【2020年年頭所感】コンピュータソフトウェア協会「『次世代AI育成訓練』開発」荻原紀男 会長

コンピュータソフトウェア協会 荻原紀男 会長

 

新年あけましておめでとうございます。皆様には、平素より協会の事業・活動に対し格段のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。令和2年の年頭にあたりご挨拶申し上げます。

昨年は、元号が令和となり新たに天皇陛下がご即位されたことを心よりお慶び申し上げます。また、吉野彰氏がノーベル賞(化学)を受賞するなど明るいニュースもありました。しかしその一方で、東日本を襲った大型台風は関東や東北地方に多くの災害の爪痕を残しました。被災地の方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、被災地の一刻も早い復旧・復興を祈念しております。

政治・経済面では、米国トランプ政権は相変わらず、中国との貿易不均衡をやり玉にあげ、中国からの輸入品の大半に制裁関税をかけましたが、日本とは日米貿易協定が無事まとまり幸いでした。10月には消費税増税が予定通り行われましたが、軽減税率導入に伴う大きな混乱も無く、今後も政府の大型の経済対策により経済の下振れリスクも回避されるものと期待しています。

政府のIT政策に目を向けますと、未来投資会議及びデジタル市場競争本部を立ち上げ、デジタル市場のルール整備やデジタル技術の社会実装及びそれを踏まえた規制の精緻化を進めるとともに、経済産業省においては、昨年11月末に改正情報処理促進法を成立させて、企業のデジタル経営改革及びデータを組織横断的に活用するための共通の技術仕様の設計、それを行う体制整備に道筋を付けました。

令和元年度の補正予算案では、当協会の政策要望が実現する形で、IT導入補助金による中小企業の生産性向上、小中学校への一人一台の情報端末の整備について、複数年度にわたってコミットして頂きました。また、税制においては、5Gの設備投資に対して15%という大胆な税額控除を決めました。

このように政府は、5Gの開始を念頭におきながらデジタル化及びデータの利活用を促進して我が国経済の活力を維持・向上するための様々な施策を打ち出しているところですが、当協会としても、このようにソフトウェア業界を取り巻く環境の激変に対応し、将来ビジョン検討会を立ち上げ、今後の当協会の活動の方向性を示す将来ビジョンを次期総会までに公表する予定です。

次に、当協会の会員から最も期待の高い政策提言ですが、昨年はIT導入補助金の規模拡大と使い勝手の向上、小中学校における情報端末の整備などを実現し、多大な成果を上げました。引き続き、ソフトウェア業界を取り巻く制度変更や環境変化に適切に対応するための政策要望をとりまとめ、一般社団法人日本IT団体連盟を通じて関係各方面への働きかけ行いその実現に努め、ソフトウェア業界の発展に貢献してまいります。

また、昨年は神奈川県からサーバーのHDDの廃棄に伴い住民の税務情報など絶対に守られなければならない個人情報が大量に漏洩する事件が起こりました。同県がデータ適正消去実行証明協議会(ADEC:Association of Data Erase Certification)の制度を活用し、廃棄事業者に対してデータ消去に当たって第三者証明書の取得を義務付けていれば防げたことを思うと慙愧の念に堪えません。

これを契機に、政府の関係機関に対し、政府統一基準など公的機関へのセキュリティガイドラインに情報端末の廃棄等においてデータ消去の第三者証明書の取得の義務化を強く働きかけていく所存です。

これからはデジタル化及びデータの利活用がさらに進展し、データを制する者がビジネスを制する時代となりますが、その中核的な技術である人工知能(AI)を学び新たな価値創造を行えるAI人材の育成がますます重要になります。当協会では厚生労働省の支援を得て、まさにそのAI人材を育成するための「次世代AI育成訓練プログラム」を開発し、ITベンダーのみならずユーザー企業の人材も対象に今年同プログラムを東京と大阪の2カ所同時に実施(総受講時間120時間程度)します。

今年は東京でオリンピック・パラリンピック開催もあってサイバーセキュリティ対策への関心もますます高まります。当協会では、Software ISAC(Information sharing and Analysis Center)を中心として、今後とも経済産業省と連携しつつ、脆弱性情報のデータベース構築に向けた取り組みとセキュアなソフトウェアを開発できるよう脆弱性の検証環境の整備に努めてまいります。また、独立行政法人情報処理推進機構において民法の瑕疵担保責任部分の改正やアジャイル開発の普及に伴いユーザーとベンダーのモデル契約の見直しが進んでおり、当協会としても連携・協力してまいります。

この他、「顔認証ビジネス研究会」を立ち上げるなど活発に活動している「地域IoT推進委員会」を中心に当協会の活動地域の拡大を図るとともに、次世代の若手経営者を育成するため「プロジェクトみらい(仮)」の活動を一層活発化させます。

既存の事業についても、今年からいよいよプログラミング教育が小学校において必修化されることを念頭に、次世代のIT人材の発掘・育成を目指したU-22プログラミング・コンテストについては、プログラミング教育委員会と協力しつつ一層の充実に努めるとともに、IPA未踏IT人材発掘・育成事業や全国小中学校プログラミング大会と連携し、我が国におけるプログラミング人材の育成に貢献していきます。

また、iCD(iコンピテンシデクショナリ)の普及・啓発及びそれを使った人材育成も推進します。起業家が起業家を育てるスタートアップ支援事業も本年で6期目を迎え、今後は出口を見据えた既存出資先への支援を強化・継続してまいります。

PSQ認証制度については、クラウド/SaaSを含むソフトウェア製品の品質について第三者が適合性評価を行うPSQ-Standardは、これまで42製品が認証を受けております。これに加え、自社による評価を行うPSQ-Liteは、これまで66製品が認証を受けております。さらにソフトウェア品質向上宣言制度により本制度の普及拡大に努めます。

会員企業のビジネスチャンス拡大については、引き続きアライアンスビジネス交流会を核として、優れた技術や製品・サービスをもつ有望な会員企業の育成・支援を目的にビジネスマッチングの推進に努めるとともに、会員の補助金・助成金の活用に一層努めます。

また、当協会は、平成19年度に一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)からプライバシーマーク指定審査機関として指定を受けて以来、昨年末までに更新及び新規を合わせた会員企業の審査実績は249社(延べ1074件)となりますが、今後とも本審査事業の一層の拡大を目指して個人情報保護の推進に寄与して参りたいと考えております。

国際関係では、昨年7月に深センと成都に中国視察ツアーを実施するとともに、南通市で開催された「2019日中ソフトウェア発展大会」にも参加し、CSAJと日本ソフトウェア産業の現状を紹介しました。今後とも中国をはじめ、アジア圏への国際展開をにらんだ活動を継続するとともに、若手技術者のグローバルな視点からの人材育成のため、米国の先端技術研修も行ってまいります。

今後、一層のデジタル化とデータ連携・利活用を推進する鍵は、それを牽引する人材の育成及び政府及びIT業界一丸となった取組みと考えます。そのため一般社団法人日本IT団体連盟やデジタル社会推進政治連盟を始めとする他のIT関係団体と連携し、今後とも当協会の各種事業・活動を着実に推進していきたいと考えています。

最後になりましたが、当協会は、関連各省庁とも連携して、日本のソフトウェア産業の健全な発展と日本経済の発展に寄与していきたいと考えておりますので、引き続き皆様のご支援及びご協力をよろしくお願い申し上げて新年のご挨拶とさせて頂きます。

 
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