儲かるメーカー 改善の急所 101項(19)資材の買い方

今週の言葉  ロットで買うな、要るだけ買え。

私はカイゼンを実行して経営を良くすることを皆でやろうとしているコンサルタントです。しかし、モノづくりにおける経営判断は時に分かりにくいのです。そこでいろいろなたとえ話を使ってカイゼンの判断材料にしてもらおうとしています。今回はそのたとえ話を一つご紹介します。

私はノートを一冊買う必要がありました。そこで文房具屋に行き、100円のノートを一冊選びレジに持って行きました。するとレジのご主人が「じつはもうすぐ棚卸しで、在庫を減らしたいので特別割引です。100冊買って下さったら、半額でお売りします!」というオファーがありました。新品のノートが100冊で半額です。お得! という状況です。さて、私はノートを100冊買ったでしょうか?

お分かりですよね、買いませんでした! でもナゼでしょう?

もちろん100冊は要らないからです。1冊で十分。しかしこれは一番の理由ではありません。最大の理由は、いくら半額だといっても100冊買ったら5000円も払わなければいけないという事実です。実はその時私の財布には給料日の一週間前で7000円しか入っていなかったのです。平均すると1日1000円で、お昼ご飯やすべてをまかなうのに、5000円払ってしまったら残りは2000円で、何と1日300円で過ごさなければならない…。100円払えば済むところを5000円も払うバカがどこにいる!という普通の判断です。

私たちは個人での買い物だと、キャッシュを意識しますが、会社でモノを買うときはこの意識がほとんど消えてしまい、一冊100円が50円になるなら50%のコストダウン!と数字上の判断になってしまいがちです。もちろん100冊のノートが必要であれば一冊50円での買い物は素晴らしいのですが、往々にして使用量にかかわらずコスト計算をしてしまうことがあるようです。もし100冊買ったノートが、結局10冊しか使わなかったとしたら、10冊のために5000円払っていますから一冊のコストは500円です。100円で10冊買えば支払いは1000円でコストは一冊100円ですから大損です。

購入品のコスト計算はすべて生産されて、売れて、代金回収が済んだところでするのが本当のコストだと思いますが、それではいつになっても計算できないので、すべて売れた仮定で計算されてしまいます。

資材の購入はいろいろな外的条件もあり複雑ではありますが、このキャッシュフローという当たり前の考え方を常に持つことも大切ですね。そうすると要るだけ要るときに買うということが一番いいという結論が出てくるのです。

 

日本カイゼンプロジェクト 会長 柿内幸夫
1951年東京生まれ。(株)柿内幸夫技術士事務所 所長としてモノづくりの改善を通じて、世界中で実践している。日本経団連の研修講師も務める。経済産業省先進技術マイスター(平成29年度)、柿内幸夫技術士事務所所長 改善コンサルタント、工学博士 技術士(経営工学)、多摩大学ビジネススクール客員教授、慶應義塾大学大学院ビジネススクール(KBS)特別招聘教授(2011〜2016)、静岡大学客員教授 著書「カイゼン4.0 – スタンフォード発 企業にイノベーションを起こす」、「儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉」、「ちょこっと改善が企業を変える:大きな変革を実現する42のヒント」など

 

一般社団法人日本カイゼンプロジェクト

改善の実行を通じて日本をさらに良くすることを目指し、2019年6月に設立。企業間ビジネスのマッチングから問題・課題へのソリューションの提供、新たな技術や素材への情報提供、それらの基礎となる企業間のワイワイガヤガヤなど勉強会、セミナー・ワークショップ、工場見学会、公開カイゼン指導会などを行っている。
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