堅調な伸びの汎用インバーター 円安で輸出伸長、産業の国内回帰へ

汎用インバーターの需要がものづくり強化に向けた設備投資の増加、社会インフラの拡充やリニューアル、さらに海外での旺盛な投資などもあり、前年度同期比10%前後の堅調な伸びを示している。為替が円安基調で推移していることもあり、輸出協力の高まりや、産業の国内回帰など需要や生産形態にも変化が生まれつつある。2015年4月からは日本でも高効率モーター規制が始まることで、インバーターと組み合わせ使用されるモーターと一体となった拡販が進められており、需要拡大を後押ししている。製品も小型化や操作性の向上と同時に、より効率的なトルク制御ができる開発などが進められている。インバーターと並行して市場で注目されているマトリクスコンバーターも、高効率で高調波を抑制でき、コンパクトであることなどから次世代のモータードライブを担うことが期待されている。

汎用インバーターの生産は、経済産業省の機械統計によると、12年が224万台で567億円、13年が218台で654億円となっている。13年は台数が2・6%減少したが、金額は15・3%増加した。13年は下期で台数、金額とも増加しており、13年9月と12月は台数が20万台を超え、金額は6月が70億円台、9、11、12月は60億円台に乗せている。

14年に入ってからは6月に20万台を超えたが、他は16万~19万台で推移し、金額も40億~50億円台となっている。この結果、現在のところは、前年同期ほぼ横ばいでの生産状況となっている。

今年4月の消費税増税の影響もあり、4、5月の販売が伸び悩んだメーカーが多い。また、これまで円高基調できたことから、インバーターメーカー各社は海外生産体制を強化しており、いわゆるOUT―OUTの販売も増えている。機械統計にはこの分が含まれないことから、市場の実態以上に厳しい数値になりやすい。

インバーターメーカー各社の状況を聞くと、今年度上期は、国内が横ばいから8%増、海外が10~12%増となっているところが多い。日本電機工業会(JEMA)の上期汎用インバーター出荷実績も350億円、7・9%増となっており、うち国内が207億円5・8%増、輸出が143億円11・0%増と輸出の伸びが高くなっている。

インバーターの需要環境は、活発な自動車生産や搬送、建物設備向けなどが堅調で、海外もクレーン向けなどが好調に推移している。スマートフォンやタブレットPCなどの生産が増加していることから関連の機械設備向けでの需要も大きく伸びており、さらにビルの新設やリニューアルが大幅に増えていることで、ファンやポンプ向けでの引き合いも市場拡大につながっている。

海外で導入が進んでいるモーターの高効率規制が、日本でも15年4月から始まる。IEC60034―30では、モーターの効率クラスが規定され、効率の低い順に、IE1(標準効率)、IE2(高効率)、IE3(プレミアム効率)、IE4(スーパープレミアム効率)となっている。

日本も「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」でトップランナー基準が設けられることで、インバーターと組み合わせ使用するケースが増えるものと見られる。

■使いやすさと省エネを重視
最近のインバーターは、誘導モーター(IM)や同期モーター(PM)も同時に制御できる機能を搭載しており、モーターによる使い分けが不要になっている。使いやすくなるだけでなく、予備品を用意する必要もなくなり、在庫コストの削減にもつながる。

また、性能の向上とともに誰でも扱える操作の簡便性や小型・軽量化、低騒音化、安全性、ネットワーク対応が挙げられ、使いやすさと省エネ性の向上が重視されている。

周波数やパラメーター設定がジョグダイヤル式コントローラーを回すだけでできる機種が一般化しているが、一方でこうした複雑で面倒なパラメーター設定を不要にしようと、ファン、ポンプ、コンベア、昇降機などの用途を選択するだけで、自動的に最適なパラメーターに設定できる製品もある。また、配線を簡単にするための着脱式制御端子台の採用も一般的になっているが、最近はパラメーターバックアップ機能付きの端子台を採用する製品もあり、ユニット交換時に制御配線とパラメーター設定が不要になることで、作業工数が従来品比で約5分の1になるといわれ、メンテナンスの省力化などに大きくつながる。

■良好なトルク特性アピール
インバーター各社とも、良好なトルク特性をアピールしており、短時間最大トルクを3・7kW以下で駆動周波数1Hz150%から0・5Hz200%が増えている。短時間過負荷耐量も200%で0・5秒から3秒にアップさせ、過電流トリップになりにくく、ねばり強い運転を可能にしている。しかし、こうしたなかで過負荷定格を、軽負荷と重負荷に分けることで定格出力電流を調整し、最大適用モーター容量の拡大によるインバーターサイズの小型化を可能にしている。

