無線電力伝送最終製品搭載に向け応用技術の開発加速家電やEV非接触給電が実用化

無線電力伝送技術の最終製品への搭載に向けた応用技術の開発が加速している。無線電力伝送(Wireless Power Transmission)は、金属接点やコネクタなどを介さずに無線で電力を伝送する技術で、ワイヤレス給電、非接触電力伝達、無接点電力伝送とも呼ばれ、文字通り非接触で電力供給を可能にする技術である。

無線電力伝送は、1988年にソニーが無線ICを開発以来、この十数年間に様々な企業が研究・開発を行っており、すでにSuicaやEdyなどの電子マネーや、携帯電話や電気シェーバーなどの充電などに応用されている。今後、最終製品に採用されるケースが拡大することが確実視されており、将来的な市場規模はLED照明に匹敵すると言われている。

現在、無線電力伝送の技術・方式は次の3つが主流になっている。2つの隣接するコイルの一方に電流を流し、発生する磁束を媒介することで、隣接するもう一方のコイルに起電力を発生させる「電磁誘導方式」、電流を電磁波に変換しアンテナを介して送受信する「電波送信方式」、電磁波の共鳴現象を利用した「電磁波共鳴方式」の3方式である。

このうち電磁誘導方式は、ソニーの非接触型ICカード「Felica」に応用され、Edy、Suica、Pasmo、taspoなどの電子マネーとして実用化されており、現在無線電力伝送の主流になっている。

動作周波数は数百kHz以下、伝送距離は数ミリ以下で、至近距離での利用に適しているが、送受信デバイス間の位置ズレによる効率の低下が大きいとされている。

電波送信方式は、伝送距離が数センチから数十メートルで長距離の電力伝送が可能である。しかしエネルギーが拡散するため、その分伝送効率が低くなる。

電磁波共鳴方式は、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発した技術で、伝送距離が数十センチから数メートル、動作周波数が数百MHzという優れた特性を持ち、伝送距離・効率ともに高いので、今最も注目されている技術である。

最近の無線電力伝送の動きとしては、2008年に国土交通省が、路面上の給電装置から電磁誘導方式により、ハイブリッドバスを羽田空港の連絡バスとして運行することを発表したほか、同年には、セイコーエプソンと村田製作所が携帯機器用の非接触給電・充電器を共同開発、09年にはソニーがデジタル家電への電力を供給できるワイヤレス給電システムを開発した。

10年には昭和飛行機工業が、充電スポットに停止するだけでEV(電気自動車)に充電できるワイヤレス給電技術を開発、EVバス用として実用化に成功した。電磁誘導方式を用いており、約5キロメートル走行に必要な電力を、充電スポットに7分停止するだけで賄えるという。

制御機器業界では、トランスメーカーの相原電機が、電磁誘導方式による非接触給電システムを開発しており、搬送機器分野などへの実用化を進めている。

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