サーボモータ特集 自動車・半導体が市場牽引 使いやすさを重視

■オートチューニング・制振制御・セーフティ制御
サーボモータの市場は、スマホ生産の停滞や、工作機械の中国をはじめとした海外市場の需要伸び悩みなどから横ばい状態が続いている。しかし、ロボット市場の堅調な拡大、設備投資減税などに伴う設備更新などで、国内市場は堅調を維持している。センサレスやアンプ一体型サーボなども開発が進んでおり、一時危機感が高かったレアアース問題も解消の方向に向かっている。本年度再び上昇基調が期待されている。

■好調なロボット産業も追い風
日本電機工業会(JEMA)がまとめている生産統計によると、サーボモータの2015年度(15年4月~16年3月)の生産額は961億円、前年度比4.0%減と1000億円台を割り込んだ。サーボモータは景気の動向に敏感に反応する傾向が強く、過去にもITバブル、リーマン・ショックでは大きく激変した。15年度は過去のような落ち込みではなかったものの、ここ数年堅調に伸長してきた工作機械が、中国など海外市場が伸び悩んだことの影響を受け、スマホ市場の停滞も影響した。この中にあって、自動車関連の需要は北米を中心に堅調を維持している。また、半導体・液晶関連では内需が好調を維持して、市場を牽引している。JEMAでは16年度の生産を同1.4%増の975億円の見通しと、慎重に見ている。

自動車関連は、生産設備需要に加え、自動車の電子化に伴う車載部品の増加、とりわけライトやメーターなどのLED化、カーナビゲーションシステム、ドライブレコーダなどが自動車生産台数の増加に比例して、関連需要を牽引し、市場拡大につながっている。

食品をはじめとした、3品業界は、コンビニエンスストア向けなどのパッケージのニーズが増えており、自動化やトレーサビリティなどに絡んで伸びている。

日本半導体製造装置協会(SEAJ)の調べによると、15年度の半導体・液晶製造装置の出荷額は1兆5786億円(前年度比7.4%増)で、16年度は1兆7722億円(同5.5%増)と堅調な見通しとなっている。また、15年の世界の半導体製造装置販売額は365億㌦で、14年比3%減少した。

日本工作機械工業会(JMTBA)のまとめた15年度の工作機械の受注額(速報)は1兆3988億円(前年度比11.4%減)と2桁の減少となったが、それでも過去4番目と高水準で、中でも内需は5794億円(10.0%増)と前年度比2桁増と好調を維持している。ロボットの生産も年々拡大基調で、16年度は7000億円台乗せが見込まれている。

このところの為替の円安基調は、輸出の比率が高い日本にとって追い風と言えるが、地産地消の狙いもあり、かなりのサーボモータメーカーが海外生産にシフトしており、その影響はいい意味でも悪い意味でも少なくなっている。ただ一時は海外生産のサーボモータを輸入する動きも見られたが、いまは国内生産を強化する動きに変わりつつあると言えそうだ。

為替の動向よりはむしろ、新興国での人件費上昇と人手不足対策から、人から機械に置き換える自動化投資を強める方向にある。国内への生産回帰の動きも見られるなかで、ロボットや自動機などを活用した生産が加速しそうだ。

ロボットの導入は、人手不足や人件費の上昇対策だけでなく、安定した品質の確保、微細作業の自動化などの効果につながる。

サーボモータはこのほか、駅ホームの安全ドア開閉や自動改札機、乗り物シミュレータなどのアミューズメント関連、回転ずしのベルトコンベヤ制御などでも採用が進み、新たな市場を形成している。

サーボモータ各社は、使いやすさに重点を置いた製品開発を進めている。複雑な制御調整が簡単にできるオートチューニング機能、機械の振動を抑えながら短時間で位置決めを行う制振制御技術、作業の安全を確保するセーフティ制御技術、さらに効率的な生産を進めるネットワーク化対応などが開発のポイントとなっている。

オートチューニングでは、ワンタッチで機械の共振制御などにも対応できるよう、各社が独自の機能を搭載している。制振制御技術ではアーム先端の振動に加え、装置本体の残留振動も抑制できる低周波抑制アルゴリズムを搭載し、さらなる高精度調整を可能にしている。

