不連続戦線に異状なし(53) 黒川想介

■市場拡大で企画に比重 営業との共同責任体制肝要

マーケットや顧客に接触し、競合各社と競争に明け暮れるのは第一線で活動する営業である。産業界の草創期や成長期の頃に部品やコンポ商品を扱う営業は各種の販売作戦を度々実施した。

市場の規模は小さくて製造業も外から見てわかりやすかった。リピート売り上げも多くなかったから前に進むしかなかった。貯蔵タンクが見えた工場に「サイロ作戦」と称してレベル機器中心に売り込んだ。

また、「地区ローラ作戦」と称して狙った地区にある工場に総動員で市場調査を兼ねながら売り込みをかけた。情報化社会にある現在ではそんな事ネットを見ればわかると揶揄することだろう。しかしこれはこれで営業の忍耐力や表現力や考える力を養った。昨今では営業が行う〇〇作戦は極端に少なくなっている。代わって業界戦略、特定商品戦略といった戦略型が多い。

戦略や作戦は本来違うものだが業界的には同じように売り上げ拡大の手段として使っている。強いて違いを言えば営業が使う売り上げ拡大策が作戦であり、営業企画が使う売り上げ拡大策が戦略と言える。

昨今の営業戦略で多いのはキャンペーンと銘を打ってやる売り上げ拡大策である。企画参謀部門が主導権をもって企画し営業ライン部門はそれに則して動くようである。産業界の草創期や成長期に各営業部門がそれぞれでやっていた作戦は現代では少なくなり企画部が主導するキャンペーンが多くなった。理由は産業業界の市場規模に起因している。

市場規模が小さかった時は営業が日頃の状況を感じ取って都度の作戦を実行した。おもしろい商品が出た時は顧客への総当たりで反応をみる作戦、マンネリを感じたら日を決めて一斉に新規開拓作戦、新商品が出たら欲しがってた客のリストをつくり全員で売り込みをかける作戦などである。まだ市場の規模が小さかったから顧客や市場を拡大しようという気持ちの表れが作戦という形をとったのだ。

市場規模が大きくなって成熟化してくると営業一人の売上額は大きくなった。市場規模の拡大化によって顧客への対応が繁雑になった。そのため営業は毎日のルーティンワークで一杯一杯になった。その上、月々の目標売り上げに追われて、市場の状況を見極める余裕がなくなり、視野が広がらなくなった。それをカバーして企画参謀が顧客や市場を見ようとしているのが現状のようだ。だから商品戦略的キャンペーンや売り上げ不振打開キャンペーンなどのように企画参謀が企画し、営業ラインが動くような構図になっているのだ。

古来からの戦いでアレクサンダ大王からナポレオン出現までは司令官が作戦を練り、実行した。兵力が膨大になった18世紀後半になると、大軍を未知の広大な戦場へ率いて行くには長期に亘ってスタッフワークが必要となっていた。そのため専門的技能を培ったスタッフという集団が生まれた。そして専門性の高い参謀と司令官の共同責任で戦いは遂行された。

現代の営業戦略は市場規模の拡大と共に企画参謀の力は強くなった。その上情報化社会では複雑な情報が多数あり、それを分析する能力に優る企画は主導権を発揮する立場となっている。企画参謀と司令官の立場が戦略的な面では逆転していることになる。その結果営業各員は企画から出てくる売り上げ拡大策を待って動いているのが一般的となった。

企画は戦略、営業は白兵戦という図式になるが、これでは著しく変化する市場の状況や顧客が内に秘めて動く状況の把握に後れを取ることになる。ここはやっぱり専門性の高い企画と市場や顧客と接触を密にしている営業の共同責任体制が必要でありそれには互いのすり合わせを密にすべきである。

ANSYS

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