シュナイダーエレクトリック Pro-face 製造業DXに必要な機能を完備した 次世代型産業用コンピューターPS6000シリーズ 5つの特長【前編】

〜どんな機器・システムともつながるIoT・エッジインターフェイス〜

2011年、ドイツで発表されたインダストリー4.0を契機にはじまった製造業のデジタル変革。第4次産業革命とも言われ、いまも世界的なトレンドになっています。はじめはIoTやAI、ロボット等の先進技術を活用することでものづくりの形が変わっていくという捉えられ方ですが、そこからITとOTの融合が注目されて進化を遂げ、最近では企業や社会全体の活動の変革を意味するDX(デジタルトランスフォーメーション)となっています。

しかし、インダストリー4.0、第4次産業革命、IoT化、デジタル化、DXと呼び名や捉え方が変わっても「現場からデータを集め、それを活用する」という本質は何も変わっていません。製造現場にある各種機械や生産ラインの情報はもちろん、工場や建物のエネルギー設備、物流倉庫の在庫など、工場内のあらゆるところから、それぞれに形式が異なる多種多様なデータを集め蓄積し、加工・分析して、見える化して活用する。DXの実現は、こうした基本ができて初めて成り立ちます。

その基本を作る上で重要なのは、色々と混在している千差万別の規格や機器であっても、容易につなげてデータを収集できる接続柔軟性と確実性。シュナイダーエレクトリックが2021年初頭に発表した産業用コンピューターの新製品「PS6000シリーズ」は、Pro-faceブランドとして長年培ってきた「どんなPLCともつながる」から、工場・製造現場のあらゆる機器とクラウド、さらに上位の基幹システムの間に介在し、「どんな機器・システムともつながるIoT・エッジインターフェイス」に進化。 DXの土台を支えるキーコンポーネンツとなるPS6000シリーズについて、シュナイダーエレクトリックの製品担当者が解説します。

■製造業でも高まるDXニーズ ワンランク上のデジタル化へ

DX(デジタルトランスフォーメーション)が社会的なトレンドとなり、製造業でも例外なくデジタル化、データ活用のニーズが高まっています。しかし、従来のデジタル化は生産性の向上や業務効率化に主眼が置かれていましたが、最近のDXトレンドは、働き方改革やコロナ禍を受けて、企業として長期的視点で考えるなかでの自社のビジネスのサステナビリティー(持続可能性)や、自然災害や経済危機の際もいち早く回復できるレジリエンス(回復力)、さらには予想不可能な事態に直面した際も環境の変化に追従して柔軟に自社を変革して対応するダイナミックケイパビリティー(企業変革力)の強化なども加わり、会社全体を挙げた一大変革活動となっている点が、従来とは大きく異なっています。

 製造業では、従来から引き続き工場や製造現場におけるFA・自動化、省力化・省人化の推進に加え、コロナ禍で国内外問わず人とものの移動が制限されたことにより、デジタルやオンラインを活用した業務のリモート化が進んでいます。これまで工場や現場に直接行かなければできなかった業務をオンラインで代用できるようにするなど、これまでとは異なる視点からのデジタル活用が求められています。

 シュナイダーエレクトリックが実施した昨年12月の顧客アンケートでも、DXに期待する効果として「リモート監視・リモートメンテナンスの実現」を求める声が多数を占め、こうした背景を裏付ける結果が出ています。


デジタルトランスフォーメーションの実現により期待される効果 シュナイダーエレクトリックお客様アンケート調べ

■DX、IoTを実現する産業用コンピューター

こうしたDXの背景とデジタル化のトレンドを元に開発したのが、Pro-faceブランドの新製品となる産業用コンピューターPS6000シリーズです。

 Pro-faceの産業用コンピューターシリーズは1991年に世界初のパネルコンピューターとして誕生し、これまで長年の間、どのメーカーのPLCとも接続できる特長を活かして主に装置のHMIとして使われてきました。今回のPS6000シリーズでは従来のHMI、パネルコンピューターとして使えるだけでなく、製造現場のDXに欠かせないエッジコンピューターとしても使えるように最適な機能と性能を搭載しています。PLCやセンサーなど各種制御機器とつながるのはもちろん、MESやクラウド、上位の情報システムとも連携し、フィールド、OTとITの中間に位置するエッジ領域でIoTを支えるコンポーネンツとして利用できます。DX時代を迎えて、どんなPLCともつながるHMIとしての産業用コンピューターから、どんな機器・システムともつながるIoT機器としての産業用コンピューターへ。PS6000シリーズは、DX時代に求められるスペックや機能を備えた製品です。

