令和の販売員心得 黒川想介 (73)

最後の近代戦争と言われたのは日露戦争である。火器は発達していたが機動力はまだ機械化されていない騎兵の時代であった。戦場では歩兵・騎兵・砲兵・工兵の兵種で構成された軍が活躍した。営業戦線を見ると平成がは始まった頃の機器部品のマーケットには近代戦の兵種と同じような営業種が出揃った。

歩兵は地域密着の営業であり、担当地域の中で売上を上げる営業。騎兵は部品を大量に購入する大口の客先や特定の業界向けの商品を担当し広い地域を飛び回り売上を上げる営業。砲兵はようやく始まったCMC(コール・メール・コール)営業で社内に居ながらにして売上を上げる営業。CMCとは見当をつけて見込客に電話をする。興味を示した客先に資料を送ってその後で再び電話でセールスをするというもので、現在のMA(マーケティングオートメーション)の先がけの手法であった。工兵はそれまでには無かった複雑でむずかしい高額な商品が登場したのにより高度な知識によるソリューション営業。

以上のような近在戦線に似た営業部隊は出揃っていたが販売店は明確な戦略をもってこれらの営業部隊を活かしていたわけではなく都合に合せて使っていた。

しかし令和という新しい時代に入ると社会的にも技術的にも色々な事が起こり、販売店は戦略的にどこへ向って進めばいいのかを真剣に検討しなければならなくなった。従来からやってきたように他社を見て対応を決めるやり方では遅きに失する時代に入っている。近代戦では戦場の戦況で主役は歩兵か騎兵か砲兵か工兵かが決まる。営業戦線でも同様にマーケットをその様な状況と見るかによって販売体制を決めることになる。歩兵型の体制を敷く販売店は地域密着を狙っていくのであるから、グローバルの視点を持ち二・三人の少人数の営業拠点をどんどん広げる。業務処理や販売員管理はデジタル化を進めていけばいい。

販売員は拠点周辺の客先開拓をして売上を上げることが仕事になるから開拓のできる販売員の育成が成功のカギとなる。騎兵型体制は機動力を発揮して広い地域を飛び回る営業であるからデジタル機器の活用に長けなければならない。それに従来の扱い商品で新しいマーケットへ斬り込んでもあまり意味がない。騎兵型営業向けの新しい商品が発売されればそれを使えるがそれが見つからなければ扱っている商品の新しい役割や用途を見つけなければならない。それを見つけるには単品では無理であるからわかりやすい汎用ソフトを付加した形で斬り込めばいい。

見込客を見つけるにのウェブセミナーやMA手法を用い、点在する見込客を捕えで、広範囲を飛び回ればいい。砲兵型の体制を敷く販売店は既に先例がある。現在の通販営業をしている販売店である。居ながらにして情報を発信し多くの見込客を誘導するデジタル時代の営業である。MAやCRM(顧客関係の管理)、それに在庫のセンスが必要である。そのためのデジタル投資や在庫関係にかかる資本力は必要だ。工兵型の体制を敷く販売店は高度な商品知識だけではなくエンジニアリング力を身につけて顧客からシステム案件の相談を受けて売上を上げる営業を養成しなければならない。

 注意点はややもするとエンジニアリング系の会社になりがちだ。しかし販売店は商社なのだ。それを忘れると中途半端な会社形態になる。いずれにしても令和のマーケットをどう見るかによってどの体制をとるにしても中途半端は成長を阻害する。そうは言ってもと言うのなら、軍が進む時安全を計るため斥候を放つが、各販売員に斥候(偵察)の能力をつけさせて令和時代を進むしかない。

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