混沌時代の販売情報力 黒川想介(98)

需要の拡大に応じて供給は増える。それが経済の原則的流れである。需要には日本国内で発生する内需と、海外への貿易という形で生まれる外需がある。日本は化石や鉱物資源の少ない国である。だからエネルギー源である化石や原材料となる資源を輸入して付加価値を高め、海外へ販売することで国力をつけてきた。だから外需への期待感は誰もが持っているし、これからもその路線は大きく変わることはない。これまでオイルショックやドルショックなどの障害はあったものの、外需拡大はうまく軌道に乗っていた。 21世紀に入ろうとした頃から、それまでの世界経済活動のパワーバランスは変化し出した。ベルリンの壁崩壊から冷戦経済構造が崩れ出してグ…


分岐点(2014年1月15日)

ある機械メーカーは、バブル崩壊のときに内製化した制御機器を外販することにした。自社の機械に搭載してきただけに、かゆい所に手が届くほどの優れものである。汎用市場では後発となるので、使用者を前面に押し出した営業展開の方針で、特定市場向けに販売を始めた。 売り方は型番商売にはほど遠い。ソフトとハードをセットにして販売する方法を採り入れた。ソフト開発により、顧客の改善点によるメリットがパソコンの画面で、一目でわかるようにした。難点は顧客のデータを収集し最適な提案をするためには、時間がかかることであるが、実際に提案を受け入れた顧客からは高い評価を得て、外販に自信を強めたという。 オプションで他社の制御部…


混沌時代の販売情報力 黒川想介(97)

戦後、ドイツや日本は極度のインフレに苦しんだ。だからドイツではインフレを異常に嫌うし、日本でも経済を悪くするものとして悪視していたものだった。その後、成長を続けた日本では物価上昇は続いたが、インフレという文字がメディアに現れることはなくなった。 物価上昇はあったが、賃金上昇を伴っていたからである。その後、1990年にバブルを経験すると、日本は再びバブルによって起こったインフレを悪視し、鎮めようとして金融を引き締め、抑えすぎてデフレ経済に入った。失われた10年とか20年とか言われた時を経験して、昨今ではインフレは悪視されるものではなく、好景気をもたらすというイメージが定着している。それでも戦後や…


分岐点

秋葉原高架下のジャンク街の一画を占めるラジオストアー9店舗がシャッターを下ろした。移転先の張り紙が時代の移り変わりを象徴する。ラジオセンターやラジオストアー、ラジオ会館で部品をかき集めていた自称電気マニアには残念な気もするが、64年間続けてきたお店はもっと悔しいだろう。「トヨデン」の黒川晃豊澄電源機器社長は「当社発祥の地だけに、さびしい。が、役割は終わった」と語る。▼ 今年から来年にかけて、世の中が分岐点に差し掛かる。断言はできないが、大震災復興投資、デフレ脱却、TTP参加、消費税8%など潮の流れを変える要素がある。デフレ脱却にしても国民は20年間、デフレ漬けで過ごしてきたので、政府の目指すイ…


混沌時代の販売情報力 黒川想介 現場知ることが商談につながる

物づくり大国である日本はどこへ行ってしまったのか、などと囁かれだしてずいぶん経つ。物づくりの主流は新興国に移ったという印象があって、活気ある製造現場はいまや新興国だという風潮がある。もし販売員がそんな風潮に飲み込まれているなら、営業活動をしていても意気は上がらない。海外向けの件名をもつ顧客には力が入るが、そうでなければリニューアル的な件名を追うか、競合との勝負に力をつくす営業が主流になる。 そのような考えに立つ根底にあるのは、日本には工業化時代に培われた技術でつくられたものがあふれていて、物づくりの製造ラインの増設はあまり期待できないことが分かっているからだ。つまり工業化時代に築いてきた路線の…


分岐点

現場でヒントを得て、ちょっとした製品の改良でモノが売れ出す。ところが、意外に制御機器の機械への取り付け工事までは見ていないので、技術開発者は自己本位の開発になりがち。そこから抜け出した人は、現場を観察し工夫して売れる製品を開発する。▼ ドイツ・バルーフのGutekunst氏は、CLPA発行のレポート2013の中で「デバイスの取り付けを従来の4カ所固定から、2カ所に減らした。当初はそれほどの反応がなかったが、今は当社の大きな特徴」と語る。高度な技術革新は必ずしも必要ではなく、顧客との対話の中で出てくるささいなことがキッカケで実現できる、とも。▼ 機械に取り付けてあるセンサーを別の位置に移すとき、…


混沌時代の販売情報力 黒川想介 新規需要を追いかけ内需要拡大

日本は90年代には成熟社会に入っている。近代的、文化的生活をする上で、必要な物が一応そろっているのが成熟社会である。販売員達に「今度の賞与が予想より10万円くらい多かったら何を購入したいか、または何がしたいか」と聞いてみると、大部分の販売員は少し考えて言う「まあ、とりあえず貯金します」と。各人色々な事情はあると思うが、もし同じ質問を新興国の人にしたら、即座に欲しい物やしたいことがあるという言葉が返ってくるだろう。成長期の日本もそうであった。 このような欲求の差が、それぞれの国の勢いの差となって表れる。欲求が即座に出てこなくなった成熟国は必然的に国に勢いがなくなってしまうのだろうか、と言うとそれ…


分岐点

東京モーターショーは、新素材と先進の制御技術の披露式でもあった。安全運転支援システムや自動運転システム、災害時に1週間電気を供給する災害支援システムなど、自動車は人の運搬から地域社会へと役割が広がっている。FA業界に携わる人が見ても応用できる技術のオンパレードで楽しい。▼ モーターショー開催の前日、友人の招きで東京海洋大学が建造した世界初の急速充電対応型電池推進船「たいちょうⅠ」に乗船した。12人乗りの小型船舶であるが、リチウムイオン電池を動力源としてモーターで走行し、インバータで制御する。時速22キロメートル以上の速度で運航しても船内は普通の声で会話ができるほど静かで快適である。充電時間はわ…


分岐点

友人が交通事故を起こした。自動車を運転中、交差点で速度を落とし左折する際に、壁面に衝突したのだが、通行人がいなかったので、幸い人身事故に至らずに済んだ。事故現場で、ろれつが回らない様子から救急車が呼ばれ、病院に運ばれたが、原因は運転中に脳梗塞が発生したため。その後、本人は車の運転がトラウマになった。 近年、自動車は事故防止装置がどんどん導入され急速に進化している。ITとハードの融合化技術の成果は、無人運転の実現の直前にまできている。ハードにソフトを付加した車のエレクトロニクス技術は、車の知能を向上させるだけでなく、安全運転の領域を超え、医療機器、機械の劣化診断、介護ロボットなど色々な分野で応用…


混沌時代の販売情報力 黒川想介 顧客の全体像を把握し直す

販売員にとって、見込み客を探して飛び回っている時は疲れる上に精神的につらい時間である。しかし商談にたどりつき、打ち合わせが開始された時は疲れは吹っ飛び、うれしい時間となる。日本の産業が十分な生産力を備えるまでの成長期には、販売員にとって上記のつらい時間とうれしい時間が交錯していた。必要な物や欲しい物が一応そろっている成熟社会になっている今日、生産力は十分にあり、マクロ的に見れば過剰設備状態である。 この時代の販売員にとって、営業がつらい時間とうれしい時間がはっきり区分されていない。なぜなら、成長期には商談や新規客をはじめとして、いつも何かを追いかけてきたが、生産力が十分となり大競争時代となって…