主要製造業ものづくり白書 工作機械編 若い人材の確保と育成が重要

【現状】

工作機械は金属などの材料から切削、研削などによって不要な部分を取り除き、必要な形状に作り上げる機械である。金属製部品や金型の多くが工作機械で加工されており、機械を作るために必要な機械であることから、工作機械は「マザーマシン」とも呼ばれており、工作機械産業は我が国製造業の基盤となる産業となっている。

我が国の工作機械の生産額は1982年から2008年まで27年間連続世界第1位となっていたが、2009年は2008年後半からの景気減速の影響を大きく受け、中国、ドイツに続く第3位にとどまった。

その後、中国を中心とした新興国の旺盛な設備投資に支えられ2010年はドイツを抜き第2位に回復した。震災による影響は、一部企業の被災や、半導体関連部品の部品調達難などにより、一時的に生産に影響が生じたものの、震災影響は軽微であった。
【我が国工作機械産業の
強みと弱み】

(1)強み

我が国の工作機械産業は、NC旋盤、マシニングセンターに代表されるNC工作機械の高級・中級機分野に競争力を有し、保守・補修などのアフターサービス体制が充実していることから、国内外のユーザーからの信頼も高い。また、優れた技術力を基盤とした高い開発力を有しており、自動車産業やIT産業に加え、医療や航空機など新興市場のユーザー業界とも緊密に連携しながら、新しい技術開発に取り組んでいる。
(2)弱み

海外市場においては、低級・中級機分野に競争力を有する中国、韓国、台湾メーカーの躍進がめざましく、価格競争力を背景として、アジア市場を中心にシェアを拡大している。また、欧州メーカーのアジア市場への参入も進められていることにより、海外メーカーとの競争は激しさを増しており、我が国工作機械メーカーはより一層の競争力強化を求められる状況となっている。

一方、国内の受注規模を見ると、これまで年間で7000億円程度の国内市場が2009年は1500億円程度に縮小した。国内には、大小100社以上の企業が存在しており、市場をめぐり競争が激しく、各社が投じた経営資源の有効活用が必ずしも適切とは言い難い状況にあり、今後の課題と言える。
【世界市場の展望】

2008年後半の金融危機の影響により、2009年に入っても自動車産業をはじめ、全ての業種で受注環境が停滞し僅かな回復にとどまったことから、国内向け工作機械受注額は1596億円(対前年比71・8%減)となった。また世界市場は、国内同様に悪化したことにより、欧米で大きく減少した。中国をはじめとするアジア市場については、前半は低調に推移したものの、夏以降は電子機器、小型自動車、エネルギー・鉄道といったインフラ関係の需要があり、ピーク時の水準に回復するまでに至った。しかし、全体としては、欧米の不調が大きく足を引っ張り、海外向け受注額は2522億円(対前年比65・7%減)となった。2010年については、国内では、自動車を中心に前年比約2倍の3075億円まで回復したが、2009年の落ち込みが大きく、本格的な回復とは言い難い状況にある。また海外では、中国をはじめとするアジアを中心に回復傾向を示し、6711億円と前年比約2・7倍まで増加した。
【我が国工作機械

産業の展望と課題】
(1)今後の競争力強化に向けた対応

国内製造業の海外展開が進展する中、多様化するユーザーニーズ、変革スピードの加速化に対応する開発力の保持が事業発展の鍵となっている。今後ますます要求が高まる超精密微細加工、セラミックスや複合材料などの新材料加工、生産準備段階まで含めたトータルリードタイムの大幅削減に向けた多軸・複合工作機械の開発などの技術開発を進める必要がある。また、団塊の世代の大量退職により優れた技術を持つ技術者や技能者が退職していく中、それらの技術を受け継ぐ人材が不足している。若い人材の確保とともに、技術や技能の伝承を効率よく行う体制づくりなど人材育成が重要となっている。
(2)グローバル展開

我が国工作機械産業の外需比率をみると、受注額で過去最高水準を示していた1990年には26・4%と3割にも満たない状況にあったが、その後経済のグローバル化と新興市場の急速な発展により旺盛な設備投資が見られ、2009年、2010年と外需比率が約7割まで上昇した。こうした外需を世界の主な市場ごとに見ると、1998年には2割弱であったアジア市場は成長を続け、2009年のアジア向け受注は外需全体の54・7%、2010年は60・9%を占めるまでに至り、北米、欧州といった需要地を抜き最も大きな市場になっており、今後もこの傾向は続くものと考えられる。

また、BRICsに代表される新たな市場も中長期的に拡大傾向にあり、今後も低級・中級機を中心とした継続的な需要の成長が見込まれる。我が国の自動車、家電産業など工作機械のユーザーも中国やアセアンを中心に生産拠点を構築しており、工作機械メーカーは現地生産の充実やサービスセンターや販売拠点などの整備に努め、アジアでの市場拡大を進めている。

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