カナデン 常務取締役 執行役員 事業統括室長 井口明夫氏に聞く「カナデンDX」へ歩み着々

社会全体でデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進むなか、エレクトロニクス技術商社として100年以上の歴史があり、長く成長を遂げてきたカナデンも、新しい時代への対応に向けて企業変革を進めている。このほどDXに対応するために社内組織を整備し、さらにデジタルマーケティングに特化した「カナデン製品サイト」を新規オープン。デジタル技術を生かした営業スタイルの変革をスタートさせている。カナデン 常務取締役 執行役員 事業統括室長の井口明夫氏に話を聞いた。

デジタルマーケティング特化のサイト開設

21年度から中期経営計画がスタート。カギは「カナデンDX」

-はじめに御社のDXへの取り組みについて教えてください。
今期から中期経営計画として「エレクトロニクスソリューションズ・カンパニー2025」がスタートしました。2021年度-2025年度の5年間を対象とし、その重要な柱として「カナデンDX」があります。カナデンDXはいま最も力を入れている取り組みで、業務標準化と効率化にとどまらず、ビジネスモデル変革に向けて動いています。

-カナデンDXは何を行うものですか?
はじめに、これまで当社では各事業部門、各営業担当が個別に動いていて、組織的かつ継続的、能動的に動くことができていないという課題がありました。

例えば、本社オフィスは三つに分かれ各事業部門で別のビル、別の階に入居し、それぞれ離れていました。そのため事業部間の交流は少なくコミュニケーションが不足し、お互いに顔も名前も知らないという人も多い状態でした。

現場の営業のスタイルも、各部門のメンバーがそれぞれ個別にお客さまの対応をしていて提案手法が属人化し、案件内容も限定的で受動的になっていました。時流に合わせてお客さま向けにPR動画の作成やウェビナーなども行っていましたが、あくまで有志が独自に行っていて、戦略的で継続的なものではありませんでした。また、これらの活動や取引の状況の社内共有も進んでいませんでした。

結果として、当社の強みである総合力とそれを生かした最適なソリューション提案に時間がかかり、機会損失が発生するという状態でした。
こうした状況を打破し、営業品質を向上させ、新たなビジネス領域に挑戦するために必要なリソースを創出しようというのが「カナデンDX」が目指すところです。

DX推進部門の新設、営業支援システムの導入

-具体的にはどんなことに取り組んでいますか?
まず実行したのがオフィスの移転です。2019年8月に東京都中央区の晴海トリトンスクエアに本社を移転し、営業部門をワンフロアに配置して社内コミュニケーションを強化しました。残念ながら移転してすぐにコロナ禍でリモートワーク が増え、当初の想定とは異なる状況になりましたが、それでも部門間を超え、人が集まる器をつくったことで、以前より人的交流が進んでいます。

そして組織に横串を通す組織として2020年4月に「事業統括室」をつくりました。各事業部門に横串を差し、全体を統括して見る部門です。DXに必要な環境と基盤整備も担当し、全体の底上げを進めています。

具体的には、営業が戦略的かつ組織的、継続的、能動的に動けるようにするため、営業支援システムを整備しました。SalesforceとSansanを導入し、2021年5月から現場で使い始めています。これを使いこなして組織的に動けるようになると一時的に現場リーダーや管理職の負担が大きくなることが予想されるので、そのフォローとサポート体制の構築も進めています。

カナデンDXの肝となるデジタルマーケティング推進とカナデン製品サイト

そしてカナデンDXの目玉であり、成否のカギを握るのが、デジタルマーケティングの推進と、その基盤となる「カナデン製品サイト」になります。

デジタルマーケティングは、事業統括室に専任部隊となるデジタルマーケティング課をつくり、そこが全社のデジタルマーケティングを一手に担っています。メンバーは社内公募し、新入社員からベテランまで7人が所属しています。自らやりたいと手を挙げてくれたメンバーなので、とても優秀で意欲的に取り組んでくれています。営業支援システムの導入からカナデン製品サイトの設計、構築なども情報システム部門と連携しデジタルマーケティング課が中心となって進めてきたものです。

-カナデン製品サイトとは?
カナデン製品サイトは、当社が取り扱っている製品やサービス、ソリューションをすべて集め、ここに行けば当社にできることがすべて理解いただける、そんな場所になっています。

すでにカナデンホームページもありますが、こちらは会社概要などコーポレートサイトとして利用し、カナデン製品サイトでは既存のお客さまやパートナー、新規にアクセスいただいた方に対して、製品やサービス、ソリューションを紹介し、当社が手掛けた事例や実績なども掲載していく予定です。

SEO対策を万全に整え、新規のお客さまを呼び込んでいきます。既存のお客さまに対しても、これまでは事業部縦割りだったところを、横断的に見られるようにして、他の分野の商材にも興味を持ってもいただけるように設計しています。ここで問い合わせやお引き合いを獲得し、営業活動を強化していこうと考えています。

