2017年度 機械工業生産額見通し5.5%増 過去5年で最高の伸び

75兆円に迫る勢い 2018年は明るいスタート

●海外 不透明感の後退
●国内 関心増す省力化

日本機械工業連合会がまとめた2017年度機械工業生産額見通しによると、17年4月から18年3月までの機械工業の生産額は74兆5939億円となる見込みで、75兆円をうかがう勢い。回復基調にあったここ5年間で最も大きな伸びを示し、18年は明るいスタートとなる。

16年度は、国内生産では電力料金の高値、地政学的な不利があり、海外でも米国の政権交代による不透明さ、英国のEU離脱問題、中国など新興国の景気減速などがあり、緩やかな伸び。全体では0.7%減の70兆6767億円だった。

17年度は回復傾向で順調に推移し、見通しは明るい。予測では前年度比5.5%増の74兆5939億円となる見通し。

国内では人手不足に伴う省力化と自動化への関心の高まり、20年のオリンピック・パラリンピックに向けた交通・物流等の社会インフラ整備への投資、税制等の各種制作効果などで堅調。海外では、米国は利上げに伴う経済の減速懸念があるが、引き続き底堅く堅調。欧州でもユーロ圏を中心に緩やかな景気回復が続き、中国では不透明感があるが、半導体関連の需要や省力化・自動化投資の伸びが期待できるとしている。

 

■一般機械

一般機械は、7.8%増の14兆9995億円となる見通し。特に金属工作機械とロボット、半導体製造装置が非常に好調。

金属工作機械は、前年度からの回復に加え、国内外ともに高度な技術を駆使した自動化、省力化のための新たな生産体制の構築や自動車向けの環境対応需要に期待でき、27.5%%増を見込む。ロボットも国内が堅調、海外は中国向けが回復し、自動車、電気産業を中心に導入が進んで20.8%増となる。半導体製造装置・FPD製造装置は、半導体製造装置が引き続きファウンドリや大手ロジックメーカーの底堅い微細化投資があり、FPD製造装置は高精細・中小型パネル用の投資が見込まれ、10.6%増加と予測している。

このほかボイラー・原動機は、ボイラー・タービンが海外の受注が堅調なことから伸びが期待でき、汎用内燃機関はガソリン機関が減少するものの、ディーゼル機関、ガス機関は増加を見込み、ボイラー・原動機全体で4.9%増。土木建設機械は、国内が排出ガス規制強化前の旧型機の生産猶予終了に伴う駆け込み需要があり、海外は欧米の好調な住宅建築向けの伸びを見込み、9.2%増。印刷・製本・紙工機械は、国内が先端設備を中心に増加、海外は中国、米国向けが緩やかに持ち直すと見込み、1.7%増。

油空圧機器は、油圧機器が国内は微増、海外は欧米が堅調、中国はショベル需要に期待でき、空気圧機器は国内が更新需要、海外は欧米が堅調、中国は高騰する人件費に対応するための省力化や省エネルギー投資の増加に期待できることから、全体で3.5%増を見込む。動力伝導装置は、スチールチェーンが自転車用、自動車用の伸びが期待でき、搬送用は物流の拡大で伸びが見込まれ、歯車は増加、変速機は電気機械、産業機械、情報通信機械向け等で伸びが見込まれ、全体で7.1%増。

農業用機械器具は、国内が前年度並み、海外は欧米が農作物価格の下落によりやや厳しいと見るが、アジアは稲作、畑作向けで伸びを見込み、全体で横ばい。

第二次金属加工機械は、機械プレスが減少するものの、ベンディングマシン、液圧プレスは増加が見込まれ、1.3%増。繊維機械は、準備機械、織機が減少するものの、化学繊維機械、紡績機械、編組機械が増加し、全体では6.6%増。

食料品加工機械は、製パン・製菓、乳製品加工向け等で伸びが見込まれ、1.1%増。包装機械・荷造機械は、国内が横ばい、海外は中国を中心としたアジア向けや欧米向けで伸びを見込み、1.9%増。木材加工機械は、木造住宅部材加工用のプレカット機械の伸びが見込まれ、4.9%増。冷凍機・同応用装置は、冷凍機、冷凍機応用製品等の伸びが見込まれ、全体で2.5%増。

一方で、事務用機械は、国内生産回帰の動きが一段落したものの、アジア新興国向けに期待できるが、一部品目が統計から除外されたこともあり、20.4%減。ミシンは、工業用ミシンが横ばい、家庭用ミシンは国内向けが縮小傾向にあり、0.5%減。

 

■電気機械

電気機械の生産額は、4.3%増の7兆7381億円となる見通し。

回転電気機械・静止電気機械器具・開閉制御装置は、回転電気機械のうち交流発電機は海外向けが減少、交流電動機やサーボモータは世界経済の回復により増加。静止電気機械器具のうち変圧器は国内電力向けで増加、電力変換装置は国内電力、鉄道向けで増加、開閉制御装置のうち閉鎖型配電装置、監視制御装置は電力・製造業向けで増加、低圧開閉器・制御機器は増加が見込まれ、6.6%増を見込む。

