UL Japan 制御盤に関する米国の規格規制および各国における状況 (2)

第2回 北米向け産業用制御盤を理解する
〜「マーキング」の正しい知識を〜

米国で産業用制御盤を使用する場合、米国電気工事規定(National Electrical Code、NEC)とも呼ばれる米国国家規格ANSI/NFPA 70のArticle 409およびArticle 110・3(B)の要求に従って、製品を正しく選択し設置する必要があります。そのためには、産業用制御盤がどのように評価され、マーキング表示が何を意味しているかを理解することが大切です。今回は産業用制御盤のUL認証を例に解説します。

 

■製品カテゴリーNITWに分類される産業用制御盤

UL認証の製品カテゴリーNITW(Industrial Control Panels)に分類される産業用制御盤は、モーターコントローラ、スイッチ、リレーなどの産業機器部品を工場で組み立て配線したものです。モーター、ヒーター、照明器具、ポンプ機器、またはこれらが組み合わされた機器などを制御する汎用産業装置用製品がこれに該当しますが、外部接続される負荷機器は認証の範囲に含まれません。設置場所は、NECに規定されている一般的な場所(防爆などではない)が意図されます。

製品カテゴリーNITWの産業用制御盤は、大きく2つのタイプ、「Enclosed Industrial Control Panel(閉鎖型産業用制御盤)」と「Open Industrial Control Panel(開放型産業用制御盤)」に分類することができます。これらはそれぞれ設置に関する要求事項が異なり、米国内での設置検査時にAHJ(Authority Having Jurisdiction、現地の監督機関または規定執行官)による設置状況の検証が行われる必要があります。

 

■Enclosed Industrial Control Panel(閉鎖型産業用制御盤)

エンクロージャーを有し、全ての部品がエンクロージャー内に搭載され、壁やカバーで覆われているものがこれに該当します。閉鎖型産業用制御盤の認証では、定格電圧・電流・短絡電流の各範囲内で安全に機能することが確認され、また制御盤全体の構造も評価の対象です。なお、産業用制御盤で評価されるのは電気火災や感電の危険性のみで、機器を制御する能力は評価の対象ではないことに留意が必要です。

NECのArticle90・7には、「変更箇所や損傷の発見以外に、工場で設置された内部配線や機器の構造は、設置時にAHJの検査を受ける必要がない」と記載されていますが、これは機器が認定された機関で認証を受けている場合に限られます(例:ULリスティング認証品)。ULが認証した閉鎖型産業用制御盤をAHJが検査する際には、以下の4項目のみが確認されます。

・機器に損傷がないか
・表示された定格はその負荷および意図された用途に十分か
・現場接続が正しく終端処理されているか
・配線システムが設置現場で変更されていないか

 

■Open Industrial Control Panel(開放型産業用制御盤)

開放型産業用制御盤には、内部配線、現場配線端子、およびサブパネルに取り付けられた部品が含まれます。エンクロージャーは設置時に現場で提供されるため、設置時には閉鎖型産業用制御盤とは異なる項目の検討が必要です。以下はその一例です。

・製造者の設置指示書の精査とそれに対する順守の検証(特定用途に対する要求が記されている可能性がある)
・NECの要求に基づき適切に設置、および使用されていることの検証
・要求されているエンクロージャーに、開放型産業用制御盤の保護に必要な機械的強度と耐久性が備わっていることの検証
・安全に設置するために要求されているワイヤの屈曲スペースおよび導体端末処理スペースがエンクロージャーにより阻害されていないことの確認

その他、開放型産業用制御盤を使用する、または触れる可能性のある人の保護に関する項目、例えば、活電部への接触の有無、正しい接地やボンディング、アーク発火の危険などからの保護についても確認されます。

 

■マーキング要求

NEC Article 409・110には、制御盤に次の情報を表示することが要求されています。

1.製造者名、トレードマーク、または、製品の責任組織が特定できるその他の記述
2.電源電圧、相数、周波数、各入力電源回路の全負荷電流
3.複数の電源から給電されている産業用制御盤は、機器の全電源を切るには複数の遮断手段が必要であることから、制御盤内の全電源を遮断するのに複数の遮断器を切る必要があるという表示
4.次のいずれかに基づく、産業用制御盤の短絡電流定格
  a.認証登録を受け認証ラベルが貼付されているアッセンブリーの短絡電流定格
  b.承認された方法を使用して確定した短絡電流定格
5.産業用制御盤がサービス機器として作られたものであった場合、サービス機器としての使用が適切であることの明示
6.電気配線図、または別の電気配線図の識別ナンバー、もしくはそれを示す記号
7.エンクロージャーの保護構造タイプ番号

上記「4.短絡電流定格」と「7.エンクロージャータイプ」については、第4回で説明します。

産業用制御盤の安全規格であるUL 508A(Standard for Industrial Control Equipment)には、これらを含むマーキングに対するさまざまな要求事項が規定されています。要求されるマーキングの大半は、設置現場での配線、設置後も見える場所に表示する必要があります。一方、一部のマーキングは、設置現場用配線図または設置指示書に表記して、銘板上にその参照を掲載することが認められています。

設置現場用配線図と設置指示書は、製品と一緒に出荷する必要があります。また、これらのマーキング要求に加えて、製造者が提供する部品を全て網羅した電気配線図一式を製品出荷時に添付することも求められます。

 

■まとめ

産業用制御盤の認証に関する要求事項と、それに関連するマーキングの用途と制限事項を理解することは、適切な産業用制御盤を選択し安全に設置するために必要なことです。ULリスティング認証を受けた産業用制御盤に表示される認証マークは、その産業制御盤のみに使用されるもので、それによって制御される機器や、その産業用制御盤が取り付けられている機器は認証に含まれません。さらに、外部接続された負荷装置の評価も認証には含まれないことにも注意が必要です。

次回は短絡電流定格について解説します。

 

株式会社UL Japanコマーシャル&インダストリアル事業部
今村 康敬/雄谷 隆一

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