FAセンサ市場 好調維持 人手不足、ポストコロナで省人化投資

FAセンサの市場が依然好調に拡大している。旺盛な設備投資需要がけん引しており、生産能力を超える需要により半導体を中心とした部品不足や、原材料の不足が影を落とし始めており、受注が膨らむ中で売り上げの伸びが多少鈍りつつある。世界的な景気回復に加え、新型コロナの感染拡大に伴う巣ごもり需要やテレワークの増加、無人化・省人化投資の拡大などが追い風になっている。今後、ソビエトとウクライナの戦争が経済活動にどのような影響を及ぼすかが予断を許さないものの、当面は高い受注水準が継続しそうだ。

FA以外の用途も採用が増加

日本電気制御機器工業会(NECA)の検出用スイッチの出荷額は、2020年度は1007億8100万円(19年度比99・1%)と微減となった。20年度は新型コロナの感染拡大であらゆる面の活動が停止した影響を大きく受けたが、20年秋以降は急速な回復を見せ、受注が上向き、この状況が21年度に入っても継続している。21年度は、上期(4月~9月)で595億8700万円と、前年同期比125・0%となり、国内が123・6%の336億9100万円に対し、輸出は127・0%の258億9600万円と、輸出の伸びが大きい。10月以降も月100億円超ペースで推移して、前年同期比2桁の伸長を見せている。22年1月は100億円を下回ったが、受注が高水準であることから、半導体などの部品不足によって生産が滞り、出荷できなかった可能性が高い。

NECAでは、21年度の検出用スイッチの出荷額を1080億円(20年度比7・1%増)と予測しているが、現在の出荷ベースが続くと1200億円前後と、前年度を約200億円上回る出荷になることも予想される。

FAセンサの主力用途である工作機械、半導体製造装置、ロボットなどは過去最高を超える勢いで受注が拡大しており、これに伴いFAセンサの引き合いも、製品があれば売れる状態が継続し、納期回答ができない製品も目立っている。加えて、コロナ禍での生産はますます省人や省力化を進める取り組みが行われ、FAセンサの需要を押し上げている。

また、巣ごもりなどで通信販売の利用が増加し、物流業界の投資も著しく、AGVをはじめ、仕分け作業も含めた自律的な搬送システム実現に向けた取り組みが進んでいる。AGVでは、搬送軌道をフレキシブル化した自動走行でのインテリジェントセンサの技術開発進んでいる。2Dや3Dのレーザーセンサ技術の応用しながら、搬送、追跡や障害物を検知しながら実現している。今後はAI技術を活用して搬送履歴に基づいた最適な搬送経路策定や、搬送と作業を同時処理できるような開発も志向されている。

食品・医薬品・化粧品の3品業界で、安定した需要が継続しているなかで、不良品検知を目指した「安全」「安心」へのトレーサビリティニーズがますます高くなっている。

FAセンサの中でも市場規模の大きい光電センサは、LEDや半導体レーザを光源にした非接触センサとして、主にワーク(製品・部品)の有無確認のために用いられている。検出方式は透過型、回帰反射型、拡散反射型などがあり、年々性能が向上している。特に光ファイバー式は、先端のファイバー部のラインアップが多彩で、取り付けや用途に合わせて選定がしやすくニーズが高く、数百種もラインアップをそろえているところもあり、あらゆる用途に用いられる。

光電センサ技術を発展させた透過型デジタルセンサとしては変位センサも注目されている。帯状レーザ光で測定幅10㍉を繰り返し精度1μmの精度で測定ができる。サイズも小型のため、取り付けスペースの制約も少ない。

FAセンサがロボット向けでの用途開拓が進むなかで、測域(レンジ)センサのアプリケーションも拡大している。測域センサは、周囲の障害物などの状況を把握する。レーザ光線で対象物までの距離を測定し、270度前後の視野に対して自分を中心に平面地図のような測域情報を得ることができる。誤動作が許されないことから検出スキャン時に発するパルスの計測方法に各社独自のアルゴリズム採用をして周囲環境に干渉されないようになっている。

こうした特性により、AGV(無人搬送車)や移動ロボットなどに搭載することで、安全防護を確保しながら高精度な誘導用位置測定を可能にする。光や埃、汚れなどの悪環境下でも高信頼の検出ができる。しかも、検出フィールドの設定が自在にできることで、用途ごとのパターンに応じた稼働も可能になっている。

