日本GE インダストリアル・インターネット推進本部長 新野昭夫氏に聞く 「インダストリアル・インターネットとは?」

S「IoT」「インダストリー4.0」「インダストリアル・インターネット」という言葉が日本の製造業をにぎわせている。しかし、それぞれが何を目指し、具体的にどんな取り組みを行っているのか。また、それぞれにどんな違いがあるのかなどが整理されているとは言い難い。インダストリアル・インターネットの中心的存在である日本GE(東京都港区赤坂5-2-20、TEL03-3588-5280、熊谷昭彦社長兼CEO)の新野昭夫インダストリアル・インターネット推進本部長に話を聞いた。

-インダストリアル・インターネットとは何か?

産業インフラに対してICTソリューションを提供し、最適化すること。センサーで集めたデータをリアルタイムに近い形で処理・分析し、顧客に対して価値ある情報を提供する。それによって産業機器の効率的な稼働や燃費の向上、効率的なサービス提供、想定外の稼働停止トラブルを防ぐことができる。

産業インフラとは、工場やプラントだけでなく、エネルギー供給やヘルスケア、運輸など、製造業に限らない。GEは現在、1兆ドルの産業機器に設置された1000万個のセンサーから入手する5000万件のデータ要素を毎日監視・分析している。

-インダストリー4.0との違いは?

IoTで付加価値を高めるという意味では、コンセプトは同じだ。

しかし、インダストリー4.0が製造工程の高度化に軸足を置いているのに対し、インダストリアル・インターネットは、製品が顧客の手元に渡った後のサービスに価値を付けることを主としている。

-具体的には?

一番分かりやすい例として、当社が航空機のエンジン事業で提供しているサービスがある。

当社は、世界最大の航空機エンジンメーカーとして、エンジンに数百個のセンサーを取り付け、稼働状況のモニタリングとデータ解析、改善提案をすべてセットにしたサービスを提供している。

モニタリングによってトラブルの発生箇所やメンテナンスが必要な場所を瞬時に把握できる。さらに、データ分析結果からエンジントラブルの発生傾向や予兆、最も燃費効率の良い動かし方など予測を導き出し、それを顧客にフィードバックして保全の最適化ができるようになっている。単にエンジンを販売するだけでなく、ベストパフォーマンスの出し方も含めて付加価値として提供している。

またエアアジアには、航空会社のオペレーション効率の向上をサポートするサービス「FES」を導入していただいている。機体や整備、気候など膨大なデータを分析し、航空機の運航順序の調整や最も燃費の良い飛行ルートの抽出など、具体的なソリューションを提案している。2017年までに3000万ドルの削減効果を見込んでいる。

最近は、製造工程の最適化をはじめ、さまざまな業界・業種からIoTで業務を効率化したいという問い合わせが多い。インダストリー4.0との境界線が曖昧(あいまい)になり、それが分かりにくさにつながっているのかもしれない。

-「Predix」とは?

「Predix」は、当社が提供している、企業がインダストリアル・インターネットを実行するためのプラットフォームのことだ。

GEの産業機器はすべてPredixに対応していく。企業がPredixを使うことで、機器同士をつなぎ、センシングやデータ収集、高度な分析、将来の予測など、インダストリアル・インターネットを自社で実現できるようになる。

これまでエネルギーや石油化学、ヘルスケアなどに向けて、Predixをベースとした約40種類の「GE Predictivityソリューション」を提供してきた。14年には10億ドル以上の売り上げとなった。

15年8月にはクラウドベースで使える「Predix Cloud」を案内し、より多くの企業が手軽にインダストリアル・インターネットを実現できる環境を整えた。自前でシステムを構築するよりも安価で費用対効果は高く、堅牢なセキュリティで安全性も担保している。IoTやインダストリアル・インターネットに興味を持つ多くの企業に使って欲しい。

-日本市場と今後について。

日本には多くの製造業の企業があり、高度な社会インフラが全国各地に張り巡らされている。工場やプラント運用、インフラの管理など、多種多様な問い合わせをいただいている。

製造業に関して言うと、日本のQCD(品質、コスト、デリバリー)は世界トップクラスだ。しかし問題がない訳ではない。

現場の課題や困り事だけを解決していっても、それは部分最適にしかならない場合もある。すべての工程をシームレスにつなぎ、市場ニーズをとらえ、開発から製造、デリバリーを最適化する「全体最適」が必要だ。

とはいうものの、IoTに関して、当社が持っている知見や技術は限られている。日本にはセンサーをはじめ優れた技術を持つ企業がたくさんある。パートナー企業として一緒にソリューションを提供してくれる仲間を増やしていきたい。それによって、今より多くの顧客の課題を解決できるようになると考えている。

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