民生用電気機械は、大容量、高機能、高付加価値製品が堅調なものの、前年度の反動減を見込み、0.2%減。電球は引き続き生産拠点の海外シフトや光源一体形LED照明器具の普及の影響を受け、一般照明用電球、電球形蛍光ランプが減少すると見込まれ、3.0%減。電気計測器は、電気計器、放射線計測機器が減少するものの、電気測定器、工業用計測制御機器、環境計測器は増加し、全体では4.5%増加の見通しとなっている。

 

■情報通信機械

情報通信機械の生産額は、1.9%増の3兆1062億円となる見通し。

民生用電子機器は、薄型テレビが五輪に向けての買い替え需要を見込むものの生産の海外移転が進み減少、デジタルカメラは一眼レフで伸びが見込まれ、カーナビゲーションシステムは高機能化による生産増を期待し、全体では2.2%増。

通信機器は、有線通信機器が海外での現地生産が継続するとともに、通信事業者以外の民間企業の設備投資が低調。有線部品は増加を見込むものの、有線端末機器、有線ネットワーク関連機器、ネットワーク接続機器は減少。
一方、無線通信機器は携帯電話、基地局、放送装置が増加し、通信機器全体では4.0%増。

電子計算機および関連装置は、パソコンが新OSの本格普及に伴う法人向けを中心とした買い替え需要や、ユーザーや販売店からのカスタマイズ・短納期要求に対応するための生産増加を見込むものの、プリンタが減少を見込み、全体で1.1%減少の見通しとなっている。

 

■電子部品・デバイス

電子部品・デバイスの生産額は12.5%増の8兆1422億円となる見通し。

海外のスマートフォンと自動車向けの需要増を背景に、電子部品がセラミックコンデンサを中心とした受動部品の増加、半導体はメモリやCCDの増加、液晶デバイスは多機能携帯電話向けの中小型の伸長により増加を見込む。全体として電子部品は5.6%増、電子デバイスは16.3%増加の見通し。

 

■輸送機械

輸送機械の生産額は、4.5%増の33兆6658億円となる見通し。

自動車は、国内がエコカー減税基準強化の影響剥落に加え、各社の新型車投入効果もあり増加を見込み、輸出は米国向けが底堅く、欧州向けも堅調に推移し、全体では3.3%増。自動車部品は、上期に輸出が好調で、下期も維持することが見込まれ、9.6%増。

産業車両は、8月末に迎えたディーゼル車の排出ガス規制猶予期間終了によるフォークリフトの駆け込み需要、バッテリー車比率の高まり、大型物流施設での需要増が見込まれ、全体では3.0%増。

鋼船は、海運市況に回復の兆しが見え始め、約2年分の手持ち工事量を抱えていることもあり、建造量が徐々に増加していくものと見込まれ、2.8%増。

航空機は、引き続き比較的高水準の生産が続くものの、民間向け機種の端境期における減少等もあり、3.2%減少の見通しである。

 

■精密機械

精密機械の生産額は、0.9%減の1兆4539億円となる見通し。

計測機器は、計量機器や試験機が国内外ともにユーザー業界向けの伸びを見込む。光学測定機は国内が増加、輸出は欧米、中国を含めた新興国向けに伸びを見込むものの、米国向けは厳しい。分析機器は電磁気分析機器、分離分析機器は増加を見込むものの、医用分析機器が減少。測量機器は建設向けの増加を見込み、全体で0.3%増。

光学機械は、写真機が3.5%減、望遠鏡・顕微鏡は生物顕微鏡、工業用顕微鏡共に増加を見込み、4.0%増となるが、全体では2.4%減少の見通し。

 

■金属製品

金属製品の生産額は、1.4増の2兆8967億円となる見通し。

鉄構物・架線金物は、2.4%減。ばねは、自動車、電気機械向けの伸びを見込み、2.9%増。

機械工具は、特殊鋼・超硬工具が国内は自動車、工作機械向けが堅調に推移すると見込まれ、輸出は欧米向けで伸びを見込み、5.4%増、ダイヤモンド工具は研削ホイール、ダイヤモンドドレッサの伸びが見込まれ、2.1%増、機械工具全体で4.8%増。

バルブ・コック・鉄管継手は、輸出は横ばいだが、国内は復興需要や五輪に向けての社会インフラ投資等の増加を見込み、0.6%増加の見通し。

 

■鋳鍛造品

鋳鍛造品の生産額は、3.0%増の2兆5915億円となる見通し。

粉末冶金製品は2.7%増。鍛工品は自動車、産業機械、土木建設機械向けの増加を見込み、4.3%増。銑鉄鋳物は5.5%増。可鍛鋳鉄・精密鋳造品は4.1%減。非鉄金属鋳物は、1.2%減。ダイカストは、2.6%増加の見通し。

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