ディーラーヘルプを考える 黒川想介 (58)

時代に則した戦略が必要
報われぬ成長期の営業踏襲

FA機器や電子機構部品の販売店は、日本の製造業の発展と共に歩んできた。製造業は1973年の第一次オイルショックと79年の第二次オイルショックを省エネ技術で乗り越えて、自動制御技術を大いに発展させた。この時期に工場に出入りする多くの販売店が誕生した。

80年代には半導体、電子部品の発展によって電子化した商品が大量に生まれ、電気、電子産業が日本の産業の中核となり、製造業はバブル期を迎えた。この時は東京・秋葉原を中心に再び多くの販売店が誕生している。

日本の製造業の興隆期に誕生してきた販売店には栄枯盛衰があり現在に至っている。成長、横ばい、消えていった各社の明暗を分けた理由は多々ある。その一番の因は何であろうか。規模の小さい販売店には戦略を考えるスタッフがいたわけではない。やはり「売りの型」の違いが左右したことになる。

 

主として製造業を顧客としているこの業界は、90年代初期まではかなり高い売り上げの伸びを示した。他の業界では既に低成長に入っているところが少なくなかったのに、高成長を続けていた良い業界だった。日本経済がデフレ状態に入り若干のタイムラグでこの業界も低成長期に入る。実はこの時点で「売りの型」を低成長に合わせて修正する必要があった。

この20年間の売上額がそれほど伸びていない販売店の売上構成額を見ると、①既存客からのリピート的売り上げ②案件処理売り上げ③競合品切り替え売り上げ④一過性的な新規客からの売り上げで構成されている。

特に①の売上額が大半を占め、次に②の案件処理が続くが、③④は少ない。新規の開拓努力はしているのだろうが、顧客の顔ぶれはあまり変わっていない。営業活動は顧客の用件、案件対応に過剰気味のサービスを実施している。商品の勉強はしっかりしているし、シリーズ化して出てくる新商品のPRもないがしろにしていない。パソコン、スマホを使って効率的な活動もしている。

 

この営業活動は成長期のやり方を現代風にアレンジしたやり方である。好運にも伸びている顧客を持っている営業マンは売り上げを伸ばし続けているが、このやり方で伸びていない販売店は多い。つまり成長期のやり方を土台にしている営業のやり方では、努力の割には報われてないことになる。

振り返ってみると、成長期には製造工場は増え続け、増設も多かった。工場に供給する産業機器や部品の種類も次々と誕生した。更に誕生した機器、部品の用途をエネルギッシュな製造側が見つけてくれた。このような成長期の現象下で、営業マンは誕生する新商品をPRすれば見込客開拓ができたし、顧客も買ってくれた。更に、それらの新商品の用途を顧客が見つけてくれたので、他の顧客にもその使い方を広めれば商談は発生した。

結果として顧客から入手する案件数は常に手一杯であり、現在入手している案件数の数倍が毎月飛び込んでいた。

 

このような当時の売り方を効率的にアレンジされているのが現在の営業の主流なのだ。しかし現在の業界を取り巻く国内の環境は低成長である。新工場、増設設備は少ない。これまで発売されてきた制御機器や部品を見込客や顧客はかつてのように驚きをもって見てくれるわけではない。

低成長の環境下では、顧客は以前にも増して実績を重んじる傾向にある。製造現場では成長時代のように「じゃ、やってみようか」というエネルギッシュな雰囲気はない。デフレという環境は成長拡大しようという気持ちを萎えさせてしまったようだ。

このような環境下を考えるとただ動き回っているだけではだめだし、希望的な目標を持って動いても何もならない。戦略が苦手な中小販売店も地に足をつけた戦略を考えなければならない時期にいる。

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