配線作業性高まる 端子台、次々と新アイデア「付加価値」創出へ

人手不足対策で脚光

端子台に注目が集まっている。日本全体に広がっている人手不足対策の一つとして、端子台の配線作業性を高めようという動きが強まっているからだ。

IoTや5Gなどの言葉に代表される「つながる・つなげる」流れの中で、端子台が果たす役割は増している。端子台の作業性や使いやすさ、信頼性向上に向けた開発への取り組みは着実に進められており、社会を裏から支える端子台の評価はさらに高まりそうだ。

制御盤内の配線作業性向上が大きな課題

 

日本市場安定した需要

端子台の市場は、2018年前半は産業全体が堅調な拡大を続け、さらに社会インフラ投資も活発であったことから繁忙を極めた。後半に入って米中貿易摩擦の影響などから中国を中心に停滞感が出始め、19年の現在も継続して低空飛行状態になっている。

日本電気制御機器工業会(NECA)の2018年度出荷統計では、コネクタを含めた接続機器は前年同期比87.4%の437億円となっている。輸出が73.7%と大きく落ち込んでおり、国内も96.8%と微減となった。

国内の端子台の市場規模は、国内メーカー、最近シェアを高めている海外メーカー、外販しない内作メーカーなどを合わせて約400億円と推定される。

 

18年は前半を中心に、半導体製造装置、工作機械、ロボット、自動車周辺、ビル建設、インフラ整備関連に加え、5Gを見据えた通信、IoTに絡んだビッグデータやクラウド活用に向けたデータセンター関連、飲食などサービス関連での需要が継続し盛り上がりを見せた。後半は、半導体製造装置や工作機械を中心に需要に暗雲が漂い始め、ここにきてロボットなどにも影響がおよび始めている。

ただ、国内市場は、人手不足や働きかた改革、オリンピック・パラリンピックに向けた施設建設や関連インフラ整備、さらには大都市を中心とした再開発が継続していることなどから、比較的安定した需要が継続している。

また、5GやIoTなどの新たなインフラ構築に向けた投資はますます増加傾向で、景気拡大を下支えしている。

 

端子台の需要は前述の市場に加え、今後の市場として、自動車のEV(電気自動車)化や自動運転、蓄電池などが期待されている。EVでは、充電池、充電スタンドなど充電関連インフラを含め期待が高い。DC(直流)への対応でも、DC1000Ⅴ、DC1500Vといった高圧に対応した端子台が必要になり、低圧端子台も含めて、需要拡大へのプラス効果につながることが見込まれている。

さらに、今年の猛暑でエアコンの出荷が急増し増産となっているが、エアコンそのものが夏場の季節商品から日本では暖房も含めたオールシーズン商品へ、海外ではアジア、アフリカなどの新興国では暑さ対策の必需品になりつつあり、安定した端子台需要になっている。

そのほか、鉄道車両や鉄道周辺インフラ向けも期待市場で、日本メーカーは省エネ・環境対策などの得意技術をセールスポイントに拡販に取り組んでいる。

 

切り札は「スプリング式」

端子台は機器や装置の電気、信号などをつなぐ部品として重要な役割を果たしている。ミリAの微少電流から600A前後の大電流までをつなぐ中継機器として、高い絶縁性、難燃性、頑丈な構造が求められ、安全・安心と信頼性を確保している。

端子台の配線接続方法には、日本で主流となっているねじ式、欧米で主流となっている圧着端子を使用しないスプリング式(ねじレス式)、圧接式などがある。

日本はねじを使った丸圧着端子台(丸端)が長年使用され、定着している。特に高圧・大電流用途や振動の多い用途ではねじ式の使用が多い。接続信頼性が高いことが大きな理由だ。しかし、このところの人手不足の深刻化への対応策としてスプリング式への評価が急速に高まっている。ケーブルを挿し込むだけで配線作業が完了し、ネジ締め作業や締める加減も不要なことから、配線作業省力化の切り札として採用が増えているもの。まだ配線作業が不慣れな初心者であっても簡単に作業ができることから、人手不足の中、熟練作業者でなくても配線技術習得に時間がかからず、懸念されていた振動での配線の緩みや経年での信頼性に対する心配も使用実績を重ねることで払拭され、採用加速への追い風になっている。

