FA制御業界 内需・輸出とも好転へ 新需要生む「情報化投資」

ようやく上昇基調に転じた日本経済は、色々な課題を抱えながらもリーマンショックからの後遺症を払拭しようとしている。

為替が円安に転じたことで輸出環境が好転、企業の業績もリーマンショック前を超えるところが続出している。しか
し、その裏返しとして輸入価格は上昇し、日本の貿易赤字が問題になってきている。オリンピック決定など明るい材料が多い

こうした環境下で今年の日本経済の行方が注目されるが、総じて明るい材料が多い。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催決定は、リーマンショック、東日本大震災と、ここ数年日本全体を覆っていたもやもやしていたムードを一新したといっても過言ではないだろう。アベノミクス効果とも言われるが、その安倍政権が何か具体的な政策を打ち出したかというと、何もやっていない。それでも株価は1万5000円を超えるなど、ムードが一新する。まさに景気の「気」は気持ちの「気」と言える。

FA制御業界の今年は、内需と輸出の両輪ともが久しぶりにうまく回る1年となりそうだ。
内需は円安の進行により産業空洞化に歯止め

内需は、為替が円安に転じたことで、産業空洞化に一定の歯止めがかかる。ただ、「地産地消」の点から、すべてのものづくりが国内回帰するわけではない。従って、今までのように国内での増産のためのものづくり投資は基本的に出てこないだろう。国内のものづくり投資は、既存設備のリニューアルを目的とした、生産性や品質向上を目的としたものが中心になってくる。ここで見込めるのは、工場の情報化投資である。地球温暖化防止の点から取り組まれてきた省エネ活動は、大震災以降はエネルギーの在り方そのものに視点が移り、メガソーラーなどの新たな需要を生み出したが、これと同時にさらなる省エネ化を目指す動きに拍車をかけた。機械1台ごとの電力消費を把握し、見える化するといった取り組みに発展してきたことで、エコモニターやセンサーなどの新たな市場を創りだした。さらには、機械の待機電力削減に向けて、待機電力の少ないFA制御機器を採用する動きも出ている。国内のものづくり現場では、こうした生産機械電力消費や稼働時間などの情報を効率的に収集する投資を積極的に行おうとしている。これは工場だけでなく、ビル、店舗、公共施設など、社会のインフラすべてで取り組まれようとしている。電力が足りないなら、なるべく効率的に使おうと考える。ここに新たな需要が生まれている。
農業の自動化・効率化が新たな市場生み出す

このところ注目を集めているTPP問題は、国内外の利害調整で難航している。利害問題は別として、農業の自動化・効率化は新たな市場を生み出す。FA制御機器メーカーでも、農業ハウスの自動制御や土壌の改良、作物のトレーサビリティなどに一部で取り組まれているが、農業従事者の高齢化と耕作放棄地の増大が進む中で、この分野にFA制御技術を活用することは、FA機器市場の拡大だけでなく、日本の産業振興、世界の食糧危機対策にもつながってくる。
介護分野でロボット普及確実に新市場を形成

もうひとつ日本を元気づけるのはロボット技術である。ロボットは産業用ロボットが先行して普及してきたが、これからは工場の外で使えるロボットが重要になってくる。とりわけ介護分野でのロボットの普及は、日本がロボット技術で世界を席巻するチャンスとも言える。少子高齢化が進み、老老介護が増えてくるなかで、これを補う上でロボットは大きな役割を果たす。介護ロボットは、介護する人の過酷な仕事を手伝う役割もあるがそれ以上に介護される人を癒し、生きがいを与えるような話し相手的な存在としての役割のほうが大きい。このロボットにより老人が元気になることで、介護費用の削減につながる効果も生じてくる。今後、高齢化問題が懸念される大人口の中国などでも大きな市場を見込める。

ロボットはまさに制御の塊。新興国での人件費上昇を背景にロボットへの置き換えが進展しているが、先進国では生活でロボットと一緒になる機会が増えてくる。確実に新しい市場が創出している。ムードだけでなく、実感として捉えられる状況が生まれようとしている。

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