注目度増す産業用LED照明 “第4世代”の光源として日本が先駆者的な役割 国内照明器具の5割超に採用

電気料金の高騰、各種環境規制、省エネ意識の高まりなどによって、従来の「白熱灯」「水銀灯」「蛍光灯」に代わる新型照明の注目度が日増しに高まっている。新型照明としては、「LED照明」「有機EL照明」「無電極ランプ」「CCFL(冷陰極管)」などが代表的な方式として挙げられるが、なかでも国内では照明器具の出荷金額に占める「LED照明」が5割を超える割合で採用され、普及している。

■金額・台数とも大幅伸長
日本照明工業会による自主統計(参加23社のデータ)によると、2013年4月~14年3月までの1年間では、照明器具全体の出荷金額6648億5700万円に対し、LED器具は4095億9100万円、61・6%と過半を占めた。LED器具は、昨年比でも34・4%増と大幅な伸びを示している。台数ベースでも、照明器具全体で6457万台に対し、LED器具は3947万6000台と61・1%を占める。昨年比で69・4%増と急激に伸びており、今後も蛍光灯器具からの置き換えが進み、順調な伸びが期待される。

経済産業省も照明の省エネ化を推進しており、既に08年には一般的な白熱電球の製造・販売を中止し、原則として電球形蛍光ランプなどへの切り替えの実現を目指す要請がされている。この政府の方針を受け、各照明器具メーカーでは一般白熱電球の生産終了または終了予定が発表され、12年の段階で多くの企業において生産が終了となり、照明のLED化が進展している。

また、水銀による環境汚染を防ぐための「水俣条約」により、20年以降は電池、蛍光灯(水銀を一定量以上含有)、高圧水銀灯、スイッチ・リレー、温度計など計測機器の製造、輸出、輸入が禁止される。大規模施設や屋外施設には水銀灯が多く使われており、これらも順次、LED照明や無電極ランプなどに置き換わっていくと想定される。

■青色LEDで白色光実現
LEDは「ロウソク」「白熱電球」「蛍光灯」に次ぐ第4世代の光源とも言われている。特に日本が先駆者的な役割を果たしており、ノーベル賞受賞でも話題になった青色LEDの発明により、黄色蛍光体と組み合わせて、白色光を発するLEDが製造できるようになった。光の三原色である赤色・緑色・青色の素子を用いて白色光を発する方式もあるが、演色性(色が自然に見える性質)には劣るため、大型映像表示装置などで活用されてはいるものの、照明用ではあまり採用されていない。

LED照明の特徴として、省エネはもちろん、高輝度・長寿命・高信頼性・低発熱性・耐衝撃性・瞬時点灯などが挙げられ、その特徴から従来型の照明が持つデメリットを補うことができ、家庭用から産業用まで幅広い分野で採用されている。例えば、LEDの発光体は非常に小さいため、マイクロアレイレンズと組み合わせることで、強い指向性の照明が開発されている。レンズの種類を変えることで、照射角度を選択でき、空間照明や、スポット照明などに使われている。照度も年々増しており、定格光束6万ルーメンを超える器具も登場している。一般家庭用の40W電球が500ルーメン程度と言われているので、約120個分の明るさを1台でまかなうことができる。

■交換の手間省く長寿命
LEDにも寿命があり、経年劣化により輝度が落ちてくるものの、一般的な照明用LEDで70%期において想定寿命6万時間(24時間連続点灯した場合でも7年弱)の寿命があると言われており、一度設置すれば交換の手間が省けるばかりか、電球の廃棄の手間もなくなる。日本電球工業会によると、省エネ性能としては、同じ明るさでも一般的な白熱電球とくらべ、8分の1程度、蛍光灯と比べても2分の1の消費電力といわれており大幅な省エネが期待できる。

産業用照明として、耐環境性能を強化した製品も各社から発売されている。例えば、「マイナス40度対応品」は、即時点灯が可能で長寿命、省エネであることから低温倉庫などで活用されている。さらに、食品工場、金属加工工場などの厳しい環境でも使えるよう、耐水・耐油性能を備えたタイプも登場し、「IP67G」「IP69K」などの、通常の防水はもちろん、耐油性能や、水の直接噴流にまで耐えられる製品も登場している。プラントなどの防爆環境でも使えるタイプもバリエーションが増えてきており、ゾーン1、2に対応した水素製造プラントや水素ステーションでも使用できる製品、非点火防爆構造で軽量化を図った製品などが登場している。

■課題はまぶしさ、放熱対策
一方、課題としては、素子自体が熱に弱いため、大型照明の場合は放熱対策が必要になることが挙げられる。大型の放熱フィンや、放熱用のファンの機構が必要になり、機器の重量増加、灯具のメンテナンスの発生などが問題になっているが、今後の技術革新による改善が期待される。

また、点光源のため直視するとまぶしく感じてしまう問題もあり、各社面発光技術や配光技術など、蛍光灯に類似した自然な光になるよう開発を強化している。物が自然に見える「演色性」も課題だったが、年々改良が加えられている。

■新分野での活用も
今後の用途として、植物工場、集魚灯など新分野での活用も広がっている。

植物工場では、育成している植物に最適な波長の光を当てることで、収穫期間の短縮を可能にしている。

集魚灯では省エネによる燃料費用の軽減はもちろん、光が水中の奥まで届き、調光・瞬時点灯消灯ができる特性を用いて魚群の誘導を行い、魚が暴れることなく、傷がつかない状態で水揚げすることに貢献している。

大型施設でも横浜スタジアムのナイター照明設備にLEDが採用されるなど、LED照明の活躍の場は広がっており、益々の市場活性化が期待される。

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