 

スプリング式もメーカーによって接続方法には多少違いがある。最近開発されたのが、レバー操作タイプのスプリング式。結線作業用のレバーを内蔵しており、圧着端子や専用工具が不要で、電線をむき出し指操作での電線接続ができる。レバーを上げた時はスプリングが開き、レバーを下げればスプリングは閉じる構造で、レバーの位置でスプリングの開閉状態がはっきりと分かり閉め忘れなどの作業ミスを防止でき安全性が高いという効果も見込める。

従来スプリング式は制御用や小電力用を中心に普及が進んでいたが、ここにきて電磁開閉器や配線ブレーカーの国内大手メーカーがスプリング式端子台を配線部に採用したことで、動力用途での使用が増えている。

操作用スイッチやスイッチグ電源などでもスプリング式端子台の採用が増えるのは確実で、人手不足が端子台のねじ式からスプリング式への切り替えを後押し、日本市場でのスプリング端子シェアが大きく変化することが予想される。

 

さらに最近、欧州を中心にプリント基板に外部端子を使用しないで直接給電するための大電流対応コネクタの要求が高まっている。

大容量の電源、インバータ、サーボアンプなどでプリント基板に直接給電することで、大幅な小型化と電力損失の低減が図れ、省エネ化につながるというものだ。コネクタの採用で電線のハーネス化による組立性やボード交換などのメンテナンス性向上が図れるという効果も見込める。

 

新素材の採用も活発

大電流用でのスプリング式端子台のラインアップも急速に拡充している。1500Ⅴ/300Aの高圧・高電流の動力・電源用途に対応したり、電線径200平方ミリメートルという太線でもドライバーを使ってワンタッチで裸の電線接続が可能な端子台も販売されている。

大電流用は、配線後の増し締めをする丸圧着端子台(丸端)のカルチャーが定着し採用が進んでいなかったが、接続信頼性の高まりに加え、人手不足も重なり、徐々にこの壁がなくなりつつあり、トータルコスト面も優位性が高いとしてスプリング式の採用を始め、市場に大きな変化が出始めている。

丸圧着端子台(丸端)にスプリング端子台を組み合わせて1台の端子台として使える「ハイブリッド式端子台」も発売されている。

 

最近発売されて注目されているのが、配線を端子側面から挿入するプッシュイン端子台で、設置高さ方向のスペースに余裕のない場合でも配線が容易に行える。丸端などのネジ式配線接続式と方向が同じのため、ネジ式端子台からの切り替えも進めやすく、側面配線のため、ケーブルダクトまでの配線曲げも不要になるなどの利点がある。

スプリング式の評価が高まる中で、ネジ式端子台で注目されているのが、筐体にアルミニウム合金を採用した製品だ。軽量化が図れるのが特徴で、本体色も白色のため、黒色の端子台との識別も容易になる。圧着端子やケーブルなどもアルミを採用することでさらなる利点が生まれる。

また、ネジ式端子台では感電などの防止用に配線カバーが装着されているが、このカバーの色は一般的に透明色が多い中でブルー色を採用したカバーが注目されている。配線作業時に床などに落とした時に色がついていることで紛失を防げるというメリットがあり、探すといった時間を無くす効果につながる。

 

高温や低温下の使用周囲環境を考慮した端子台も用途が増えている。マイナス50℃やプラス150℃といった周囲温度にも耐える端子台や、材質もセラミックやフェノール樹脂などを使用しているが、最近は取り扱いが難しいセラミックに代わって、不飽和ポリエステル樹脂を使用した端子台も発売されている。

さらにハイブリッドな製品として、ねじレス端子台とヒューズホルダーを一体化した製品も注目されている。配線作業が一挙に省力化でき、DINレールにも取り付けが容易になるなど、ヒューズホルダーの新領域開拓につながることが見込まれている。

人手不足が端子台に種々の新しい開発のヒントを生み出している。5Gや次の6Gといった新しい時代に向けて、端子台の「つながる・つなげる」という役割はますます高まりを見せようとしている。

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