■PS6000シリーズの5つの特長

1)業界最高レベルのハードウェア性能。用途に合わせた部品構成にも対応

PS6000シリーズは、業界最高レベルのIntel 第8世代のハイパフォーマンスCPUを採用し、様々なソフトウェアをストレスなく動作できる基本性能を備えています。

また、産業用コンピューターの用途は多様化しており、PS6000シリーズではCPUの種類やディスプレイの有無、メモリーやストレージ、シリアルポートなど内部の拡張インターフェイスまで、オプションで構成を自由に選択できるCTO(Configure to order:組み込み出荷)に対応しています。高速な処理が求められる場合には高性能CPUや大容量メモリーを選んだり、逆に厳しい環境下での利用や故障を低減したい場合では駆動部品がないファンレスCPUやSSDを選ぶことができます。機器の構成は、当社Webサイトにあるコンフィグレーターを活用することで製品選定が簡単にできるようになっています。

2)DXに必要なソフトウェアが勢ぞろい

PS6000シリーズでは、DXのカギを握る各種ソフトウェアを揃えており、ハードウェアとソフトウェアを統合して、手軽でスピーディーに必要な機能・性能のエッジコンピューター、HMIを手に入れることができます。例えば、Pro-faceのHMIソフトウェアにはPLCなどの制御機器向けの通信ドライバーが200種類以上用意されており、それを利用することでプログラムレスで機器との接続ができるようになります。製造ラインにある多種多様な機器と接続してデータを収集するには欠かせないソフトウェアです。通常、ほかの産業用コンピュータでは機器接続用の通信ドライバを一つひとつ作り込む必要がありますが、Pro-faceならそれが要りません。収集したデータの活用についても、当社グループ会社のAVEVA(アヴィバ)社のソフトウェアを使えば、複雑なデータベースやSQLの知識がなくてもデータの長期保存や分析が可能になります。

またHMIとして装置や設備の操作端末として利用する場合も、HMIソフトの資産をそのまま活用でき、さらにPS6000シリーズではスマートフォンのような操作が可能になる新型のHMIソフトウェアも用意しています。よりHMIを身近にし、使いやすい操作感にすることも可能になっています。

3)強固なセキュリティー対策

DXが進むなか、多くの企業がリスクとして認識し、気にしているのが「サイバーセキュリティー」です。PS6000シリーズは、制御機器・システムの堅牢性に関するグローバルな認証や基準であるAchilles Level 1やISA/IEC 62443と同等レベルのセキュリティー基準をもとに設計されていて、データなどのデジタル資産を保護する安全な制御システムを構築する仕組みとしてTPM2.0とBitLockerによるハードウェアの暗号化も可能となっています。またホワイトリスト方式のセキュリティーソフトウェア(McAfee Application Control)を組み合わせることによりセキュリティーを高めることもできます(オプション)。

さらに、製造現場にある装置や設備とオフィスやリモートワーク中の自宅のパソコンを暗号化して安全に接続できる「Pro-face Connect」も提供しています。Pro-face Connectを使えばパソコンからリモートデスクトップを介してPS6000シリーズにインストールされたPLCエディターなどのソフトウェアを操作できます。セキュアな環境下で製造現場にある制御機器のメンテナンスが可能になり、リモート監視やリモートメンテナンスを手頃な形で実現できます。

4)高い耐環境性と信頼性、充実した安心のサポート体制

PS6000シリーズは、産業用途での使用を前提とし、オフィス用のパソコンと比べても高い耐環境性と長い製品ライフサイクルを備えています。設計段階から故障率を半分にすることを目標に大幅なリニューアルを行い、部品点数の削減や厳しい品質検査を行った結果、2年間の無償保証期間を提供できるまでの高品質を実現しています(オプションの延長保証を利用することで最長6年の保証期間が可能)。

