藤本教授のものづくり考 の検索結果

藤本教授のものづくり考(4)

「日本のものづくり」現状・課題 半世紀におよんだ冷戦による経済分断の間に蓄積された圧倒的な国際賃金差が、日本の貿易財現場を直撃したのが、1990年代~2000年代のポスト冷戦期です。しかし、そうした最悪の時代が終わりつつあります。すでに始まっている新興国の賃金高騰によって日本との賃金差が縮小していくにつれ、ハンディキャップが緩み、国内の優良なものづくり現場が、能力構築で地道な生産性向上や品質向上によってハンディキャップを克服して「表の競争力」でも新興国に迫り、国内に存続していく可能性が高まりつつあるのが今であり、これからの20年と言えましょう。したがって、新興国の賃金高騰が始まったとはいえいま…


藤本教授のものづくり考(3)

4層の競争力 日本のものづくりが世界でもてはやされたり、あるいはその競争力はすでに失われたなどといった議論がたびたび行われてきました。そして今もまた、失われたものづくり力といった方向に傾きがちのようです。しかし、そうした議論には、日本の経済、企業、産業、そして現場のパフォーマンスについて、概念の混同が見られ、それゆえに議論も混乱しています。まずはこれらのパフォーマンスについて、きっちりと分けて考える必要があります。 まず第一にマクロの「日本経済」で、たしかにここでは「失われた20年+α」で、GDPはほとんど伸びておらず、昨年も不調でした。ただし、日本の人口が減少局面にある現在では、マクロ成長を…


藤本教授のものづくり考(2)

「表」と「裏」の競争力 物的生産性、製造品質、生産リードタイム、歩留まりといった現場力(裏の競争力)では、自動車、造船、家電、鉄鋼などなど多くの貿易財の業種において、日本の優良現場は常に世界最高の水準にあり続けており、ジャパン・アズ・ナンバーワンと言われた1980年代も今もそれは変わりません。私は数十年にわたり自動車などの産業で、それらの指標について、ハーバードやMITと共同で測定データを収集し国際比較を行ってきましたが、対欧米であれ対新興国であれ、かつて負けたという数字を見たことがありません。 1980年代は冷戦下における先進国間(賃金水準が相似)の国際競争の時代でした。であれば、物的生産性…


藤本教授のものづくり考(1)

「良い設計の良い流れで」 私たちが言う「ものづくり」とは、テレビなどが喧伝するいわゆる「職人の匠の技」といった狭い定義によるものではありません。より日本の現場で実際に使われている用法に近いものです。すなわち、設計論、生産管理論、経済学などにもとづく広義な概念で、生産現場のみならず、開発現場や販売現場も含みます。 こうした広義のものづくりは、「良い設計の良い流れによって、顧客満足、企業利益、雇用確保の『三方良し』を実現するための企業・産業・現場活動」の全体を指します。付加価値は設計情報に宿っているので、「付加価値の良い流れ」を作るための現場主導の活動です。すなわち、「ものづくりの現場」(以下「現…