長距離で高感度の検出が可能なため、最近では立体駐車場や、トンネル前での車両の高さ検出など、屋外や交通分野、さらに安全分野を中心に用途が拡大している。この領域では、画像データと組み合わせて精度を向上させる取り組みもなされており、活が広がっている。

進むIO-Link対応センサの開発進

近接センサは、耐環境性に優れて、高温・多湿、水中などで使用できるという、他のセンサにはない大きな特徴がある。直径が3㍉の超小型タイプや、オールメタルタイプなどラインアップも増え、金属体、非金属体の混流ラインでも使用できる。検出距離は、数㍉~数十㍉が一般的だが、最近は長距離タイプも発売されている。近接センサで、1台に2つの出力機能を内蔵した製品もある。従来の一般的な近接センサは出力が1つで、検出領域内でON/OFF出力する動作点が固定あったが、1台に2つの出力機能を内蔵することでセンサ2台分の機能を内蔵。検出領域内への検出体の移動に合わせて動作点を2点設定可能で、それぞれの出力の動作ロジック(ON/OFF)を組み合わせることで、1台で最大4エリアの検出ができる。例えば工作機械の自動工具交換では、工具の有無、取り付け位置のずれなど、正常・異常の検出を2台の近接センサで行っていたが、これを1台で対応できることになり、設置作業を効率化できる。

一般的な近接センサの検出距離は1~10㍉ぐらいと短く、センサが安定して検出できるための位置設定の調整作業に非常に手間がかかり、作業者によって設置のバラつきが出るという課題もあった。この作業をパソコンの専用設定ツールを使用することで、最適な動作点をオートチューニングで簡単に設定できるようにした。近接センサ本体に搭載の動作表示灯を確認しなくても、パソコンから動作状態や動作点をモニタリングすることができ、より安定した検出が可能になる。 

また、近接センサの設置位置調整を簡単に行えるように、ティーチング補正できる機能を内蔵した製品も発売されている。設置位置の微調整が不要で、立ち上げ時間を大幅に削減できる。

農業機械や建設機械などで採用されている傾斜センサの需要も増えている。産業機械の無人運転などを支えるセンサとして活用されているが、最近はPV(太陽光発電)パネルの設置場所の傾きなどを監視する用途で利用されている。屋外利用が多いことから高い環境特性が求められる。

安全対策用センサもマットスイッチ、ライトカーテンなど、接触式、非接触式など多様で用途に応じ使い分けされている。中でもセーフティレーザスキャナは、ソフトウエアで危険領域を限定でき、ロボットが使用されている工程や、無人搬送車などにも搭載されている。セーフティライトカーテンも、設計や取り付け・調整などの手間を省く改良がされ使いやすさが増している。光を用いた同期をすることで、省配線を実現、複数のセンサを使用しても干渉しない工夫がされているタイプもある。従来は誤作動による原因追求に工数がかかっていたが、LED表示や通信により、状況を知らせる機能も各社強化しており、導入後の工数も削減できる。

人手不足が深刻になる中で、配線作業の省力化も重要になっている。以前からセンサの配線を減らす取り組みは行われてきているが、このところさらに注目されている。それは一般的なセンサはON/OFFなど有無検出機能が主であることが多いなかで、省配線機能にセンサの見える化情報を付加するものだ。センシングレベルをモニタや、異常個所のリアルタイム通知などを可能にし、装置やセンサの予防保全にもつながる。

FAセンサの機能拡張につながるとして注目されているのがIO-Linkだ。ⅠO-Linkは拡張性に優れた通信で、いままで利用できなかったセンサ内部の情報をユーザーがアクセスでき、しかもリアルタイムでクラウドベースでも利用できることで、最適制御、予知保全などへ大きく利用領域が広がる。

センサのON-OFF情報だけでなく、状態管理、緊急判断といった場面でのAIと連携した活用も進む。FAセンサメーカー各社も今後の製品開発計画としてIO-Link対応センサを予定しており、今後各社から対応製品の発売が増えてくるものと思われる。

FAセンサの取り巻く環境は、製品を構成する半導体などの電子部品をいかに調達するかがポイントになっている。受注が膨らむなかで、唯一の死角が納期となっており、生産体制が正常に戻れば一気に市場が伸長することが予想される。

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