令和の販売員心得 黒川想介 (84)

日本の製造業は中小企業と称される企業が圧倒的に多い。その製造業に物品の納入をしているのが数多くの中小販売店である。デジタル化の推進で通販会社や通販部門を持つ販売店に押されぎみであるがまだまだ健在ぶりを発揮している。その中小販売店では若手販売員の確保に苦慮している。機器部品販売店に入社する若手販売員のほとんどが転職組であるが同業からの転職ではない。サービス業、建設業、不動産、金融、製造業など様々である。その中でも他業界の営業から転職してきた若手販売員に質問してみる。「これまでやってきた営業で一番大変だったことは何か又一番重要な事は何か」と。

転職したての販売員は顧客の開拓だと返答する。同じような質問を機器部品の販売員にすると「商談テーマ情報の入手」「課題解決」あるいは「顧客のかゆい所に手が届く営業」「一番目に顧客から相談される営業」などの返答が多い。新規の客を作ることや新規客開拓と返答する販売員はほとんどいない。それでは当月に顧客側の人と何枚名刺交換したかを尋ねてみる。多い販売員でも月に3~4枚位である。新規の人へのアプローチがこの程度であればいわゆる人に慣れるまでにかなりの年月がかかる。それでも機器部品の販売員は常時注文が発生する担当客を持っているから新規の人に会って売込み活動をしなくても何とか売上の確保ができる。しかし懸命にサービス活動や売込み活動をしている割には売上拡大の傾向は見られない。中小の販売店がやってきた営業活動を幾ら強化しても結果はついて来ないことがわかれば営業の視点を変えて見ることだ。他業界から転社してきた販売員がいるなら、彼等にルーチンワークや商品知識を教えて早く戦力化するのもいいがそれよりも他業界の営業活動の実際を聞いて参考にすればいい。そうすれば他業界のほとんどは見込客を見つけてアタックしなければ売上目標は達成できないことを知るだろう。その事を業界の違いにはしない方がいい。機器部品は広い市場で使われているので至る所に需要がある。その上、使われる製品の種類や使われる個所がふえる。そう考えると一般消費者を相手にする他業界と同じように見込客は至る所に居る。だからこれまでも新規客開拓をやらなかったわけではない。

しかし今ひとつ成果が出ないため新規に向かう活動は失速してしまうのが実情である。従来からやっている営業は販売員の返答でもわかる通り、戦場で力と力をぶつけ合う戦闘力のように商品力を自由自在に操って商談に持ち込む営業力一本に重心を置いている。そのために他の営業力をあまり注視していない。少し前までは戦闘力営業を一生懸命やっていれば客は自然と少しずつ増えていたのだが、今ではその好運に頼っていては客はふえない。客がふえるか、顔ぶれが変わらなければ成長のない時代である。当初から戦闘力営業では新規客を捉えることがほぼできない事を販売員は知っている。そこで新規客を攻略するのにどのようにすればいいか聞いてみた・「何回も通う」「雑談をして関係作りをする」「信頼関係をつくっていく」等と返ってくる。しかし新規客に何回も通うには相手の承諾が要る。雑談を新規客はしてくれない。信頼関係は一、二回の訪問では好運でもない限りできない。この様な返答は営業の基本なしに、商品を覚えて売るという戦闘力営業から入っているせいだ。他人に接近して行くのに営業だからといって特別な事をやるのではない。普段他人に接近する時には友好を示すために社交辞令で相手を捉える。営業ではその対象が個人ではなく法人になるだけの事である。

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