堅調に拡大する照光式スイッチ 産業機器、民生機器、業務機器の各分野で前年同期を大きく上回る 表示部のインテリジェント化で新たな用途開拓 ますます進展する小型・薄型化期待高まる社会インフラ関連市場 波及効果広がるスマートフォン関連需要 スマートグリッド市場の動向にも高い関心

照光式スイッチが堅調な拡大を見せている。産業機器、民生機器、業務機器などすべての分野で前年同期を大きく上回る状況で推移しており、リーマンショック後の落ち込みを補う勢いだ。薄型や光源の高輝度化、表示部のインテリジェント化などが進み、新たな用途開拓に繋がっている。
照光式スイッチは、操作用スイッチと表示灯を一体化することで、一つのスイッチで操作と状態の表示を兼用できることから、スペース性・視認性に優れ、使い勝手も良いことなどからスイッチ全体の中での割合を高めている。

日本電気制御機器工業会(NECA)の出荷統計によると、2009年度の照光式を含む操作用スイッチの出荷額は260億円で対前年度比22%減少となっていたが、09年度下期以降の回復基調が10年度に入っても継続し、10年度上期(10年4~9月)は同63%増の184億円と大きく増えている。第3四半期(10~12月)は26%増と伸び率は鈍化したものの、依然20%以上の高い伸びで推移しており、今年度は350億円前後まで増加することが見込まれる。操作用スイッチは、民生用や業務用、車載用などを中心にNECA会員以外のメーカーが多く、国内の実際の市場規模はこの3~4倍あるものと推定される。数量的にはリーマンショック前に並ぶ生産を続けているメーカーも多いが、単価の下落などもあり、金額的にはまだそこまでの回復には至っていないようだ。

NECA統計では、過去ピークは07年度の432億円となっている。

NECAの出荷のうち、照光式押しボタンスイッチが約20%を占め、最も高い割合となっている。これに照光機能の付いたトグルやロッカースイッチなども含めると照光式スイッチの比率はさらに高くなる。照光式スイッチの特性を活かして用途は拡大基調であり、この傾向はさらに強まるものと見られる。
照光式スイッチの大きな市場のひとつである半導体・液晶製造装置は、国内半導体メーカーに加え、中国、韓国、台湾メーカーも旺盛な設備投資を行っていることから需要が堅調に伸びている。半導体は、デジタル家電、携帯電話、パソコン、自動車、空調機器などを中心に需要が拡大しており、休日返上で増産に追われているところもあり、投資意欲は非常に旺盛だ。特にスマートフォンやタブレットPCの需要が急増していることで、小型の液晶への生産投資が活発化している。

昨今の環境問題を背景にした省エネへの取り組みで、照明機器関連のLEDへの置き換えなども大きい。

昨年夏頃は急激な需要増加で、原材料や部品といった川上部分の納期が逼迫したが、ここに来てその傾向は収まりつつある。

むしろ、石油製品などの値上がりによる原材料価格の上昇を危惧する声も出始めている。

照光式スイッチのもうひとつの大きな需要先である工作機械も、急ピッチで回復を見せ元気になってきた。工作機械はタッチパネルスイッチの使用が増えているが、照光式スイッチの市場としては依然大きい。わかりやすい操作性と表示で、タッチパネルとの棲み分けが図られているようだ。
さらに、照光式スイッチが大きな市場になっているアミューズメント市場も動きが活発化しており、先行きの拡大が期待されている。

自動車生産の設備投資が厳しく推移する中で、自動車の生産台数は増加していることから、車載用スイッチの市場は拡大している。コスト的には厳しいものの、まとまった数量が確保できるのは大きな魅力だ。

今後の市場として期待が高まっているのが、スマートグリッドや新エネルギー関連、それに鉄道車両関係である。

太陽光発電や風力などの新エネルギー関連は、電力変換用のパワーコンディショナーや受配電機器などで照光式スイッチが多く使用される。EV(電気自動車)などの普及で充電スタンドが家庭や事業所などに普及すると、非常に大きな数量となる。

これらはまったく新しい市場だけに、今後国内外で大きな拡大が見込まれ、期待は大きい。

鉄道車両や鉄道インフラ関連向けも、照光式スイッチをはじめとした操作用スイッチの需要の裾野が広い。ドアや運転席周り、車内情報表示系統、券売機、自動改札、プラットフォームなど多岐にわたる。

最近の鉄道車両は、単に人を運ぶだけでなく、快適な乗り心地の追求、車内でも情報収集や仕事ができる場として目的が変わってきている。運転席では、運転に関する情報が集中して表示されるが、照光式スイッチやタッチパネル表示器が大きな役割を果たしている。ドアや座席にも照光式スイッチがついており、ドア開閉や座席管理などで視認性を高めている。

鉄道車両のスイッチは、信頼性に加えデザイン性、操作性などがポイントとなっている。車両にマッチしながら、誰が操作しても確実に機能を果たすスイッチが選択の基準として重視されている。鉄道は環境にやさしいという社会的な追い風もあって世界的に見直されているが、鉄道車両にはスイッチだけでなく、いろいろな制御機器が使用され需要裾野は広い。日本の鉄道技術は車両も含めて国際的評価が高い。社会インフラ関連の需要として、国際市場を相手に拡大を図っている。

放送・映像・通信関連機器向けも魅力ある大きな市場だ。地上デジタル化やCATV、インターネットなど、関連市場は大きな投資を行っており照光式スイッチ市場にも大きな市場となっている。特に、放送・映像機器は、頻繁な操作が行われることから操作性が非常に重視される。機器に応じた操作性を実現するためにスイッチメーカー各社は、技術の見せどころとして注力している。この市場が逆に、照光式スイッチに求められる操作感触、視認性、耐久性などといった、あらゆるニーズが集約されていることで、スイッチメーカーにとって技術研鑽にもつながり、この分野向けを意識した開発を積極的に行っている。

NECAのスイッチ業務専門委員会が、放送機器向けの操作用スイッチの動向を調べたが、放送機器に対するニーズは使用する機器や国によって違いがあり、放送機器メーカーはこれらをキメ細かく汲み取って対応している。また、LEDやLCDなどの技術に強みを有する台湾メーカーも技術レベルが上昇しており、今後日本メーカーとの競合が予想されるとしている。日本の放送・映像機器は世界でも高い評価を確立しているが、さらなるレベルアップを求められそうだ。

こうした分野を含め照光式スイッチの用途は、各種産業機械、業務・民生用機器、事務機器、計測機、アミューズメント、医療機器など多岐にわたる。

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