不連続戦線に異状なし 黒川想介 (22)

ふと気が付いてみると、いつの間にか変わっていたということは誰もが経験することである。部品やコンポ商品を扱う業界では、売り上げを管理している上位の顧客層の動きを毎月見ているであろう。それでもふと気付くと、少し前とはだいぶ変わっている。成長期にそれほど大きく変わらなかった売り上げのランクは近年、上下の入れ替えが目立つ。顧客単位では売り上げというデータがあるために変化には気づきやすいが、いわれなければ変わったことに気付かないことがある。

部品やコンポを扱う営業に「この十数年の間に検査や簡易加工治具を専門とする小規模の企業が増えてないか」と尋ねてみると、初めて気付いたかのように、いつの間にか多くなっていることに気付く。地区によっては十数年前は5社ぐらいだったのが40社くらいに増加していたというケースもある。部品やコンポ商品を扱う業界では、同じような事業形態である盤メーカーの動きには敏感であるが、検査や簡易加工治具メーカーにはあまり敏感ではない。

かつて1970年代中頃にローコストオートメーション、略してL・C・Aという言葉が流行した。日本列島改造論の波に乗って地方に新しい工場が次々とできた。それらの工場には自動化された機械装置が装備されていた。新しい自動制御の設備に触発されて、従来からあった機械化設備にも簡単な自動化を試みるようになった。例えば検出スイッチを1カ所加えて装置の制御をする個所や、時間や計数あるいは温度などを制御できる個所を探して簡単な治具をつくり自動化を試みるようなことであった。

このような自動化の仕事をL・C・Aといって機械や電気の担当部門の人が片手間で行っていた。人手不足や人材費高がいわれるようになると、地方に展開されていた中小の企業でも省力化のために積極的に投資を行った。自動制御設備の本格的な導入が始まり、片手間にL・C・Aを行っていた機械・電気の人たちは新しくできた製造技術部門に移った。彼らは省力化と品質向上を目指し、工程の自動化、設備の自動化を次々と推進していった。その過程で各種の治具が必要となり、それらをつくる精機部門を別に持つ企業も出現してくる。

ここで作る治具はかつてのL・C・A的なものでなく、高精度・複雑機能を持つものとなり、L・C・Aという言葉は使われなくなっていく。

作った設備をコントロールする制御盤は内作する工場もあったが、外注に出す工場も増えたので制御盤メーカーは増加していった。治具の内作化と違って盤の外注が多かったのは、当時の電気担当者が受配電やモーターやボイラーなどの動力を中心に仕事をしていたことと関係がある。

80年代は設備の増設が相次ぎ、製造技術部門は隆盛を迎え、人員は増加する。90年代に入ると既設備の自動化すべきところはだいたい終了して増設待ちの状態であった。21世紀になると増設は海外工場が多くなり、国内工場では製造技術に携わる人が減少に転じた。現在では国内工場への投資は、自動化の分野ではリニューアルや改善が主になっている。

工場内に精機部門はとうになくなり、製造技術に携わる人も大幅に減少した結果、かつて行っていた簡易設備や治具装置を製作する余裕がなくなった。そのために近くの外注先に治具装置を依頼するケースが増加してくる。現在、リニューアルや改善に必要な簡易設備、治具類はほとんど外注である。したがって、外注先として検査治具や簡易加工治具メーカーが増加している。彼らの技術力向上は、生産効率向上に欠かせない存在になってきた。
(次回は6月10日付掲載)

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