高速化では、速度周波数応答2.5kHz、22ビットロータリーエンコーダの標準搭載で、400万パルス/revを超える高分解能製品もラインアップされ、位置決め整定時間を大幅に短縮し、高精度な位置決めや微細加工を可能にしている。整定時間を短縮することは、業務の効率化につながり、機械・システムの生産性が向上する。

また、サーボモータの制御に関しては、指令応答特性を高めるフィードフォワード機能(FF機能)と、外乱抑制特性を高めるフィードバック制御(FB制御)があるが、FF制御とFB制御を完全に分離して制御を行うことができる、2自由度制御方式を搭載したサーボモータも使われている。

両制御を完全に分離することで、より高速・高精度なモータ制御が実現する。例えば電子部品実装機では、部品搭載ヘッドの振動を抑えた高速実装タクトの実現や、金属加工機では、摩擦や粘性の影響を少なくし、切断面を滑らかにするといった高精度な加工が実現できる。

さらに、1台のアンプで最大3台(3軸)のサーボモータができる機種も評価が高まっている。

■故障予知しトラブル未然防止 トータルサポートで差別化加速
最近注目されているのは、アンプの診断機能を使ったサーボモータの予知診断機能である。サーボモータの稼働時間などを計測して、故障などを予知することで稼働停止などに伴うトラブルを未然に防止することにつながる。

ネットワーク対応では、EtherNet技術をベースに、通信速度150Mbps全2重の高速独自ネットワークを駆使し、リアルタイム通信性能や、自由度の拡大が図られている。

セーフティ化では、サーボモータに関連する規格として、ISO13849-1、IEC61508シリーズ、IEC62061、IEC60204-1、IEC61800-5-2などがある。このうちIEC60204-1は、機械の電気装置に関する要求事項を定めた規格で、停止の制御機能について定義されている。

可変速ドライブシステムの機能安全規格であるIEC61800-5-2への対応も行われている。安全規格への対応は特に、自動車製造関連の用途で求められることが多く、サーボモータ各社のほとんどが対応を行っている。

このほか、厳しい環境下でも使用できるよう保護構造IP65などを標準採用したタイプや、IP67対応品も増えている。

低剛性への対応もポイントで、特に高速応答の必要なマシンボンダーや、低剛性メカニックを低振動で高速駆動したい取り出しロボット、多関節ロボットなどで重要視されている。

小型・軽量化の例では、サーボドライブが必要とするトルクを直接供給するようにすれば、機構が単純になってコンパクト化が可能となる。故障の発生や外的トラブルの要因も減らせ、低コストや省資源というメリットにもつながる。

機器の小型化では、リニアサーボモータの動向も注目されている。回転型サーボモータとボールねじとの組み合わせに比べ、推力が大きく、短ストローク移動で加減速の繰り返しなどに強みを発揮できる。特に、小型で速い動きが求められている機械などに最適である。

「オールインワン・サーボモータ」として、ドライバ、エンコーダ、モーションコントローラ、シーケンサ、ネットワークまでを1台に収納した製品は、配線作業が不要で、省スペース化とともにトータルコストダウンが図れる。

搬送機械、繊維機械などでは、1台のマシンに使用するモータ数が多く、特にサーボアンプの小型化や各軸のゲインチューニング工数の短縮が求められる。このため、回路基板をワンボード化するなど、高密度実装と最適放熱設計での超小型サーボアンプもある。

今後注目されるのが、センサレスサーボモータの動向だ。インダクションモータの付加価値を上げたともいえ、エンコーダなしで電圧および電流からモータの速度と位置を検出して、高精度な速度制御や簡易な位置決め制御が実現できる。しかも負荷変動(0~100%)に関係なく安定した速度で運転や位置決めを実現でき、位置決め精度も高い。エンコーダを使用しないため、小型化が可能で機械の省スペース化にもつながる。また、部品点数が少なくなることで、トラブルも少なくなり、メンテナンス性も良くなる。

一時、大きく騒がれたレアアース問題は、ここにきて状況が大きく変化している。レアアースレスの製品が開発されてきたこともあり、この問題はほぼ解決されつつある。

機能的には、ほぼ完成の域に達しつつあるサーボモータであるが、今後はサービスやサポートによる差別化が進むことは予想される。カメラを駆使した遠隔操作や、故障予知などトラブルで停止してしまう前に対応する体制などにポイントが当たって来そうだ。

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