産業用コンピュータ/コントローラ カスタム需要への対応進む 制御用から組み込み用まで幅広い分野で使用

24時間連続稼働や、振動の激しい悪環境下でも高信頼性を発揮する産業用(FA)コンピュータ/コントローラは、設備・装置の制御用途から、産業機器への組み込み用途まで幅広い分野で使用されている。また、広範なユーザーニーズに応えるため、各種仕様による製品開発が進み、カスタム需要への対応も進んでいる。CPUの性能向上により、演算能力やグラフィック機能などが大幅に充実し、低消費電力化も著しい。さらに、通信ネットワークシステムと接続することで、高効率でより高速のマシン制御が可能になっている。

産業用(FA)コンピュータ/コントローラは、HMI端末機器として設備・装置の制御から、産業機器への組み込み用途まで様々な生産現場で使用されており、HMIのみならず、同期制御や画像処理まで可能にしている。さらに、高温多湿など厳しい製造現場においても長期的に安定稼働することで、ユーザーから信頼も高く用途を拡大させている。

■吸排熱を重視した設計
一般的に産業用コンピュータは、工場の製造現場や重要な設備の制御装置など、長期間稼働を停止することができないシステムに利用されることを前提に設計されている。このため、マザーボードや電源などの重要なパーツには、より高い信頼性と耐久性に優れた部品などが使用されている。工場の製造現場や産業機器に組み込み用として使用される場合、振動、高温多湿、粉塵の発生など、過酷な使用環境下に置かれることが多く、高温に耐えられるように吸排熱を重視した設計や、粉塵対策などが施されている。

また、制御機能も、生産ラインでの一体化処理や並行処理ができることで、処理時間の短縮やスループットの向上が図られている。半導体製造関連装置やFPD(フラットパネルディスプレイ)製造関連装置分野においては、より複雑なプロセスを短時間で高速処理することが求められており、1つの装置に複数の制御コントローラとFA用コンピュータが使用されているケースが多い。

■ハイスペック製品が必要
このような場合、最先端のCPUや、メモリー2GBクラス以上のハイスペックな製品が要求される。インターフェイスについても増設コストを少しでも減らすため、豊富なシリアルやUSB、拡張スロットを持つことが要求されている。

拡張スロットは、画像処理ボードやモーションコントロールボード、各種フィールドバスボード、GP/IB通信ボード、AD変換ボードなど、用途別に応じたボードを使用する。シリアルやUSBには、各種ホストコントローラやUPS、計測装置などの周辺装置を接続することが多い。

CPUは、インテルなどの最新プロセッサを搭載することで、演算能力やグラフィック機能の性能が大幅にアップするとともに、消費電力の削減にも貢献している。インテルのBay

Trailプロセッサを搭載した最新の機種では、演算能力が従来機種の約2倍となり、より高速な演算処理が可能になっている。グラフィック機能も従来の約3倍となり、これまで難しかった高精細の動画再生も容易に実現できるようになり、使用分野の拡大が期待されている。

一方、消費電力は従来の約半分になるなど省エネ化が進み、高いバリューパフォーマンスを顧客に提案できるようになっている。

産業用コンピュータ/コントローラには様々な仕様が要求されるが、中でも最重視されるのが信頼性で、メモリーエラーの検出・訂正などが可能なECCメモリー機能、ハードウェア内部を監視するRAS機能、ハードディスクを切り離すホットスワップ対応ミラーリングディスク機能などがほとんどの製品に搭載されている。

最近はコピー防止機能も重視されている。特に受託開発の分野では、技術が企業外に流出することを防ぐために、ハードとソフト両面でコピー防止を行うケースが増えている。

■ダウンタイム削減がテーマ
24時間連続的に稼働する厳しい現場では、「いかにダウンタイムを削減できるか」という点も大きな開発テーマになっている。こうした状況を背景に、最近ではWindowsだけでは難しいリアルタイムな制御を実現するため、リアルタイムOSを併用することが増えている。

PLCでは実現できない処理の領域、例えばプロセス処理用の学術計算や、高級言語によるプログラミングなどを実現するため、制御部分はリアルタイムOSで処理、制御以外の部分はWindowsOSで処理を行うなど、1台のPCで制御から処理までを行っている。

