【インタビュー】ピアブ・ジャパン吉江代表、2万円の真空ソフトグリッパ大ヒット中

スウェーデン発の真空機器メーカー ピアブ・ジャパン
代表取締役・吉江和幸氏に聞く

軽い力でやさしく掴める

ロボット活用を考える際、最も頭を悩ませるのがハンド選び。これまではカスタム開発が多かったが、近年は多くのハンドメーカーから標準品が販売され、選択肢が広がっている。

今回は、1951年創業のスウェーデンの真空機器メーカー・piab(ピアブ)を取り上げ、日本における活動についてピアブ・ジャパンの吉江和幸代表取締役に聞いた。

ピアブ・ジャパン 吉江和幸代表取締役(左)と岩田誠エリアセールスマネージャー

 

省エネに強み

—— 御社について教えて下さい

1951年にスウェーデンで製図用のコンパスを作る企業として創業し、社名も円周率π(pi)にちなんでpiabとなった。現在の事業の中心は真空ポンプやエジェクター、グリッパー、助力装置などの真空機器。いま世界20カ国に営業拠点があり、約500人が働いている。日本法人は1993年から活動している。

 

—— 御社の特長は?

真空機器メーカーは世界に多く存在するが、当社は省エネ性能に強みを持ち、お客さまから高く評価をいただいている。その技術の土台となっているのが多段式エジェクター(マルチステージエジェクター)で、当社が世界で初めて開発し、1972年に特許を取得したオリジナル技術だ。空気の流れを調整することで望みの高真空を発生でき、通常のエジェクタに比べて3~4割の省エネ効果をもたらす。

イタリアの大手自動車メーカーが工場で使っているエジェクターを当社製品に置き換えることで3000万円以上の省エネ効果を上げたほか、日本でも電子部品メーカーで工場内の500本のエジェクタを交換し、お客さまが数百万円分の利益を生んだ実績がある。

 

生産性も向上

—— 直近のFA・自動化市況について

最近のトレンドとして「働き方改革によって労働時間の管理が厳密になり、今までと同じ機械のスピードでは時間内に仕事が終わらない。だから機械のスピードを上げて対応をしたい」という声が増えてきている。

当社はそれに対し、真空発生源を真空ポンプからエジェクターに変更し、よりワークに近い場所で真空を作れるシステムへの変更を提案した。小さな電力で、しかも反応が良くなり、結果としてタクトタイム短縮と電力消費の削減につながり、一石二鳥で大変喜ばれた。

また助力装置も工場内物流や空港等で採用が広がり、使い勝手が良いと好評だ。標準的なセットでは、真空ポンプとチューブ、真空チャックで100万円から、それに加えて取り回し用の支柱等の工事費が加わる。それでもパレタイジングロボットを導入するよりも価格が抑えられ、現実的な選択肢として選ばれている。

さらに最近は、食品業界の自動化に対する意欲がとても高い。小さな切れ端でも金属検知器に反応して異物混入のリスクを排除した食品業界用吸着カップがヒットしている。新製品の真空ソフトグリッパ「piSOFTGRIP」の評判も良い。柔らかく傷つきやすいワークをやさしく扱うことができる製品で、2万円で販売している。先日のFOOMAで実機を出品したところ、即決で複数台が売れた。

 

piSOFTGRIP

 

繊細なワーク

—— piSOFTGRIPの特長は?

通常の電気や圧縮空気のグリッパは、グリッパ自体の握る力は強く、それを力覚センサや精密な制御技術で力をセーブしている。そのため機構や技術が複雑で、グリッパの価格は高く、使いこなすための設定も難しかったりする。

それに対しpiSOFTGRIPは、グリッパの中心にある空気溜まりから空気を吸うとゴム製の指がすぼまって、その力でワークを握るという新型グリッパ。把持力が弱く、250g可搬しかないため、ワークを傷つけることがない。構造が単純なため、価格も2万円に抑えられているのも大きな特長だ。

年末にかけて、現行モデルより指が長い/短い製品2種類を追加する予定だ。

 

—— 今後に向けて

自動化・省力化に対する需要が旺盛で、右肩上がりで順調に来ている。いま注力している食品・包装業界を引き続き深堀りしていく。またpiSOFTGRIPをはじめ、協働ロボット用の「Kenos KCSグリッパー」などユニークな製品群の評判が良く、ロボット需要も取り込んでいきたい。

参考:ピアブ・ジャパン

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