スタート時に220社550製品掲載。動画も150本以上公開

-具体的な機能や特長あれば教えてください
スタート時の企業数は220社、掲載する製品サービス数は550点を超えています。これでも一部であり、これからもっと増えていく予定です。個別の製品ページでは問い合わせ、見積もり依頼を受け、リードを集めることができます。カタログや技術資料のダウンロード、アンケートなど具体的な案件獲得につなげる機能も備えています。注力製品やトレンドなどは特集という形でアピールすることもできます。

また最近は動画サイトなど動画で製品や技術を学ぶという行動スタイルが定番になり、メーカーも数多くの動画を作成してアップしています。

カナデン製品サイトでは、自社で作成した動画コンテンツはもちろん、メーカーなどあらゆるところから動画を集め、一カ所で見られるようにしています。すでに150本近くの動画がアップされており、電気・機械関連の商社・販売代理店のなかでも動画アップ数はトップクラスにあると自負しています。
 また営業全体を強化するには、各支社・支店や営業所が地域特性に合わせて自律的に動くことも重要です。そのため支社・支店レベルで注力製品やイベント、エリア限定商材などを紹介・告知できる機能も整備しました。

エレクトロニクスソリューションズ・カンパニーへの進化と新規開拓を強化

新規・既存顧客からのリード獲得、ソリューション提案を強化

-機能が盛りだくさんですね。製品サイトの狙いとは?
当社は1907年の創業以来、114年以上にわたって多くの顧客やパートナーに支えられてきて、今も支えられ続けています。しかしこの大変革の時代、既存の顧客やパートナーとより強い関係をつくりつつ、新たな顧客やパートナーを見つけ、共創していくことも大切なミッションになります。それを行うためには新たな出会いと関係構築を強化することが重要であり、それを創出するのがデジタルマーケティングと「カナデン製品サイト」です。特に新規開拓はこれまで苦手としてきた分野なので、カナデン製品サイトをフル活用して取り組んでいきます。

また、当社の強みは総合力であり、それをもとにしたソリューション提供です。同時に、もっと「エレクトロニクスソリューションズ・カンパニー」としての認知を広めていかなければなりません。

そこでカナデン製品サイトでは、すべてのお問い合わせやお引き合いを社内で対応し完結できるように設計してあります。当社と同じ商社や販売代理店のホームページでは、製品詳細やお問い合わせをメーカーのサイトに飛ばし、メーカーにまかせるケースもありますが、当社ではあえてそうしていません。社内に技術部門を持ち、システムインテグレータや工事会社などパートナー企業のネットワークもあります。すべての問い合わせやお引き合いに対して当社が責任をもってソリューションを提供し、解決することが顧客に対する信頼と信用につながると考えています。

ソリューション技術本部も立ち上げ、パートナー開拓と連携の強化を進めています。カナデンとパートナーの連合軍で顧客のお困りごとを解決する流れを強化していきたいと考えています。

次のステップはインサイドセールスの立ち上げフィールドセールスとの連携強化

-カナデン製品サイトは立ち上がりました。次の展開は?
具体的な目標は、デジタルマーケティングなどをきっかけにした新市場創出と新商材開拓およびM&Aなどの戦略的投資で100億円の売上創出であり、実現の可能性は十分にあります。

そのために次に必要となるのが、インサイドセールス機能です。製品サイトで獲得したリードをどう育て、フィールドセールスに引き継いで案件化していくか。インサイドセールスとフィールドセールスとのハイブリッドで提案できる組織を目指しています。現在はそのプロセスと組織づくり、人材育成を進めています。

また、カナデン製品サイトと営業支援システム、基幹システムを連携するという仕事も残っています。現在、基幹システムはSAPの導入を進めており、システム連携を行うことですべてのデータを一元管理し、リアルな数字をクイックに見て戦略立案できるようにしていきたい。

将来的にはメーカー、商社、SIer、ユーザーの共創コンソーシアムも視野に

-カナデンDXで目指すところは?もう少し先の未来像は?
理想の姿として、企業間の共創を活性化し、コンソーシアムのようなコミュニティーを構築できたらと考えています。ユーザーとメーカー、システムインテグレーター、商社など、当社に関連するパートナーがお互いにWINーWINになれる関係を構築し、創発的なコミュニティーをつくって、それを生かしたビジネスを構築していきたい。

10年以上前ですが、私が地方の拠点に赴任していたころ、地場のパートナー企業を集めて、勉強会や情報交換などを行う交流会を定期的に開催していました。その交流のなかで企業間のコラボが生まれ、単独の企業ではどうしても落とすことのできなかった案件が、コラボ効果によって受注できたというケースが何件もありました。パートナーのコミュニティーと、そこから派生したコラボによって新たなビジネスが生まれるというのは昔からあり、私自身も経験しています。今度は全社的に、デジタル技術を駆使して、そうした土壌を積極的に作っていきたいと考えています。

https://www.kanaden.co.jp/

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