製造業、デジタル経営への道〜新時代の販売戦略〜マーケティングオートメーション導入で失敗する企業と成功する企業の違い

マーケティングオートメーション導入で失敗する企業と成功する企業の違い

株式会社才流の岸田です。今回はBtoBの製造業でも相談が増えている「マーケティングオートメーション(以下、MA)」がテーマです。

MAとは見込み顧客の情報を管理し、マーケティング・営業活動を支援するツールのこと。メルマガの自動配信や顧客のトラッキングやスコアリングなど、マーケティングプロセスの可視化・効率化を可能にするため、近年導入企業は増加しています。

しかし、導入後に「うまく活用できていない」「成果が出ない」と課題を抱える企業が多い実情があります。失敗する企業と成功する企業の違いはどこにあるのでしょうか。

私は数年前からMAを自社で導入・運用し、お客さまの導入支援も行ってきました。成功する企業のポイントは5つあると考えています。

1.明確な目的を持って活用している

2.明確な目標(商談化、集客増加)を設定し、成果を計測している

3.繰り返し発生する業務を対象としている

4.漏れを防ぐ、という観点で対象業務を設定している

5.(初期は)あまり複雑にしない、細分化しすぎない

逆に失敗する企業は、この5つがうまくできていないというわけです。よくある失敗の事例を2つ紹介します。

失敗例1:導入後、月1度のメールマガジンや展示会告知にしか使っていない

MAは決して安いツールではありません。投資に見合うだけの活用ができていないと失敗になってしまいます。活用しきれず、安価なクラウド型メール配信ツールに乗り換える企業は多いです。MAを活用する明確な目的や目標を持っていれば、この失敗は防げるものです。

失敗例2:セグメントを分けすぎてしまい、準備に手間がかかり、配信頻度が下がる

配信先のセグメントを自動車業界向け、半導体業界向けなど細分化し、各々コンテンツを最適化しようと取り組むことで起きてしまう失敗です。正確に言えば、配信セグメントを分けてコンテンツを最適化すること自体は間違いではありません。問題視しているのは以下のようなケースです。

1.分類したターゲットセグメントの件数が少なすぎる

2.配信を分けたが、コンテンツの差があまりない(ターゲットごとにコンテンツを用意できない)

これにより配信頻度が3か月に1回となってしまうのであれば、セグメントを分けずに毎月配信するほうが良いでしょう。

導入後にいきなり複雑な運用にしようとすると、このような失敗が起きてしまいがちです。また「スコアリングの設計を詳細化し過ぎて運用できない」というケースも、この失敗例と近い話です。スコアリングで困っている企業の方は複雑にしすぎていないか、今一度見直してみてください。

次に、成功している企業の例を見ていきましょう。

成功例1:MAを利用して、営業フォローをしていない失注顧客から商談機会を再発掘

MAの位置づけを「営業がフォローできていない顧客のフォロー」と明確にし、失注顧客との顧客接点を維持した活用例です。何もしなければ商談機会がゼロだった状況に対して、MAを活用して商談機会を獲得しているので、成果の純増といえます。

成功例2:ウェビナー/セミナー用の配信シナリオを用意し、集客を1.5倍に増やす

MAの機能でマーケティング上の成果に寄与しやすいのは「メール未開封者への再配信」です。この機能を使って1.2~1.5倍程度、開封数を伸ばせるので成果が純増します。

この特性をふまえ、ウェビナーやセミナーが多い企業で配信シナリオを設計し、自動的に未開封者へ配信したり、ウェビナー後のフォローメールを配信したりできます。必要な手順を漏れなく実行すれば、自動的な成果向上につながります。

成功例では、どちらの場合も目的が明確で、MAによって自動化するメリットを享受できています。

また、MA導入にはスモールスタートの考え方も重要です。理想的な状況を最初からすべて実現しようとすると、成功体験が遅れて継続できなかったり、リソースが不十分でコンテンツの配信頻度が落ちたりする弊害が起きてしまいます。

例えば展示会で交換した名刺だけを対象に取り組む、東京支店だけで試すなど、範囲を狭めて実践し、成功事例を作ったうえで広げていくのがセオリーです。

そもそも自社の顧客はWebやメールを見ているのか。検討を忘れてはいけません。「現場仕事が多く多忙な働き盛りの世代が、業務時間中にほとんどWebやメルマガを見ていなかった」というのはよくある話なのですが、それはアプローチをする側が見逃しがちなポイントです。

相手に応じて、電話で連絡を取る、郵送でチラシを届けるなど、アナログな施策による顧客接点も検討すべきです。「MAを入れれば商談が増える!」「コロナ禍だからデジタルで!」と安易に考えるのではなく、お客様の実態を正しく把握したコミュニケーション設計をおすすめします。

なお、弊社では「MA(マーケティングオートメーション)ツールを有効活用するための60のチェックリスト」という記事を公開していますので、あわせて参考にしてください。

岸田 慎平 株式企業才流 コンサルタント 

新卒でIBMコンサルティング部門にて業務改革&IT領域のプロジェクトを経験後、BtoB製造業に特化した販売支援をするベンチャーへ転職。大手企業から中小企業まで幅広く、150社以上の販売戦略の立案から施策実行までをトータルに支援。自社の営業企画やマーケティング、営業マネジメントなどを経験したのち、2020年より株式企業才流にてコンサルタントとして活動。中小製造業の経営企画や事業戦略策定、IT化の支援などにも取り組み、製造業を総合的に支援できるコンサルタントを目指して取り組んでいる。

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