混沌時代の販売情報力 黒川想介 “三新運動”で新需要を模索

情報の入手は早ければ早いほど価値があるもの。現在のような競争の激しい時代は先を争って、販売員は受注を得ようとする。客先はできるだけ安く購入したい。同じ客先に数社の販売員が同じ商品を見積もるケースが多々発生し競争になる。供給メーカーはどのルートで客先に供給するか決定しなければならなくなる。成熟時代では、このようなことは日常茶飯事に起こるので供給メーカーはいくつかの裁定基準をつくることになる。販売地域、客先のテリトリー制や情報を早く入手したルートで商品を流すという情報優先制を取っている供給メーカーが多い。

前者のテリトリー制は黄金時代の半導体業界のように顧客への安定供給を責務としているため、販売員同士のムチャな競争の防止を意図に、シェアを確保している供給メーカーの多くが採用している。後者の情報優先制は、情報の入手が早いほど価値があるという原則に則っているので、販売員同士の競争を奨励して売り上げ拡大を図ろうとする新進の供給メーカーに多い。

1960年にルイス転換点を超えた日本は高度成長期に入り、労働集約型生産から資本・技術集約型生産に転換していった。その頃から自動制御関連のメーカー間や商社間の競合が目立つようになった。それまでも競合はあったが、それほど多くはなかったために商品の納入ルートは個人まかせだった。競合が目立ってくると個人まかせは紛糾の原因になったから、暗黙のうちに情報優先という裁定基準がつくられた。成長期では社会のニーズが需要を増やし、製造現場からの要請も数多くの需要を増やした。電気部品・制御機器メーカーも次々と新商品を出した。

そのため、現代のように客先が提供する案件情報をいち早く入手すれば良しとする情報優先制とは一味違って、前回に述べた営業の三新運動を基とする情報優先制だったのである。日本のGDPはこの20年間にそれほど伸びていない。日本を取り巻く環境は厳しい。新しい需要は成長期のように増えない上に、名だたる企業の不振で雇用の受け皿が喪失しているからなんとなく閉塞感が漂っている。そんな中で生き残りを賭けた競争が一段と激しさを増している。電気部品・制御機器の営業もまた同様であって、大きくならない国内市場を制するために、商品をより機能化し低コスト、短納期の力の勝負になっている。それでも埒(らち)が明かない状況を打破すべく、海外の需要に期待と活路を求めようとする。それらの需要はしょせん、国内需要の延長線であるから、新興国に国力があっという間についてくれば減ってしまう需要である。現状の外需にいつまでも期待するのは国力をつけていく王道ではない。

今や日本は成熟社会に到達した先進国である。世界が認める文化的な生活をする上で必要な物はそろっている。その上、高齢化の先進一等国である。そのような日本にふさわしい日本発の新しい需要をつくって内需を盛り上げていくのが、これからの日本に生き甲斐をもたらす王道である。

政府は成長戦略で、医療分野で約500万人の雇用をつくる計画を立てているが、具体的には見えてこないし、とりあえずやるような泥縄式の感は否めない。政府はもっと先を見ている科学技術や基礎技術に焦点を当て、資金を投入し、新しい需要の根幹をつくるべきだ。マクロ的な需要創造は別としても、電気部品・制御機器の営業では高齢国日本にふさわしい新需要を見つけだすことは急務のはずだ。営業はより機能化した商品を現状の需要に売るだけでなく、かつてやった三新運動を参考にして新しい需要の模索を試みることを目的とした“新三新運動"を推進すべきである。
(次回は2月13日付掲載)

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