配電制御システム「品質と安心」をお客様に訴求 宇賀神 清孝・JSIA副会長が抱負

日本配電制御システム工業会(JSIA、丹羽一郎会長)の事業担当副会長に就任した宇賀神清孝氏は本紙単独会見で、メガソーラーなど再生可能エネルギーが台頭する中で、われわれ業界がかかわれる領域がまだ明確でないので、工業会として取り組み、需要を享受できるようにしたいと抱負を語った。また私見と前置きして、優良工場認定制度や配電制御システム検査技能士のような独自の制度の拡充を図り、工業会推奨の品質と安心をお客様に訴求していくことなど、工業会の役割がますます重要になると強調した。

-配電制御システム業界の先行き景気見通しは明るいようです。

宇賀神副会長

配電制御システムといっても、配電盤、制御盤、標準盤があり、それぞれ顧客層が異なるので見通しを一概に語るのは難しい。

配電盤に関しても首都圏、関西と他の地方とを一括りにできないが、今年に入って徐々に受注が上向き、第2四半期は各社受注が結構入っていると聞く。世間の景気より2年遅れてくるのがわれわれの業界であるが、景気は底を打ったといえる。

首都圏でいえば、1970年代に建設された高層ビルがリニューアル期を迎え、加えて都内の古い街並みの再開発が出てくる。

大震災復興投資が我々の仕事に本格的につながるのは5年先となろうが、配電盤全体としては今後当分の間、毎年数パーセントずつの伸びが期待できる。

ただ、需要に加速度が付くと思っていたが、欧州の金融不安による景気減速が世界に波及し日本企業も影響を受けているので、回りまわってわれわれも期待したほどの勢いをまだ感じられない。

-太陽光発電関連の新規分野も期待できそうです。

宇賀神副会長

再生可能エネルギーに対しては、確かにうまく取り込められればプラスである。一般家庭でなく、メガソーラーや地域単位での配電が範疇(はんちゅう)であるわれわれにも商機はあると思うが、どの分野にどうかかわるのかはっきりしていない。この辺は工業会が検討している。規格もまだ整っていない状況の中で、工業会として何ができるか制御と強電に分けて調査しているが、指針を出したい。直流配電は未開の分野なうえ、事故が起きれば我々の責任になるだけに、電線の選定などを含めて慎重に決めていきたい。

-先ほどリニューアル需要が増えると言われましたが、メンテナンス事業はいかがですか。

宇賀神副会長

メンテナンスは徐々に直接受注する方向で増えているが、電気工事業者とのコラボの形は続く。電気工事士の資格をもつ技術者は設計、組立、検査が担当であり、メンテ専門ではないので、直に受注しても電気工事会社に委託している。電気工事会社が我々に配電盤製作を依頼するのと同じで、両者は信頼関係でつながっている。

-副会長就任の抱負をお聞かせください。

宇賀神副会長

就任したばかりなので、私個人の意見として話したい。

工業会として品質向上に取り組みたい。お客様がJSIA優良工場出荷品なら申し分ないとの評価をいただける「ef」マークにしたい。現在、83工場が優良工場に認定されており、団体の独自制度として認められる規模に達している。お客様や他団体にもっとアピールする必要がある。

また、配電制御システム検査技能検定事業を行っているが、配電盤・制御盤組立技能、製図技能について、国家検定よりも実態に近い試験内容の独自制度を新たに設け、技能士の育成を図ることも大切である。

工業会が認定した優良工場で設計・組立・検査技能士が造る製品に「ef」マークを添付すれば、お客様は品質面で安心して会員企業に発注する。世界中で幅広く知られているウールマーク、自転車協会の安全基準BAAマークのように「ef」マークも広められたらと願っている。

-ISOと優良工場認定は同じ制度に思えます。

宇賀神副会長

いや、そうではない。

まず、お客様は品質を買うのであるが配電盤の外観からは判断できないので、一定の基準を求める。そこに優良工場認定制度の必要性がある。

ISOは決められたことをその通りにしているかを審査認定するので品質の良し悪しは別の問題になっている。優良工場認定制度は品質を定義し設計、組立、検査まで仕方を審査認定する。この認定取得は、いわば「品質」を保証するわけで、われわれは切磋琢磨しないといけないし、お客様からも品質保証を望んでいる。もちろん、ISOとの重複は免除するなどの働きかけが必要であろう。さらに、「ef」マークを担保にPL団体保険でも優遇されるようになれば、技術・品質向上などを含めたトータルで大いにプラスとなる。

-コストダウン研究への関心が高まっています。

宇賀神副会長

機器が値上がりしない前提で考えるなら、配電盤もコストダウンができる。制御盤製作の配線接続方式の実証試験によると、ネジレス端子台による省力化の成果が出ているが、配電盤も同様な方向に行くだろう。ただ、コストダウン対策は各社各様の仕方があり、それが特徴でもあるので、難しい面がある。

-最後に一言。

宇賀神副会長

配電盤事業は、当社で85年であるが、明治時代に創業し100年を超えている会社もあり、業界は成熟している。地場産業として特定のお客様と取引しているので急成長はないが落ち込みも小さい。世間の景気より遅れてくるので先も読める。

こうした業界ではあるが、お互いが切磋琢磨していかねばならない。その拠りどころとなる工業会活動を盛り上げていきたい。

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