- コラム・論説
- 2014年1月29日
令和の販売員心得 黒川想介 (151)0を1にする開拓への挑戦 現場で学んだ経験が生きる
時は待ってくれない。令和の新しい時代が始まったと言っていたが、もう8年目に入る。
社会の各所ではデジタル化がすごい勢いで進展している。アナログ色の強い営業関係でも、SFA (営業支援)、CRM(顧客管理)、MA(マーケティング、オートメーション)のようなデータ活用営業が幅をきかせるようになっている。FA販売店営業では、営業効率を上げるためのデジタル装備だけでなく、販売戦術の立案にデータの活用がますます重要な位置を占めている。今後、販売員の営業活動は、デジタル化に即した営業効率の重視をたどるだろう。
販売員にとって営業効率は大事なことであり、無駄を省かなくてはならない事は他の業種と同様である。しかし一方では、無駄のような手間を時間をかけなければ、効果が現れないのが営業である。むしろ時と場合によっては、効率を半ば無視してでも効果を大事にしなければならないことがある。それは「新規客の開拓」である。
新規客開拓を効率化しようとすればMAに頼ることになる。その場合には、従来通りのマーケット需要に関係する開拓になるから販売員のやる力仕事をデジタル化することになる。MAの手順に基づいて商品を使ってくれそうな新客を見つけて販売員に橋渡しをするのだから効率的だ。
しかしFA販売店営業の令和新時代の新規開拓とは「新しいマーケット需要の開拓へのチャレンジ」を意味する。このチャレンジは10を20や30にする力仕事ではなく、0を1にすることだ。だから過去から積み上げてきたデジタル化データは存在しない。
しかし、だからと言ってFA販売員が培ってきた経験を無にすることではない。彼らの経験をどのように使うかの問題である。電気制御知識を身に付けて、顧客の相談事に対応する営業力に焦点を当てれば、平成期来の営業経験を強化することになる。この営業は10を20や30にする力仕事の部類である。FA商品をより深く知って、上手に顧客対応すれば新規客が広がるかもしれないが、力仕事の割にはあまり期待ができない。
0を1にすると言う事は新しいことを産むということだ。その場合は、販売員が「顧客や顧客の現場から何を学んだか」が大事なことであり、学んだ経験をキャリアとして使えるかどうかにかかってくる。その経験とは、営業活動を通して知った製造現場の有り様や、依頼されて解決してきた様々な自動化に関するようなことである。
その様々な経験をキャリアとして使いこなし、新規マーケット客に興味を感じてもらうようにアプローチできるかが大事である。それが。0を1にする時のスタートになるのだ。
コンポーネンツや部品である制御商品には興味がない新規マーケット客であっても、自分たちの工場現場でのことや同じ業界内でやっていることには、いろいろな意味で興味はある。そのような実際の情報を運んでくれる販売員を無碍に追い返すことは無い。だから新規マーケット開拓のスタートになるのである。
このようなアプローチに相手が本心で興味を感じれば、販売員に鋭い質問を投げてくる。販売員が日ごろの営業活動を通じて顧客からいろいろ学び、顧客の業界や顧客の製造現場に明るくなっているはずであるから、迫力ある会話になる。互いの話の応酬が続けば、距離感はぐっと縮まる。相手方から他人事のような感想を返されてそのまま会話を続けても、相手との距離感は縮まらないだろう。しかし、業界や現場のことを学ぼうと努力し、経験を積んだ販売員は、それが興味本位であっても、なぜ興味を持ったのかと探りながら、相手の創造力やヒントになるように紐付けをして話題を続けることができる。新人から効率的な開拓に慣れてしまうと、営業経験の底が浅いままのため、0から1にするチャレンジは難しい。