騰や高精度なものづくり需要に対応して市場が大きく拡大しており、国内でも人手不足や安定した品質の確保、さらには介護やサービス用など、製造業、非製造業の両面から採用が増えている。

日本ロボット工業会(JARA)では16年度の生産を過去最高の7000億円、17年度は7500億円まで拡大する見通しを立てている。7000億円は過去に幾度かチャレンジした金額であるが、今回は取り巻く環境は実現を後押しするのに十分であることから、達成は確実であるといえそうだ。

停滞していた工作機械も、16年12月に前年同月比プラスに転じた。15年、16年の2年連続減少となっていたが、17年は1兆3500億円(8%増)と3年ぶりに前年度比プラスを見込んでいる。

中国市場が回復基調に入ってきていることに加え、スマホ、自動車関連で引き続き旺盛な設備投資が計画されており、急速な回復が予想されている。

PV(太陽光発電)システム向けは停滞しているが、家庭用PV、風力、バイオ、水力などの自然エネルギー需要は継続することが見込まれている。

これに関連して電池周辺需要の拡大に期待が集まっている。電力の蓄電やEV(電気自動車)の普及に伴う蓄電池市場は今後大きく花開くことが有力視されており、自然エネルギーの拡大と合わせて、端子台市場にとっても大きな追い風が期待できる。

こうした自然エネルギーや蓄電池は、商用電気として使用するには、DC(直流)とAC(交流)を変換することが必要で、DC600Vなどといった高圧への対応が求められる。DCに対応した端子台は、高圧への耐性が必要となってくるが、DC1000Ⅴ、DC1500Vに対応する端子台も開発されており、新たな需要を生み出している。

停止していた原子力発電の再稼働も始まりつつある。原発再稼働による端子台などへの波及効果を期待する声も強く、今後、電力関連の投資拡大が端子台市場の底上げにつながるものとみられる。

「スプリング式」普及 容易な配線工数を削減 グローバル化に対応

最近の端子台は小型・省スペース化に加え、配線工数の削減とDCの高耐圧化などを大きなポイントに開発が進んでいる。

端子台はIoT化における機器や設備などを「つなぐ」という大きな役割を果たしている。有線であれ、無線であれインターフェイス部分は必ず必要であり、端子台はこのインターフェイスを裏から支えている。

端子台の接続方法は、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)、圧接式などがある。

日本はねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。

しかし、ねじ式は配線作業の手間がスプリング式に比べ多くかかるのが難点となっている。ねじの緩みを直す増し締め作業も必要になることが多い。このため、ねじとばねを組み合わせて、仮止め作業が容易にできるようにしたり、ねじの脱落を防ぐ構造にするなど工夫が加えられている。

スプリング式は配線作業の容易さと、作業スピードの速さでねじ式に比べ格段に優れている。日本配電制御システム工業会(JSIA)は、ねじ式とスプリング式の作業性などについて実機によって検証を行ったが、スプリング式はねじ式に比べ最大で工数が半減する効果が生まれるという結果も出ている。

日本で定着している丸圧着端子台(丸端)の文化に一石を投じたのが、1台の端子台で丸/Y形端子とスプリング端子を共用できる「ハイブリッド端子台」である。

端子台の片方が丸/Y形端子台、もう片方がスプリング式となっており、配電盤に設置する内線はスプリング式、外線は現場の電気工事によく使用して慣れている丸/Y形端子台として使えるため、それぞれにとって都合がよいといえる。

端子台の材質も、日本の端子台同様になじみのあるポリカーボネートを採用して、耐衝撃性、耐久性、安定性を確保している。

最近は市場のグローバル化もあり、スプリング式に代表される欧州式端子台の採用・使用分野が自動車、工作機械、半導体製造装置、食品機械、船舶、信号、電力など、広がってきている。

従来、国内向けと輸出向けで端子台を使い分けることが多かったが、国際標準化の流れもあり欧州式端子台に一本化する傾向が強まっている。生産コストの削減や在庫管理上からも有効といえる。

ただ、国内市場では丸/Y形端子は全体の約70%で使用されているといわれ、依然大きな影響力を有している。前述の「ハイブリッド端子台」もそうした声に応える形で開発されたもので、この文化を変えられるかが注目される。

プリント基板用の端子台でもスプリング式を使ったタイプが増えている。ソケットと組み合わせ使用することで、プリント基板配線における機械的強度を確保するとともに、ソケットのプリント基板への実装と配線作業を分離できる効果も生まれる。

欧州式端子台は、これまで小電流タイプの通信用途での採用が多かったが、最近は1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径185平方ミリという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。端子幅は32ミリ前後と薄く抑えている。

こうした用途は従来、ねじの緩みを心配することもあり、ねじ式の使用がほとんどだった。

特に大電流の接続が多い電力会社は丸圧着端子台(丸端)の採用が多かったが、信頼性の実証に加え、トータルコスト面も優位性が高いとしてスプリング式の採用を始めており、市場に大きな変化が出始めている。

スプリング式端子台の利点をさらに向上させる配線用工具も改良が進み、格段に使いやすくなっている。作業者の疲労を低減する人間工学的な設計や、電動式工具なども登場しており、作業効率の向上に貢献している。

端子台のさらなる軽量化とコスト低減を図るため、端子部にアルミ合金を採用したアルミ端子台も注目されている。端子部を従来の銅合金からアルミ合金にすることで、端子部の重量を10%から30%軽量化できる。

コストも、アルミの原材料価格は銅よりも安く安定している。性能面でも熱伝導性と放熱性に優れ、腐食しにくいアルミ電線の配線にも適しており、さまざまな産業分野で使用できる。

端子台は今後、DC市場の拡大、IoT化に伴う情報機器の増加などが大きな追い風になりそうだ。同時に、負荷価値向上に向けた配線作業や材質、形状などの改良もさらに進むことが予想される。

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