一般社団法人日本ロボット工業会 「中長期視点で業界活性化」 津田純嗣会長

新春を迎え、謹んで新年のお慶びを申し上げます。

2014年を振りかえってみますと、世界経済は概ね緩やかな回復基調となっていますが、欧州で景気に一服感が見られ、アジア全般では景気回復気運がうかがわれましたが、中国は拡大テンポが緩やかとなり、そして米国では雇用と消費が拡大し確実に回復基調を見せました。

一方、ウクライナ情勢やイスラム国といった地政学的リスクに加え、ギリシャ危機の再燃やロシア・ルーブルの急落など新たな懸念材料も生まれています。

ひるがえって、我が国経済は、昨年4月の消費税引き上げに伴う個人消費の足踏みや設備投資の回復に遅れがあるものの、世界経済の回復と円安効果に加え、昨年1月に運用が開始された「生産性向上設備投資促進税制」による政策効果が相まって国内の産業機械需要の拡大、企業業績や雇用及び所得環境に改善傾向が見られました。

このような環境の下での14年のロボット業界は、国内、輸出ともそれぞれ2桁台のプラス成長を示すなど、生産額は6200億円程と3年ぶりの6000億円台回復とともに、生産台数では過去最高となることが見込まれています。

そして、15年の今年は米国での更なる景気拡大と製造業回帰、中国での旺盛な自動化投資、そして欧州ではスマート工場の実現を目指すドイツのインダストリー4・0プロジェクトなどの動きによる産業用ロボットへの関心の高まりなどから、今年も海外需要拡大を期待しています。

また、我が国でも堅調な設備の更新需要が見込まれることに加え、政策面でもロボット活用拡大への更に強力なインセンティブがもたらされています。政府は昨年、日本産業再興プランとして、ロボットによる新たな産業革命の実現を打ち出しました。その目標を達成するため、「ロボット革命実現会議」が開催され、その実現に向けたアクションプランが取りまとめられようとしています。今年はそのアクションプランの1年目として、各種政策が本格的に動き出すと期待されます。

これらの要因を背景として、15年のロボット生産額は、期待をも込めて7000億円を目指していきたいと考えます。

このようななか、当業界としては、単に政策効果に期待するのみならず、中長期的視点に立ち、業界の活性化を図る必要がありますが、以下の3点を重点項目として取り組む所存です。

第一は「市場拡大に向けた取り組み」です。市場拡大に向けては、利用率が低い中小企業をはじめ、食料品、医薬品、化粧品といった3品産業などの新規利用分野の開拓が重要で、そのための技術開発、さらにはユーザ業界のシステムインテグレータとの協業やロボットシステムインテグレータの人材養成が重要です。

当会としても今年は、関連業界との連携強化に努めるとともに、人材養成に向けた取り組みについても検討してまいります。

さらに、今後その市場として潜在需要が期待されるサービスロボット分野についても、当会が事務局を引き受けている「ロボットビジネス推進協議会」と一体となってその普及に向けた環境整備、関連産業の振興に努めてまいります。

第二は「産学等の連携等を通じた研究開発の推進」です。拡大する新興国市場の獲得や潜在市場の顕在化を図るうえでも、イノベーションを通じた市場の拡大が不可欠となっています。

特に、欧米先進国に加え、新興国のロボットメーカによるキャッチアップもみられ、スピード感と差別化による技術開発が求められています。そのスピード化と効率化の観点から、自前主義にこだわることなく産産、及び産学連携などによるオープンイノベーションなども必要と思われます。

業界として部品・部材メーカ、ユーザ、システムインテグレータ、そして学界などとの幅広い連携を通じた研究開発の強化を図るためにも、引き続き日本ロボット学会をはじめ関係学会及び関連業界との連携に努めて参ります。

第三は「国際標準化の推進、国際協調・協力の推進」です。国際標準については、欧米が市場獲得の手段として戦略的に取り組んでいますが、我が国においても産業用ロボットは勿論のこと、今後その市場拡大が期待されるサービス分野でも官民挙げての取り組みが重要と思われます。

特に、今年の12月には日本でISOのTC184/SC2
WG3(産業用ロボットに関する安全性)を開催しますが、国際標準化活動に対して引き続き積極的に取り組むこととしております。

また、昨年7月にフランスのロボット関連団体と覚書を締結しましたが、今年はその具体的な活動を実施することとなっており、国際ロボット連盟の活動とも併せて、国際交流を積極的に推進していく所存です。

以上に加え、当会では本年6月に「実装プロセステクノロジー展」の開催、そして12月には隔年の「国際ロボット展」を開催することで、ユーザの設備投資意欲を大いに喚起することに加え、国際交流、市場調査、技術振興などの各事業を意欲的に展開する所存です。

引き続き関係各位の一層のご支援とご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。

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