同時にインバーター自身の省エネ化工夫も行われており、例えば待機電力を削減するために、DC24V外部電源供給で入力MC信号をモーター停止後にOFF、モーター駆動前にONといった、セルフパワーマネジメントを可能にしている。また、回生エネルギーを他のインバーターで使用するといった機能も注目されている。

省電力率、省電力量、省電力平均値などの省エネ関係の数値が、インバーターの操作パネル上のほか、出力端子やネットワーク経由でも確認でき、省エネの効果が一目瞭然となる。設備メンテナンスの点から、モーター累積運転時間やインバーターの運転・停止などの起動回数を、自動的に積算できる機能を内蔵している。インバーターは、セットメーカーの機械に組み込まれて海外で利用されることも多いが、制御ロジックのシンク/ソースの切り替えができ、グローバル対応が可能な機種も数社から発売されている。

■小型機種の品ぞろえ豊富
小型・軽量という面では、盤や機械の省スペース化に対応した小型機種が、各社から豊富にラインアップされている。

シンプル構造の名刺サイズのものもあり、スピードコントローラーの置き換え需要などとしての搬送用途などが増加している。異なる容量でも高さ・寸法を統一することにより、盤内のレイアウトの容易さを図った機種や、取り付け場所に合わせて「サイド・バイ・サイド」で密着して取り付け設置が可能な製品も一般化している。

需要が拡大している空調用途では、不可欠である力率改善DCリアクトルや零相リアクトルと容量性フィルターを1つのユニットにしてフィルターパック化して標準で装備し、配線工数と配線数の削減、省スペース化の実現を図っている機種もある。特に今後の期待市場である海外向けでは、グローバルスタンダードともいえる縦長スリム形状で、保護構造を重視した機種開発を進める傾向が強い。

ユーザープログラム機能を搭載したオプションカードや、簡易PLC機能を内蔵することで、パソコンを使ってインバーターのカスタマイズ化が図れる製品も登場し注目されている。

最近は、USBコネクタをインターフェイスに採用したインバーターが増えている。パソコンからインバーターのセットアップソフトウェアを起動させて設定の支援を行ったり、高速グラフ機能によるサンプリング、ユーザープログラムのコピーユニット機能などが活用できる。さらに、ラインシステムなどでベクトルインバーターとシステムコントローラーの演算制御部分を統合化した新コンセプトの商品も登場した。

■部品寿命の長時間化設計進む
インバーターの長寿命化に向けて、コンデンサーや冷却ファンなどの部品寿命の長時間化設計も進んでいる。特に空調ファン、ポンプなどに使うインバーターは設置するとリニューアルするまでの期間が長く、より一層の長寿命製品を求めている。各メーカーとも主回路のコンデンサー寿命は10年前後を目安にしているが、15年の長寿命をアピールしているメーカーや、インバーター劣化診断システムサービスをビジネスとして展開しているメーカーもある。

セーフティ機能の搭載も大きなセールスポイントになってきている。従来、地絡保護や瞬時停電時の自動再始動などに対して、コンタクターなどを周辺配置して対応するのが一般的であったが、この機能をハードワイヤベースブロック内蔵で、安全規格に対応させた。誤操作などを防ぐためにインバーターにパスワードを設定して、パラメーターの読み出し・書き換えを制限できる製品もある。

■電源回生による省エネ
インバーターの効率をさらに高める半導体として、SⅰC(炭化ケイ素)の開発が進められている。現在のSⅰ(シリコン)半導体に比べ、電力損失が約70%抑えられると言われている。しかしまだ本格販売には時間がかかりそうだ。

インバーターでの省エネ、高効率モーターでの省エネに加え、次の省エネとして「電源回生による省エネ」が求められている。電源回生には、電源回生コンバーターや電源回生ユニット、マトリクスコンバーターなどの機器があり、電力を使用しながらも電力を回生して生み出すという、省エネ効果がある。

このうちマトリクスコンバーターは、電源回生コンバーターとインバーターを組み合わせ使用する場合に比べ、面積を約65%、配線数を約70%減らせるなどスペース効率が高く、しかも高力率で電源高調波抑制効果も高い。エネルギーの損失ロスも低いことから今後の需要増加が見込まれている。

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