■数年前まで、Windows
OSとリアルタイムOSを同時に走らせるということは難しかったが、近年はコンピュータの高性能化により、簡単に実現できる。特に最新のプロセッサとリアルタイムOSを有機的に連携することで、リアルタイムによる処理性能も大きく向上、42μ秒で2万ステップの高速処理が可能になっている。

■HMIから画像処理まで対応
さらに、複数台のPCや周辺装置、それらを連携する通信部分を、コンパクトに集約することが進み、1台で操作から制御までを可能にし、高効率・高速のマシン制御が行えるようになった。こうしたシステムは、HMIから同期制御、画像処理まで対応でき、装置の小型化や処理能力の向上、保守部品・運用コストの低減など、様々なメリットがある。

自動認識の分野でも、産業用コンピュータ1台で画像処理からモーションの実行、HMI処理まで可能で、Windowsを介入することなく、リアルタイムOS上での高速画像処理が可能になっている。1万分の1秒というリアルタイム化の実現で、タクト時間が要求されるシビアな用途にも対応する。

ユーザーのニーズに応じた拡張やカスタマイズも進んでおり、プログラムレスによる画像処理アルゴリズム構築が可能になっている。例えば、大量のデータがリアルタイムで流せる1GビットのEthernetGigEカメラと併用することで、欠陥検出や位置決め、測長、文字検査、簡単な分類などの用途に採用されている。

■ワンボックス化の動き
北米や欧州でも、複数のPCや周辺装置を1台のPCに集約するワンボックス化の動きが進んでおり、コンピュータから各種フィールドバスボードを経由し、I/Oを直接制御するというケースが主流になっている。

日本を含むアジア市場では、計装にPLCを利用することが多い。特にI/Oまわりの制御や接点の設定などはPLCで処理することが多い。こうした動きを受け、国内でも超高速フィールドネットワークなどに接続することで、高効率でより高速なマシン制御を行う動きが進んでいる。例えば、産業用ネットワークのEtherCATは、Ethernetをベースにして、高効率で超高速通信を実現し、リアルタイムでの制御を可能にしている。

HMI端末や生産ラインの情報収集端末として使用される産業用コンピュータは、コンパクトな筐体、ファンレス対応、低コスト化など、組み込みに適した仕様が進んでいる。上位サーバからの製造指示を確認し、それに基づく作業内容をPLCや温度調節計などの各種コントローラに指示し、その結果を収集する用途などに使用されている。この場合、端末で複雑なデータ処理をすることは少ない。逆に、信頼性向上への要求度は強く、寿命部品を減らすためのファンレス対応や、WindowsXPEmbeddedによるHDDトラブル回避、バッテリユニットによる瞬停対策などが進んでいる。

最近は、HMI端末としてプログラマブル表示器を使用してきたユーザーが、パネルコンピュータへ移行するケースが増えている。計装でのラダープログラム世代が少なくなり、再利用性の高いC言語などの高級言語(HLL)世代への世代交代が進んできたことが大きい。

■汎用アーキテクチャを選択
産業用コンピュータメーカー各社は、他社との差別化を図るための独自技術として、汎用アーキテクチャを選択するケースが増えている。GUI構築などについては、HMIソフトウェアなどを導入し、画面の見栄えや、PDFなどのドキュメント閲覧機能、リモートモニタ機能などを構築することで、アプリケーションとしての付加価値を高めている。

一方、ローエンドユーザーでは、パネルコンピュータよりプログラマブル表示器などを使用するケースが多く、専用のプログラマブル表示器と汎用のパネルコンピュータとの間で、HMIアプリケーション資産をどのように流用できるかが、プログラミング上の課題となっている。

■FA分野以外へも市場拡大
現在、産業用コンピュータは、高性能化するハードウェアに対応し、マイクロ秒単位での指定など、タイマ関連の機能などが強化されており、制御の時間精度をより高めることなどが注目されている。

長期間信頼して使用できる特徴から、交通システムや放送システムなどFA分野以外でも市場が拡大している。今後は、こうしたFA分野以外の用途拡大も含め、使用環境に合わせた専用設計やスペックなどが開発されることが予想されるとともに、新しいプロセッサやアルゴリズムの開発が求められている。

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