製造業、デジタル経営への道〜新時代の販売戦略〜製造業の展示会はどう変わる?

はじめまして、株式会社才流の岸田です。これまで10年ほどBtoBのものづくり、製造業の販促活動を支援してきました。現在は才流のコンサルタントとして、BtoBマーケティングや営業のオンライン化を支援しています。

コロナ禍で、製造業は大きく様変わりしました。特に製造業にとって欠かせない「展示会」は、中止や来場者の激減が相次ぎ大きな打撃を受けました。

JIMTOFを始め主要な展示会は中止になる一方で、オンライン展示会のような新しい方法が模索されはじめています。

最初の緊急事態宣言から1年。現在展示会はどうなっているのかを見ていきましょう。

21年1月の「スマート工場EXPO」、「オートモーティブワールド」などの同時開催展は、同社ホームページの出展企業一覧を見ると、194社の出展がありました。20年の633社から大幅に減っています。

21年2月の「日本ものづくりワールド」は608社で、20年の1,486社と比べて3~4割程度の出展企業数に落ち込んでいます。

また、出展企業の社名や会場マップを見ると、出展企業にも変化がありました。大手企業の出展が減る一方で、ホールは埋まっている。つまり相対的に中小企業の比率が高まり、小間サイズも大きくなっているということです。

これまで毎年出展していた企業が不要不急の出展を控えたこと、コロナ禍の影響による製品開発の遅延で出展を見送ったことなどが要因として考えられます。

一方で新規製品やサービスがある企業は、新規顧客との接点を欲しています。そうした企業は出展を続けており、新規顧客獲得をしたい企業が集まる場としての色合いが強まっています

既存顧客が多い大手企業や、販売網が広い企業は出展を見送り、中小企業やベンチャーといった新興企業、大手でも新製品や新規事業などで新規顧客との出会いが必要な企業に絞り込まれています。

来場者数を見てみると、前述のスマート工場EXPOおよび同時開催展は19年実績で51,743名(JETROのウェブサイトより)だったのに対して、21年が14,806名(主催社ホームページより)。ものづくりワールドは2019年実績で66,049名(JETRO)、2021年が8,558名(主催社ホームページ)となっており、大きく落ち込んでいます。

※2020年の同時期のデータがなかった点および2020年2月はコロナ禍影響を受け始めていたので2019年と比較

しかし、展示会出展社を支援する会社によると”商談意欲や購入意欲の高い人が来場していると言います。

減ったのは情報収集目的での来場者。名刺交換の数は大きく減ってしまったが、商談や購入検討者が来場しているため商談や購入検討の数は名刺の数ほどの比率では減らなかったというのです。

つまり、ビジネス上必要な企業の出展や来場は継続しており、マッチングの密度が濃くなったわけです。

これらをふまえて、展示会を取り巻く状況は次のように考えられます。

・展示会は引き続き、新規顧客を獲得したい企業と、課題を解決したい来場者のマッチングの場である

・既存顧客中心のビジネスを行う(新製品や新事業がない)企業は出展を取りやめ、違う方法で顧客接点維持や情報発信を模索している

・情報収集目的の来場者は減り、情報収集はウェビナーや業界メディア、オンライン商談などに移行する

結果的に、出展社と来場者がそれぞれ明確な目的を持って出展・来場をすることでマッチングの質が高まり、商談や課題解決の場として、展示会本来の役割に戻っていくと考えられます。

また、出展社側の販促手法の観点で考えると、次の点を意識すべきです。

・名刺(リード)を大量に獲得する目的での展示会出展は見直しが必要

・既存顧客との挨拶、面談の場としての出展も見直しが必要

・顧客の情報収集のデジタルシフトを捉えるために、ウェビナーやオンライン面談、メールでの情報提供など新しい方法へ取り組む

・ウェビナーは新規顧客接点(リード獲得)と、検討度が近い顧客の引き上げ(ナーチャリング)で目的を分けて企画と実施が必要

・新製品や新規事業のプロモーション、課題解決をしたい顧客との接点を持つ場としては引き続き展示会を活用

「もの」を見たり触ったり、デモを見たり。専門家に相談して課題解決の道筋を立ててから購入するという購買者の行動自体は変わりません。展示会の位置づけを見直し、販促活動を組み立て直すことの重要性がより高まっています。

展示会に出展する際の判断材料として、参考になりましたら幸いです。

なお、ウェビナーについては弊社の記事「ウェビナー(オンラインセミナー)運営の成功ノウハウのすべて」でも解説しています。

株式会社才流 コンサルタント 岸田 慎平 

新卒でIBMコンサルティング部門にて業務改革&IT領域のプロジェクトを経験後、BtoB製造業に特化した販売支援をするベンチャーへ転職。大手企業から中小企業まで幅広く、150社以上の販売戦略の立案から施策実行までをトータルに支援。自社の営業企画やマーケティング、営業マネジメントなどを経験したのち、2020年より株式会社才流にてコンサルタントとして活動。中小製造業の経営企画や事業戦略策定、IT化の支援などにも取り組み、製造業を総合的に支援できるコンサルタントを目指して取り組んでいる。

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