耐環境性では、ファンレス構造でファンフィルターの定期交換や現場の粉塵、油などから引き起こされる故障がなく、メンテナンスや管理工数とコストが低減できます。保護等級のIP66F/67F対応で高圧噴流水でフロント部を洗浄でき、丸洗いで衛生環境を保つ必要がある食品や薬品の製造現場のエッジコンピューター、HMIとしても最適です。他にもUWF(unified write filter)やRAIDに対応し、ストレージ破損によるデータ損失を未然に防ぐことができます。

サポート面についても、PS6000シリーズは大阪にある自社拠点で修理対応から製品のカスタマイズ、キッティングサービスを行なっており、日本品質の高いサポートを提供しています。海外に出荷する装置や設備のアフターサービスについても、国内と同様の専門拠点をヨーロッパとアジア、北米の3カ所に設置しています。そこでは日本国内と同等のサービスを受けることができ、海外でも安心して使える環境に一役買っています。

5)ARを使った技術伝承のデジタル化

製造業のDXでは、ものづくり企業がこれまでに蓄積してきた熟練技術者の知見や技術をいかにしてデータ化して資産化し、次の世代に継承していくかというのも重要な要素になります。いわゆる匠の技術や若手の育成です。それに有効な手段として期待されているのがAR技術です。現実空間にデジタル情報を重ねて表示し、作業ガイドとして有効に作用します。弊社でもAR技術と遠隔からのリアルタイムな指示を可能にするリモートアシスト技術とを併用した「EcoStruxure Augmented Operator Advisor(シュナイダーARアドバイザー)」をソリューションとして提供し、技術伝承や若手育成を支援しています。

PS6000シリーズはシュナイダーARアドバイザーのなかでもエッジ領域で中核機器として役割を担っています。HMIソフトウェアやAVEVAソフトウェアによる制御機器や上位システムとの高い接続性を活かし、サーバーに蓄積されているマニュアルや機器の情報に加え、センサーの状態やMESなどからの不具合情報の参照まで、様々な情報をタブレット上のARを通じたアクセスを可能にしています。具体的な利用シーンとしては、設備の定期点検の操作方法の教示について、設備そのものをタブレットで撮影し、その撮影映像に点検で必要となる設備データやマニュアル、動画、注意点のポイントメモなどをリンクさせておくと、現場作業者が点検作業の際に設備にタブレットをかざすと、それらが画面に表示されるようになります。現場作業者はそれを見ながらサクサクと作業を進め、作業内容を体に覚えさせていくことができます。また、あらかじめ決められた点検手順通りに点検を実行したかどうかをチェックする機能や、 現場と遠隔地にいる技術者やベテランとをリアルタイムに接続して映像を確認しながら指示を与える機能も実装しています。現在のような移動が制限されるような状況下でも、普段通りの点検作業を継続できます。

■まとめ PS6000シリーズと産業用コンピュータ・エッジコンピュータの違い

ひとことで産業用コンピューター、エッジコンピューターと言っても、国内外の企業から数多くの製品が出されています。これらとPS6000シリーズの決定的な違いは、やはり「中身(ソフトウェア)の有無」。ハードウェアを購入し、いちからソフトウェアを作り込む、またはすでにあるソフトウェアを組み込んで調整していくのと、すでにHMIのPro-faceとして30年もの歴史があり、産業機器との接続性において信頼性が確立されているソフトウェアを組み込んであるものを比較すると、システムとしての完成度と、設備やシステムに導入して稼働を開始するまでにかかる工数と納期、コストには雲泥の差があります。

ユーザーが望むこと、メーカーが本来やるべきことは、高品質で信頼性の高いシステムを短い納期で完成させ、稼働を開始すること。そして故障なく、安定して長く稼働させること。長い経験と実績に裏打ちされた機器としての信頼性、完成度、さらには日本国内に技術拠点があり、手厚いサポートを受けられることは、それだけで大きな価値があります。DX実現に向けた重要なキーデバイスとして、PS6000は良い選択肢になるのではないでしょうか。

シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部
https://www.proface.com/ja

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