日本の製造業における生産計画の実態 (9)

現状多くの日本企業では、経験豊富な技術者の手で生産計画が立案できている。ただし特定の企業を除くと、特定の技術者に依存した体制になっており、他の技術者では代替できない状態と言える。そのため、突発的な変更が起こった時には、どの程度計画を変更すればいいのか、実態を踏まえて計画を修正することが非常に困難である。

また、現在の市場環境では、「生産装置トラブルによる歩留まり悪化」「仕入先からの納品遅延による欠品」「短納期受注による特急対応の割り込み」「仕様変更によるロス発生」など、突発的な変更が起こる要因は枚挙に暇がない。これらを根絶して計画がずれないようにすることは難しい。よって変更が発生することを予期した上で、最適な計画に再計算できることが必須となる。

ここで非常に有用なのが、ソフトウェアによるシミュレーションである。一度ロジックを積み上げておけば、パラメータが変更になったとしても、再計算が容易にできる。しかも、一度構築さえすれば技術の継承は非常に容易で、将来における生産方式の変更、生産品目の変更などにも柔軟に対応できる。

ソフトウェア導入の費用対効果については数値化が非常に難しいものの、ある程度カスタマイズしたケースでは400万円程度で導入している事例がある。仮に毎日2時間工数が削減できれば、人件費だけで4年で回収できる。仕掛品のロスが半減した、突発の残業が減り、労務コストが減ったなど、生産効率の改善以外の効果も大きい。

ところが、シミュレーションソフトは非常に高い期待が寄せられているが、残念ながら日本ではまだ導入が十分に進んでいるとは言えない。

しかし、ドイツ、アメリカを中心とした欧米先進国では、主要メーカーにおいてシミュレーションソフトの活用は当たり前のものになりつつある。今後現場にIoT(Internet
of
Things‥現場の機器をネットワークに接続し、管理すること)がさらに普及していくことで、シミュレーションソフトとの連携が深まり、より効率が上がっていくと想定される。

革新的な取り組みは業務の大きな変更がつきものであり、改革を断行するリスクを取る決断が難しい、というのが主な理由だと言える。また、トップダウンで改革を断行したとしても、現場の業務を合わせることができず、結果的に元のやり方に戻ってしまったという話もよく聞く。

次号では「シミュレーションソフト導入事例」を掲載予定。
(つづく)

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