プッシュインテクノロジー -次世代の接続方式(下)-

欧州式スプリング端子台の中で近年注目を集め、各業界、各企業で採用が急増している「プッシュイン式接続方式」は、当初DINレール式端子台として開発されたが、国際規格整合、省工数、省スペース、メンテナンスフリーといったメリットから、他の製品群にもこの接続方式の採用が拡大している。例えば電気制御に欠かせないインバータやPLCといった機器、あるいは各種フィールドネットワーク機器の接続には、プッシュイン式の基板用端子台あるいは基板用コネクタの採用が増えている。また、省スペースの要望からリレー、変換器、I/Oモジュールといったコンポーネントへの搭載も目立っている。電源、サーキットブレーカ、SPD(避雷器)といった大電流系の機器にも使用され、セフティ機器にも採用が始まっていることから、市場全体でその信頼性が高まっていることがわかる。

このように各種制御製品にプッシュイン式が拡大している要因は、そのメリットを理解して、自社の競争力を高めようとするユーザーの思いがある。国際競争力アップをねらう大手自動車メーカーや工作機械メーカーなどで使用機器の標準接続方式としてプッシュイン式が採用されているほか、鉄道、船舶といった振動による接続の問題を解決したい業界、また電力、重工業製品の電源系への使用が増えている点は、この接続方式のメリット、信頼性が理解されていることを示している。

これらの市場要求から、DINレール用プッシュイン式端子台の製品レンジも拡大している。特に信号線が多い業界、例えば国内外の大手工作機械メーカーなどからは更なる省スペースが望まれ、端子台幅が3.5ミリの「極薄」端子台が発売されて、盤内の省スペース化に貢献している。現場での作業性を更に効率化するために「プラグ式」の要望も多いことから、端子台にプラグによるハーネス接続が可能なタイプも各サイズに広がっている。これは制御線のみならず、40Aクラス仕様のプラグ製品もあり、半導体製造装置、化学系製造設備などに多く採用されている。また、電源系への要望の高まりから、プッシュインテクノロジーの派生形である「パワーターン式端子台」が開発された。これは電線のプッシュイン接続も可能だが、作業性を高めるため、ドライバーなどを使用したレバー操作が可能な機構を取り入れたもので、最大150mm2(1500V/309A相当)までの電線接続が一動作で行える。既に国内外でこの「パワーターン式端子台」の採用が活発化しており、一般産業機械、マテハン機器、成形機などに使用が始まっている。

プッシュイン式の採用にあたっては、関連製品を使用することで更に施工メリットを向上させることができる。まず工具について、プッシュイン式に欠かせないフェルールの圧着には専用工具を使用するが、使用数量の増加、圧着作業の標準化、圧着品質の安定化などから、自動工具の要望が高まっている。特に剥き線から圧着まで行う全自動機の採用が増えており、導入費用とランニングコストを計算し、現状の作業と比較すると、500本/1日程度の圧着作業をする場合は、約1年でほぼ償却が可能となる。

プッシュイン式に限らず、欧州式端子台の問題点としてよく指摘されることに「線番」が挙げられる。国内で普及している電線マーキングでは、丸圧着端子を使用する場合は端子部分で止まるが、欧州式の場合は電線マーキングが脱落してしまうと言われる。その解決策として「滑らないマークチューブ」が開発された。これはチューブ内に「ヒダ」を付けた構造になっており、それによって電線上で保持される。また従来の印字機で使用可能で、新たにプリンターを導入する必要がないため採用しやすく、「線番の脱落」でプッシュイン式の採用を渋っていたユーザーも、安心して欧州式端子台を採用でき、省スペース、省工数といったメリットを享受できるようになった。

このように、日本市場の要望に応え、日本市場に受け入れやすい製品レンジの拡大や関連製品の販売により、ますますプッシュイン式端子台の採用が拡大している。グローバル化に伴う国際競争力を高めること、生産性を向上し収益を上げることは企業にとって必須の課題であり、産業製品を基礎で支える端子台に対する新しい要望は増加している。「プッシュインテクノロジー」は、今後一層普及が進み各企業の生産性向上に寄与することが期待されている。

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