【提言】デジタル勝者の必須条件-自動化工場 「図面DX」と「自動化」〜日本の製造業再起動に向けて(71)

2021年1月27日

最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)の話題が沸騰している。経済産業省が2018年に発表したDXレポート『2025年の崖』がDXブームを巻き起こしたと言っても過言ではない。

経済産業省は続編として『DXレポート2』を発表したが、その発表日が昨年12月28日の年末であったので、このレポートを知らない方も多いと思われる。DXレポート2は、18年の『2025年の崖』のインパクトが強すぎて、「DXの本来の必要性を十分訴求できなかった」との反省から、「本来のDX化推進にポイントを置いている」と経済産業省は解説しているが、DXレポート2では、さらに突っ込んだDXの現状と方向性を訴えている。

また、DXレポート2では「顧客の変化に対応するにはデジタルは必須。ビジネスを今変化させなければ、デジタル競争の敗者となる』と断じ、強烈な警告を発している。あらゆる観点から非常によくまとめられており、中小製造業経営者必見のレポートである。今回は、DXレポートに真意を理解しつつ、中小製造業のDXについて深掘りし、(論理ではなく)足元の課題を考察してみたい。

 

まず始めに、経済産業省がDXを強烈に推進する背景や国際的な事件を深掘りすると、世界の景色が突然豹変(ひょうへん)したことに気づき、中小製造業を取り巻く経営環境の大変化に驚愕する。国際社会では、米中による覇権争いから、グローバル経済に大きなキシミが生じている最中にコロナ禍が発生した。

コロナ禍の影響で、オンラインによる非対面ビジネスが急速台頭し、(歴史的かつ国際的な)最大級のパラダイムシフトが起きている。コロナ禍で、世界的に人の往来がストップして丸一年が経過した。人類未経験の異常事態のなかで、テレワークなど、社会全体参加でのデジタル実証実験が成功裏に進んでおり、デジタル時代の有益性が認識され、第4次産業革命の足音が大きくなっている。

中小製造業にとっても、21年がデジタル時代に向かう節目であることは明白であり、DXなくして未来は語れない。21年とは『潮目が変わる年』であり、デジタル化に向かう潮目が(誰の目からも)はっきり見えている。『アナログ時代の常識が消え、新たなデジタル時代の常識が生まれる』史上最大のパラダイムシフトを、われわれは共有している。

 

正月の占いではないが、中小製造業にとっての21年は吉か凶か? その答えは(他力本願ではなく)『吉』、それも『大吉』の年…としなくてはならない。中小製造業にとって今年を『大吉』とするキーワードは『攻めの変革-実現』である。21年は守れば「凶」、攻めれば「大吉」。21年は未来の道を決める『分水嶺の年』である。

では、中小製造業の経営者はDXの必要性をどう認識しているのだろうか? 当社アルファTKGでは、中小製造業経営者の本音に迫り、現実的なDX実践を行うことを目的に、『板金IoT・DX友の会』設立を企画した。この設立に賛同するパワフルな中小製造業経営者10人を発起人とし、会の設立準備が順調に進んでいるが、その過程で極めて重要な本音や将来の方向性を認識することができた。

中小製造業では『テレワーク』に対して、強い否定があることはよく知られており、「中小製造業では在宅勤務などできるわけがない」という認識から、「DX化は大手製造業しかできないのではないか?」といったイメージが先行しているが、実のところ中小製造業では、大手製造業以上にDX化の必要性が潜在しており、経営者の意識も非常に高い事が判明した。

 

中小製造業が、コロナ禍で生じた重要経営課題は『人手不足』である。テレビや各報道機関から『戦後最大の不況』との報道から、中小製造業が破壊的な受注減少に陥っていると考えられているが、実のところ受注減は限定的である。当社による精密板金業界のコロナ影響調査によると、コロナ禍による売上減少が平均20%程度あったものの、経営努力で赤字経営に陥る企業は少なかった。最近では、半導体業界などを筆頭に急回復・急成長業界も多く現れ、今後継続的に受注減が継続する可能性は少ない。

半面、コロナ以前に(労働力として)依存してきた『外国人労働者』の消滅は、中小製造業を直撃する経営課題となっている。大手製造業に比べ人材確保に苦慮してきた中小製造業は、コロナ禍により(人材不足が)ますます深刻な課題となっているのである。

ところが幸いにして、この経営課題克服には『自動化』という有力な打ち手が存在する。今日まで注目されなかった『単純作業の自動化』である。コロナ禍以前の自動化は、レーザ加工機やプレスブレーキなど高級マシンを(夜間も含め)連続稼働させ稼働率を向上させることが目的であったが、今回実現する自動化は、コロナ禍以前に外国人労働者に依存してきた『単純作業の自動化』である。

具体的には、バリ取りなど単純作業に始まり、溶接工程や検査工程など人手に依存してきた作業を自動化する事である。単純作業の自動化は、紙図面に依存する従来の作業プロセスの延長では実現できない。この実現には、紙図面をデジタル化し、さらに3次元CAD化することが必須となる。この3次元CAD化に向かう手段が『紙図面のDX化』である。『図面DX』と『自動化』こそ中小製造業DXの一丁目一番地である。

 

21年をDX元年と位置づけ『図面DX』と『自動化』への攻めがデジタル勝者に導く王道であり、これによって中小製造業のものづくりは自動化工場となり、高い生産性に激変する。20年第3次補正予算による膨大な助成金も、デジタル勝者への有力な助っ人となるだろう。

 

◆高木俊郎(たかぎ・としお)
株式会社アルファTKG社長。1953年長野市生まれ。2014年3月までアマダ専務取締役。電気通信大学時代からアジアを中心に海外を訪問して見聞を広め、77年にアマダ入社後も海外販売本部長や欧米の海外子会社の社長を務めながら、グローバルな観点から日本および世界の製造業を見てきた。